人気アイドルグループ・Snow Manなどのコンサートチケットをめぐる‟転売問題”が、ついに法廷の場に持ち込まれた。STARTO ENTERTAINMENTは3月13日、同社所属タレントのコンサートを主催する会社が原告となり、チケットの高額転売を繰り返した人物に対して、約2300万円の損害賠償を求める訴訟を起こしたと発表。
さらにチケット転売サイトの運営会社に対しても、民事訴訟を起こしたと明かした。不正転売者への賠償請求や、転売サイトの責任を問う訴訟は国内初だという。

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大きなポイントは、転売ヤー個人だけでなく転売サイト側の責任も問うた点だ。また、興行の収益を担うコンサート主催会社が原告となった点は、転売問題が‟看過できない損害”であることを意味する。転売仲介の責任にまで踏み込んだ今回の訴訟は、エンタメ界の未来にも大きな影響を与えそうだ。

STARTO社の声明によると、同社はコンサート主催会社と協力し、Snow Manなどのチケットを不正転売している人物を特定。その人物は、チケット不正転売禁止法に違反する転売行為だけでなく、人気の高い席のチケットを転売するダフ屋行為まで行っていたという。

さらにSTARTO社は、大手チケット転売サイト「チケット流通センター」に対して、「イベントにタダ乗りしながらも、多額の利益を得ている状況」と非難。STARTO社側が特定した複数の転売ヤーが同サイトで転売行為をしていたとし、出品の削除や無効化の要請にサイト側が応じなかったことで、不当利得返還請求等を求める訴訟を提起するに至ったとしている。

こうした強硬姿勢の背景には、長年放置されてきた転売行為の構造的な問題がある。

アイドルのコンサートは、ファンクラブ先行などの抽選販売が主流だが、転売ヤーは規約で禁止された複数アカウントを使って応募し、当選チケットを転売サイトに出品。定価の数倍、場合によっては10万円を超える価格で取引される。
実際、転売サイトを確認すると、STARTO社に所属するSixTONESのチケットが1枚約15万円、Travis Japanのチケットが1枚8万円など、転売が禁じられているチケットが高額で出品されていた。

当然ながら、被害を受けるのはファンだ。「何度応募してもチケットが当たらないのに、転売サイトには大量に出ている」という状況は珍しくなく、SNSでは「転売ヤーのせいで本当に行きたい人が行けない」「転売ヤーに推しを利用されている」といった憤りの声があふれている。アイドルからも声が上がり、Snow Manの阿部亮平は「我々タレントも、本当に心を痛めている、非常に重大な問題。今回の件も、まだまだ氷山の一角にすぎないと思っている」と胸中を明かした。

アイドルにとってもファンにとっても転売行為は許しがたいが、それでも転売が横行する根本的な理由として、「チケットの需要が供給を大きく上回っている」という現実がある。「多少高くてもチケットがほしい」という需要が存在する以上、転売ビジネスの撲滅は難しいとの見方もある。

だが近年、今回のSTARTO社の対応が象徴するように、エンタメ業界は転売対策に本腰を入れ始めた。その理由の一つが、技術的な環境整備などにより、転売対策の大幅な強化が可能になってきたことだ。

昨年、デジタル庁は民間企業と連携し、アイドルグループのコンサートなどで、マイナンバーカードや顔認証システムを活用した本人確認の実証実験を実施。不正転売を防ぐ効果が期待できる上に、QRコードと顔認証を組み合わせることで、入場もスムーズに行われたという。これが本格導入されれば対策は大きく前進するだろう。


また、人気ボーイズグループ・M!LKは、今年9月からスタートするアリーナツアーで、来場者全員に対して顔写真付き身分証明書による厳格な本人確認を実施すると発表。入場時のチェックを強化することで、不正転売チケットの利用を防ぐ体制を整えた。

海外でも動きは加速している。3月21日にソウルで開催されるBTSの無料カムバック公演では、入場チケットの不法転売を防ぐため、50名以上の警察官を投入し、潜入捜査が行われる。転売サイトや転売業者の監視なども含め、国家レベルで対策を進めるという。正規の値段でチケットを譲渡できる公式リセール制度の整備も徐々に広がり、もはや転売問題は一企業の課題ではなく、エンタメ産業全体の問題へと拡大している。

その一方、転売対策を強化すればするほど、ファンの利便性が損なわれるというジレンマもある。家族や友人へのチケット譲渡が難しくなるほか、大規模ライブでは本人確認に時間がかかり、開演時間に間に合わなくなるようなケースも懸念される。公式リセール制度が未整備のコンサートについては、「行けなくなったときにチケットが無駄になる」「推しのライブで空席を出してしまう」という不満の声もある。

それでも、今回のSTARTO社側による提訴は「不正転売は絶対に許さない」という明確なメッセージを業界全体に示した点で大きな意味を持つ。転売ヤー個人だけでなく、プラットフォームの責任まで問う動きは、今後のスタンダードになる可能性もある。

ファンの怒り、運営側の危機感、そして技術と制度の進化──。
すべてが交差する中で、転売問題は新たな局面に入った。では、転売は本当に撲滅できるのか。それとも、利便性と公正性のバランスを取る新たな仕組みが必要なのか。「転売ヤーに利益を吸い上げられる現状はおかしい」というファンの怒りに、業界はどう応えるべきなのか。もはやこの問題は「仕方ない」で済ませられる状況ではなく、その答えが強く求められている。

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