平成ドラマにおけるラブコメ作品のお決まり相関図に、ヒロインのモッテモテぶりがあった。男性の登場人物が坂を転がるようにして、ヒロインを好きになっていく。
「結局、〇〇のことがみんな好きなんじゃん!」。でもドラマはあくまでも憧憬であって、乱発される不可能性の高いシチュエーションを多いに愉しむ時代。これで良かった。いや、これが良かった。

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◆平成ドラマはヒロインモテ集中が当たり前

例えば超絶イケメン四兄弟から、ヒロインが好かれた『ランチの女王』(フジテレビ系・2002年)。ショートカットの竹内結子の美しさがまぶしかった。学園の人気男子4人に囲まれる厚遇を受ける『花より男子』(TBS系・2005年)。そのうち2人が牧野つくし(井上真央)に惚れていた。『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』(フジテレビ系・2007年)は、とんでもない数の男子に囲まれ、好かれる芦屋瑞稀(堀北真希)の姿が。平成ギリギリで放送された『初めて恋をした日に読む話』(TBS系・2019年)ではタイプの違う3人の男性から求愛される春見順子(深田恭子)が記憶にある。

さて時は過ぎて最近のドラマに求められるものといえば、解像度の高さ。公序良俗を保持したうえで、いかにして現実と擦り合わせるのか。
もしくはあり得ない世界観へぶっ飛ぶのか。SNSを見たり、酒場の声に耳を傾けているとそんな声が聞こえる。中途半端が許されないとは、作り手も大変な時代になった。が、冬ドラマではかつての平成ラブコメを彷彿とさせるようなヒロインが散見されている。

◆令和のヒロインたちのモテ模様

まずは何かと話題の『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ系)。現在、きちんと人を好きになれない土田文菜(杉咲花)のこれまでの恋愛を回想するターンになっている。でも文菜はモテる。いま、彼氏もいるけれど、ずっと求愛してくる男性もいる。元彼だって会う。たった1話分の放送で、彼女は3人の男性に囲まれてもいた。絶えず、男性が彼女の周りを回遊しているようだ。この様子には視聴者から賛否あったけれど、個人的にはうらやましく映った。
なぜなら文菜は最終的に恋愛に絆されず、自分らしさを担保しているから。若い頃の私ときたら、恋愛対象に好かれるだけを考えて、自我なんてドブに捨てて依存をしていた。文菜のような女性はどこにでも実在するけれど、もし20代で彼女のような振る舞いでいられたら、夜中に滂沱と泣かなかっただろうな。

続けて『未来のムスコ』(TBS系)でも、主人公の汐川未来(志田未来)が3人の男性に好かれている。元カレ、中学校の同級生に、年下男子。その中から矢野真(兵頭功海)を選び、交際がスタートしたばかり。まだドラマも折り返し地点を過ぎたばかりなので、ほか2人が到底大人しくしているとは思えない。どんなアプローチをしてくるのか、ほくそ笑みながら、第7話を心待ちにしている。

そしてラストは『再会~Silent Truth~』(テレビ朝日系)の岩本万季子。冒頭で記述した『花男』の、牧野つくしを演じた井上真央が演じている。こちらも同級生3人の男性に囲まれ、全員に好かれ、1人とは結婚、離婚を経験した。サスペンスドラマゆえに万季子は魔性の女。
一人息子の名誉を守るために、3人の男たちを翻弄させるパターンだ。『花男』から約20年経過しても、美しさは途絶えず、モッテモテ役のターンが回ってくるとは井上の存在感あってこそ。

多数の男性に囲まれるという、生涯で早々起きない事件を描いたドラマたち。三作品三様の結末が楽しみだ。

(文/コラムニスト・小林久乃)

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