『ベイビーわるきゅーれ』(以下、『ベビわる』)シリーズを手掛けた阪元裕吾が監督・脚本を務める、1月から放送されているドラマ『俺たちバッドバーバーズ』(テレ東系)。元美容師の日暮歩(中島歩)が、表社会では解決できないトラブルを解決する“裏用師(りようし)”の月白司(草川拓弥)とともに、依頼人の問題を解決していくアクション作品だ。
『ベビわる』同様、ゆるい会話劇とキレキレのアクションシーンが楽しめる本作のプロデューサーを務めるテレビ東京の加瀬未奈氏に、本作を制作した経緯などについて話を聞いた。

【写真】ドラマ『俺たちバッドバーバーズ』(テレ東系)の場面カット【5点】

◆キャスティングの背景

まず『俺たちバッドバーバーズ』を制作した経緯について、加瀬氏が制作に携わった、2024年9月から放送された『ベビわる』の連続ドラマ『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』と、同時期に公開された映画『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』が影響しているという。

「それらに登場した日野彰(柄本時生)や冬村かえで(池松壮亮)などを見て、『阪元さんは男性キャラの描き方がとても素敵だな』と感じました。そこで、『阪元さんが手掛ける男性のバディものを作りたい』『それなら誰が面白そうか』と思ったんです。

もともと、『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』で草川さんが演じていた夏目敬が面白く、『様子のおかしい役をやらせるとピカイチだな』と思っていたので、草川さんにオファーすることは早い段階で決まっていました。草川さんの相手役を考えた際、草川さんと現時点で活躍の場が少し異なるジャンルの俳優を思い浮かべました。そして、私自身『この人が出演する作品なら面白そう』と思う俳優の一人でもあった中島さんが浮かびました」

草川は『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』で夏目敬として出演していたが、中島は阪元作品への出演経験はない。なぜ白羽の矢が立ったのかを聞くと、2024年に公演された舞台・城山羊の会『平和によるうしろめたさの為の』を観劇したことが大きいようで、「そこでは本当に情けない男の役をやっていて、それがすごく面白くて、『草川さんとの相性がめちゃくちゃ良いんじゃないかな』と思いました」と語った。

◆裏用師という設定に込めた思い

本作の骨組みを築いていく中で、意識したこととして“2人の出会い”を挙げる。

「『ベビわる』では最初から主人公の杉本ちさと(髙石あかり)と深川まひろ(伊澤彩織)は仲良しで、ルームシェアをしているところからスタートしました。やはり女性同士だと、いきなり仲が良くても合点がいきますが、男性ってあまり馴れ合わないじゃないですか。だから、出会いから描かないと2人の関係性は見えてこないと思いました。
一応、2人の出会いを描く過去編を作ることも考えたのですが、それはそれで違うなと。『2人の出会いは最初から描こう』ということは阪元さんと入念に話し合いましたね」

次に裏用師という架空の職業をメインにした経緯として、「最初に阪元さんから『裏伐店(リハツテン)』という仮タイトルで企画案をいただきました」と説明を始める。

「『表の顔は理髪店で、裏では困ってる人を助けるために街の悪い人を倒していく』という企画内容で、そこから『理容師』という仕事に落とし込んでいきました。ただ、“裏用師”をただ単に理容師との言葉遊びで終わらせてしまうのはもったいないので、“人生に寄り添う物語”という方向で考えていきました。そこで『髪を切ること=新しい自分に生まれ変わる』という側面もあるので、そこを掛け合わせて、理容師と裏用師に意味を持たせる内容になりました」

◆日暮はお母さん?

2人の絶妙な距離感が、本作の面白さを増幅させているように思う。2人の距離感は、中島が起点になって作り上げられているようだ。

「台本の初稿ではもう少しテイストが違ったのですが、その段階で本読みをした際に、中島さんが『これって、こうしたほうがいいんじゃないですか?』と、結構意見を出してくれたんです。例えば、『日暮は月白のお母さんで、月白は思春期の高校生なんじゃないか?』みたいな話をしてくれて、『なるほど』と膝を打ちました。そこから2人の関係性が定まっていきました」

『ベビわる』のようなゆるい会話劇ではあるが、本作ではボケとツッコミが明確になっている印象だ。この点については、「実は『このキャラはボケ役』みたいに明確化はしていません」と答える。

「お笑いでは“ツッコミ=正しい人”というイメージがありますが、『正しいことだけを言い続けるキャラを作りたくない』と考え、『欠点があるからこそ、このキャラっていいな』と思ってもらえるようにしています。月白はツッコむ瞬間は多いですが、最初からツッコミというポジションで描いているわけではないのかなと思います」

◆3分に1回は感情の動きを作る

また、作品の作り方として、“わかりやすさ”も意識したという。


「私はショートドラマの制作にも携わっていますが、ショートドラマは視聴者にわかりやすく伝える演出をする傾向が高いです。例えば、『ここは泣くシーンですよ』『ここは笑うシーンですよ』というように、視聴者が迷わないようにBGMを入れたりなどが珍しくありません。ショートドラマ程ではないにせよ、たまたま番組をつけた人でも入りやすいドラマになるよう、その辺りは多少意識しました。

例えば、3話で、仮面をつけた志賀誠一郎(三元雅芸)が強盗に押し入った時、ポロっと仮面が外れた後に戦闘するシーンに移りますが、そこで『ここからアクションが始まりますよ』という雰囲気を漂わせるため、BGMを入れました」

コメディとシリアスが入り混じる展開も特徴的ではあるが、「『ベビわる』でもそうでしたが、『3分に1回は感情の動きを作ろう』ということにはこだわっています。笑って、泣いて、手に汗を握って、みたいな展開のオンパレードになっていると思いますが、視聴者の感情の動きを意識しているからですね」と展開感についてにも話した。

◆男性版『ベビわる』にならないように

『ベビわる』と重なる部分が多い本作ではあるが、「私が阪元さんの作品に『いいな』と思うところは、『ご飯は誰かと一緒に食べるとおいしいよね』という点で、本作でも『そうした日常を大切にしたい』という部分は意識的に描きました」と話す。日暮と月白が一緒にカップ焼きそばを食べたりするなど、『ベビわる』同様、本作でも度々食事シーンが映し出されているが、制作陣の思いが背景にあったようだ。

一方、『ベビわる』と重なる部分はありつつも、“男性版『ベビわる』”にはならないように意識したと口にする。

「『ベビわる』は2人の女の子が社会に対するモヤモヤを抱えながらも、『これしか生きる道がなくて、これで生きていくしかない』ということを描きました。そのうえで、『まひろはちさとのために生きている』みたいに、『各々が各々のために生きている』という生きる意味が明確でした。

一方、本作は日暮と月白に、4話から新たに志賀風磨(原田琥之佑)が加わり、男性3人で共同生活をしていきます。ただ、『ベビわる』のように最初から最後まで仲良しではないけれども、助け合いながら生きていく、ということを描きたいです」

男性3人の共同生活と聞いて、『人にやさしく』(フジテレビ系)を思い浮かべるドラマファンも多いだろう。
加瀬氏は「本作のリファレンス(参考)として『人にやさしく』の名前は挙がりました」と語る。本作は“男性版『ベビわる』”ではなく、さながら“令和版『人にやさしく』”なのかもしれない。

◆キャラクターIPを意識した展開

アクリルスタンドをはじめ、グッズ展開も精力的なことも印象的だ。その背景について、「阪元さんの作品はキャラクターIPなんですよね」と答える。

「日本ではストーリー重視の作品が多いですが、そういった作品は『ストーリーが面白かったね』で終わってしまいがち。ただ、キャラクター重視であれば、ゲームや舞台のように、いろいろなパッケージを作れます。実際に『ベビわる』もコミカライズされていて、それは阪元さんの作品がキャラクターIPに寄った作品だからだと思います。

海外ドラマもキャラクターを重視した作品が多く、だからこそ国境を越えて愛されたり、長いシリーズとして制作されたりしています。阪元さんの作品、キャラクターも国境を越えていけると思っているので、グッズ販売などキャラクターIPを意識した展開を行い、『長く愛される作品になれば』ということは考えていますね」

最後に、本作をどのように楽しんでほしいのかを聞くと、「敵や味方がわかりやすく、友情、努力、勝利が詰まった作品で、老若男女問わず楽しめる作品になっていると思います。本当に頭を空っぽにして見てほしいです」と語った。

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