「ファンとはどう頑張っても付き合えません」——かつてそうはっきり宣言した一方で、「ガチ恋製造機」と呼ばれるほどファンを惹きつけてきたアイドル・滝口ひかり。そのふたつの顔が生まれた背景には、うつ病と向き合った長い時間があった。
所属するグループ「ゑんら」の今とこれから、保育士資格取得の裏話、や貧困生活を過ごした幼少期まで訊いてみた。(前後編の後編)

【写真】アイドルユニットゑんらとして活躍する滝口ひかりの撮り下ろし【10点】

「ゑんら」は今年2月で結成8周年を迎えた。アイドル人生で一番楽しいのはいつかと聞くと、一瞬も迷わず答えが返ってきた。

滝口 今です。コロナ以降ぐらいから、3人ともグループとの向き合い方が変わってきた気がします。きらら(実妹・滝口きらら)とも「まじで今が一番楽しいよね」ってよく話すんです。でも同時に、いつ落ちるかわからないのが怖くて「売れるしかないよね」とも言ってて。

――「売れる」とは、どういう状態だと思いますか。

滝口 ちょうど一昨日、メンバーと話していたんです。「知名度」なのか「数字」なのか、現場に来てくれる人の数なのか、定義が違くない?って。名前だけ知られていても現場に来てくれなかったら意味ないし、私はやっぱり、ライブに来てくれるファンが増えていったら自信が持てるようになるのかな、と思っています。目標で言うと、Zepp新宿(元・blaze)でワンマンをやりたい。
blazeの頃に立ったことはあるんですけど、Zepp新宿になってからはまだ。もう1回立ちたい。ちゃんと自分たちの足で立ちたいです。

――改めてになりますが、「ゑんら」のコンセプトは?

滝口 「ゑんら」っていう妖怪がモデルになっていて、煙のように「変幻自在」でいろんなものになれる、“ホラーかわいい”です。どろどろした感じの中にも可愛さを残したいというか。なので妖怪モチーフの曲が多くて、ダイダラボッチとかのっぺらぼうとかが曲に出てくるんです。

――きららさんにお聞きしたのですが、ひかりさんは「ガチ恋製造機」なんだとか(笑)。

滝口 前のグループのときはそうだったかもしれませんけど、今は違うと思いますよ……。当時はファンの方に触りに行ったり、手を繋いじゃったりしてましたね。意識してやっていたわけではないですけど、あの頃はそれが普通になっていたんすよ。今だったら絶対しないです(笑)。

グループを辞めた後、「事務所辞めたんだから、手繋げるよね」みたいなことを言ってくる人も出てきたんです。
「そんなわけないでしょ」「どう頑張っても付き合えません」ってブログにはっきり書いたんですけどね。そこを理解してくれた方が今のファンとして残ってくれたんです。

――昔はかなり尖っていたそうですね。

滝口 尖ってたかも!うつ病が落ち着くまでの5、6年ぐらいはずっと。はっきり言いすぎて傷つけちゃったファンの方もいて、そこは今でも申し訳ないと思っています……。もしもう一度あの人たちに会えたら一言謝りたい。でも「ふざけんな」って言われたら言い返しちゃう可能性はあるんですけどね(笑)。

――そんな尖っていた滝口さんですが、2024年に保育士の資格を取得したそうですね。

滝口 もともと芸能界に入る前から保育士を目指して、学校にも通っていたんです。けど、仕事が忙しくなって辞めちゃったんですよね。コロナ禍で時間ができた時に「もう1回学び直そう」と思って。2024年の秋に資格が取れました。


――実際に保育士として働くことも考えていますか?

滝口 保育所は……どうかな。でも障害者施設の実習はすごく充実した時間で、職員さんとも仲良くなったんです。「施設のお祭りに『ゑんら』で来てよ」って言ってもらったこともあったので、何かしら関われたら嬉しいなとは思っています。

――そして、ご実家の環境はかなり大変だったそうですね。

滝口 「劣悪な環境」「よくその空間で20年過ごせましたね」とか、当時はいろいろ言われましたよ(笑)。シャワーがなくて、お風呂のお湯を足し水しながら沸かして使うとか、自分の部屋がないとか。けど、当時は別に何とも思っていませんでした。ある時ふと「え、もしかしてかなりやばい?」って。私は4人兄妹の長女なので成長期が一番早くきたわけですけど、ご飯もさりげなく遠慮してました。

――今は、だいぶ状況が変わりましたか。

滝口 全然違います。昔はお肉は2切れにしとこうかなって我慢してたのに、自分の食べるものは自分で買って作りますし、好きなときに好きなアニメのグッズを好きなだけ買えるようになりました(笑)。
なんか、笑えますよね。ひどいときはグッズだけで、高校生が頑張って稼いだバイト代分くらいの額を全部突っ込むこともあります…。アクスタは500体ぐらいあって、飾りきれないのでコンテンツごとに袋に分けて管理しているほど。そろそろ出版社ごとに仕分けないといけないかなってレベルで。なんか大人になったな、って思います。

――なぜそこまで集めるんですか?

滝口 依存体質なんですよね。だから人に依存しないように、グッズとかアニメに執着しているんだと思います。「ゑんら」のメンバーとスタッフさんにはちょっと依存気味ですけど(笑)。それ以外は全部グッズに向けてます。

――好きなものに思い切り使えるのは、幸せな依存のしかたですね。その好きなものを、仕事にも繋げていきたい?

滝口 アニメ関係のお仕事がしたいです。中高生の頃はアニメが好きなのを隠してたんですけど、ここ3年ぐらいで発信し始めたら「アニメ好きって知って来ました」っていうファンの方が増えてきたんです。
好きなことを言い続けるって大事なんだなって実感。コスプレももっとやってみたくて、『僕のヒーローアカデミア』の蛙吹梅雨ちゃんとか『葬送のフリーレン』やりたいな。ゑんらごと、もっとアニメの世界に近づいていけたら嬉しいです。

▽滝口ひかり(たきぐち・ひかり)
1994年9月20日生まれ、31歳。千葉県出身。O型。身長154センチ。ファッション誌のスナップをきっかけに2014年、アイドルグループ「drop」でデビュー。「2000年に1人の美少女」の異名を持つ。17年に脱退後、実妹・きらら、木乃伊みさとと完全セルフプロデュースユニット「ゑんら」を結成。2024年に保育士資格を取得。アクスタを500体以上集めるアニメ好きで、「好きなことを言い続ける」ことを信条にしている。


【前編】“2000年に1人の美少女”は重圧だった、滝口ひかり「橋本環奈ちゃんの倍を求められても困るなって」
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