Netflixで『ロングバケーション(以下『ロンバケ』略)』(フジテレビ系・1996年)の配信がスタートしているのを知っているだろうか。すでにNetflixメンバー(加入者)の間でも「あのロンバケがネトフリで観られるとは!」と話題にあがっている。
オンタイムの放送時から約30年間が経過。これまで円盤かFOD、時々TVerでしか見られなかった日本の名作が、いまや加入率が国内1000万世帯と言われる動画配信サービスのコンテンツに並んだのだ。

【関連写真】木村拓哉主演、劇場版『教場』のメインビジュアルほか

◆色褪せない30年前のきらめきを

昭和生まれ平成育ちにとって懐古であり、(個人的には)歓喜。その子ども世代も含めた若手にとっては、初めて耳にするワードの『ロンバケ』。この作品について観てほしいポイントを簡単にガイドしていこう。今回の本文、本作のドンズバ世代として途中、感情が漏れるかもしれない。どうか、お目こぼしを。

『ロンバケ』は今から30年前に放送された、木村拓哉、山口智子主演の連続ドラマだ。結婚式当日に花婿から逃げられた葉山南(山口)が出会ったのは、ピアニストを目指す瀬名秀俊(木村)。仕事もパートナーも一気に失った南を放置できない瀬名は、2人で共同生活を始める。互いに好きな人もいて、単なる同居人で、友人だと思っていたのに、次第に関係性が動いていく……。この「……」の先は想像の翼を広げてほしい。
ジャンルはラブストーリーでもあるけれど、大人の青春物語でもある。

友人同士の会話はもちろん、著作『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社刊)や、ラジオでもイチファンとしていままで『ロンバケ』の魅力を語ってきた。いや、どうしても話したくて仕方がなかった。その際に私がいつもいちばんに挙げているのが「主要キャストの小粋さ」だ。木村、山口に加えて竹野内豊稲森いずみ、デビューしたばかりの松たか子らが、ドラマの軸になる。彼らが劇中で披露する、コーディネート、ヘアスタイル、メイクや小道具などはもし2026年に放送されたとしても、なんら遜色なく見えるほど、洗練されている。当時のスタッフのセンスや先見の明が働いたのだろう。

◆公衆電話に“家電”に。なかなか会えない登場人物たち

それから「繋がらないもどかしさ」。1990年代のドラマなので、登場人物たちは当然ながらスマートフォンはおろか、携帯電話も持っていない。声が聞きたいなら家の電話か公衆電話で連絡を取る。逃げた婚約者の誕生日にひたすら家電の前で待つ、ドラマ序盤の南を覚えているだろうか。
小石川桃子(稲森)こと、ももちゃんの留守電の音声や、片想いしていた奥沢涼子(松たか子)と家電でデートの約束をして、電話を切った後、飛び跳ねる瀬名もいた。なかなか会えないからこその愛しさもあると、いまさらながら感じる。それでもすれ違ってしまう登場人物たちは、自宅の前で待つしかない。このもどかしさを現代風に例えるのなら「エモさ」を楽しんでほしい。

続けて『ももちゃんの格言』。登場人物たち、それぞれ印象に残るセリフがあるけれど、特に小石川桃子は達観視込みの、恋の格言が多かった。

「好きなもんは好きなんです! 好きって気持ちは止められないから、世界でいちばんえらいです。いっちばん!」

「私たちって高いヒールの靴を履いて、なんでもわかった顔をして。でも、中身は女の子のままなんですよね。時々、ブカブカの靴を履いてる気がするよ」

ももちゃんのやや大胆な言動は、南をよく後押ししていた。彼女が物語を動かすパターンも多かったので、ぜひ注目を。放送当時、木村拓哉は23歳。
いまだに第一線を走り続ける彼の若々しいまぶしさを堪能しつつ、山口智子の明るい美しさにも、真正面から目を向けてほしい。伏線が張り巡らされたドラマが主流の昨今、『ロンバケ』はストレートに面白い。

(文/コラムニスト・小林久乃)

【あわせて読む】木村拓哉主演『教場』劇場版レビュー 歴代キャスト再集結と十崎との因縁が描くシリーズの到達点
編集部おすすめ