ママタルト檜原洋平の書籍『正直言わせてもらうでぃ、この本を読んで日々をご機嫌にするほかないやろう』(KADOKAWA)が2026年2月26日に発売される。前向きで飄々とした語り口が印象的な檜原。
浪人時代のエピソードからM-1との向き合い方まで、その根底には「結果と幸せを結びつけない」という独特の哲学があった。エッセイにも通じる“ご機嫌に生きるコツ”を聞いた。(前後編の前編)

【写真】初書籍が発売されるママタルト檜原洋平の撮り下ろし【7点】

――テレビを見ていてもそうですが、エッセイも前向きでポジティブで明るさが溢れていました。ご自身ではいつ頃から自覚がありましたか。

檜原 大学受験で落ちて浪人生になったときに、自分が前向きなことに気づきましたね。合格発表の朝まで、春には神戸に引っ越してどんなバイトしようとか大学生活を送ろうと考えていたんです。でも不合格となり、朝まで考えていたことは一旦保留かと。1分くらいは“最悪っ”てなったんですけど、夕方には高校の友達と天王寺の予備校に行くという話をしていました(笑)。もう天王寺を調べたりして、どんな浪人生活を送ろうかとワクワクしていましたね。

――周囲の人からもそうした評価だったんでしょうか。

檜原 もともと「なんでもいいよ」という性格だったんです。ただ、いざ当日になって気が乗らなかったら「やっぱ今日やめとくわ」と遠慮せず言っていましたね。
大鶴肥満とコンビを組んでから、「それは優しさとは言えない」と指摘され、気付かされる毎日ですね。

――では、むしろ芸人になってから今の優しさが加わった檜原さんになっていったんですね。

檜原 そうですね。芸人仲間5人と共同生活をしたりして、どんどん頑固ではなくなってきた感じです。最近は年を取るにつれ、いろんなことがどうでも良くなってきているというか。TBSの『赤坂コレクション』というファッションショーに『ラヴィット!』ファミリーとして出させてもらったんですけど、子供の頃は写真を撮られるのが恥ずかしかったんですね。でも今は「この服めっちゃいいですね。ありがとうございます」と言えるようになって、そういうのがなくなってきました。

――シャイな性格も変わってきたんですね。子供の頃の恥ずかしさは自己肯定感と関係しているんですかね。

檜原 僕の場合、自己肯定感は高い日もあれば低い日もあって。例えば、M-1グランプリでも「これはあかんやろ」と思った翌日には「俺を落としだしたら最終的に残す人おらんくなるやんけ」と思っている、みたいな感じで波があるんです。


――そうした自己肯定感の波の中で、落ちているときはどう過ごしているんでしょうか。

檜原 よくSNSのダイレクトメッセージでもそういう質問をいただくんです。でも、僕の場合は寝てサウナ行って焼肉行ったら一発です。あんまり考えないようにしているというか。

――それで忘れられるのもすごいですよね。

檜原 ガサツで売れている人がいるという話を聞いて、例えばひな壇で周りを押しのけて前に出ていったとしたら「何なんこのガサツな人。絶対嫌われて終わりやろ」と思っていたんです。でも長くやっていくうえで、途中でお笑いやめたくなったり、仕事行きたくなくなったりするかもしれないし、意外に自分本位な人のほうが長く続けられるんじゃないのかなと。何年か前にそう感じてから、自分もそういうふうになってもいいかなと思うようになりました。

――檜原さんはお母様を若くして亡くしていますが、そのときのことを記したエッセイも印象的です。

お坊さんに言われたんです。「今は自分だけめっちゃ可哀想に思うかもしれないですけど、みんな大体自分くらいショックなことありますから」と。
じゃあ俺が感じているような落ち込みはみんなにもあって、それは別に見せへんようにしているだけと思うことで、気にならなくなりました。

――ラジオでのお話やSNSの投稿からも、趣味に時間を使ったり日々豊かに過ごしていることが伝わってきます。

檜原 そうですね。僕、インスタグラマーの華麗な暮らしみたいのをよく見るんです。海外旅行行って、プール入って楽しそうじゃないですか。それを見て「羨ましい。何この人」と思う人もいるけど、僕は普通に元気をもらう。「いつか俺もプールに行きたい」と思うんですね(笑)。だから、ポジティブな投稿を摂取するようにしています。

――M-1グランプリでは2年連続決勝へ進出しました。M-1自体が大きな目標になっているのか、世に出る手段として見ているか、どちらでしょうか。

檜原 最終的に世に出る手段になってラッキーなんですけど、僕は出ること自体が楽しいんです。
落ちるのも楽しくて。自分が採点されるのが嫌いじゃないというか、別に低い点がつくのも面白いんです。締め切りがあって、受験勉強するみたいな感じが昔みたいで楽しい。

――ママタルトさんはM-1での戦歴が上がり続けていますが、例えば今年決勝に行けなくても落ち込むことはないんでしょうか。

そうですね。2026年決勝に行けなくても、27年決勝に行けたときに喜びがよりアップする感覚です。例えば旅行の際、行きたかった観光スポットが定休日だったとしても、キャリーオーバーと受け取って楽しみを次にとっておく。残念なことがあっても落ち込むのではなく、将来に喜びが持ち越される捉え方をします。

――結果と幸福感はつながっていないと。

檜原 お金持ちの人がいつでも何でも買えるから、逆に何も買わなくなるという話がありますよね。言うたら、この車が車屋さんにあるのも自分の車庫にあるのも一緒に思えるというか。いつか欲しいときに乗りに行けばいいやんみたいな感じですよね。
M-1も今年行くのも来年行くのも一緒という感じで、わざわざ自分の中に入れなくても、自分の外にある楽しみも保有している感じです。

――ラストイヤーが2031年というのも関係しているかもしれないですね。

檜原 そうですね。あとまだ6回出られるので。ただ、決勝に行ったからこそ、優勝してみたいなと思いました。もっと楽しそうなので、一回やってみたいです。

――見える風景が変わりそうですよね。

檜原 そうですね。ただ、一気にチャンピオンになったら良かったんですけど、今も未来の楽しみをちょっとつまみ食いしている気がしていて。『ラヴィット!』に初めて出たときはうわーとなっていたのに、今は少しずつ慣れていく感覚があります。

――今後、どうテレビに出ていきたいというのは考えますか。

檜原 僕は自分だけの道を切り開きたいというタイプではなく、みんながやったことを僕もやりたいというタイプで。
先輩が歩んだ道を順番待ちで行くより、自分だけのルートで芸能界を進みたいという人もいるじゃないですか。でも僕は本当に順番待ちタイプですね(笑)。『アメトーーク』に出て、『踊る!さんま御殿!!』に出て、夜中のレギュラー持って…っていうオリエンテーションみたいに一個一個進んでいくのをやりたいし、それが楽しい感じです。

【後編】ママタルト檜原がエッセイに込めた“人付き合い哲学” 「断りやすい人でいたいんです」
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