俳優・のんに起きた‟ある変化”が、ファンの間で大きな反響を呼んでいる。3月下旬、XやInstagramなどの公式SNSのプロフィールに「のん(本名:能年玲奈)」という表記が加わったのだ。
ネット上では「ついに名前を取り戻せるのか」「堂々と能年玲奈と名乗っていいはず」と歓迎の声が相次いだ。同時に「本名なのに自由に使えなかったのはおかしい」という、芸能界の構造への憤りも改めて噴き出している。

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のんといえば、能年玲奈として活動していた2013年、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』のヒロイン役で大ブレイクした。しかし、当時の所属事務所との間に独立トラブルが勃発し、2016年に「のん」に改名して再スタートを切ったが、地上波の番組からは姿を消してしまった。各種報道によれば、契約上、「能年玲奈」という名前の使用は双方の協議事項とされていたというが、係争の長期化でイメージが傷つくことを考え、本人が「のん」名義での活動を選んだと伝えられてきた。

ただ、ここで多くの人が感じたのは素朴な疑問だ。本名である「能年玲奈」が、なぜ本人の意思だけでは使えないのか。芸名ならまだしも、本名にまで事務所との力関係が及ぶように見える状況は、一般の常識からすればどうしても不自然だった。今回のプロフィール変更が大きな話題になったのは、この理不尽さがずっと尾を引いていたからでもある。

この変化への注目度をさらに高める要因となったのが、昨年9月30日に公正取引委員会と内閣官房が連名で公表した「実演家等と芸能事務所、放送事業者等及びレコード会社との取引の適正化に関する指針」だ。これは立場が弱くなりがちなタレントを、強い立場の事務所側から守るための指針で、芸能界の慣行にかなり踏み込んだ内容だった。

この指針では、契約期間を定めていないにもかかわらず一方的に退所を認めないこと、独立・移籍後の活動ができなくなるかのように圧力をかけること、テレビ局などに「トラブルがあった」などと伝えて出演を妨げることに加え、退所時に十分な協議もなく芸名の使用を一方的に制限する行為も問題になり得ると明記された。
芸能界で長らく‟それが当たり前”として処理されてきたことに対し、国が「適正とは言えない可能性がある」と線を引いた形だ。

そうした背景を踏まえると、のんが「本名:能年玲奈」と表記したことは、ただのプロフィール更新ではなく、業界のルールや空気が少しずつ変わり始めたことを映す動きとして受け取れる。もちろん、現時点で活動名義が「能年玲奈」に戻るかどうかは分からないが、少なくとも「本名に触れることすら難しい」という段階からは一歩進んだと見ていいだろう。

地上波でも変化は見えている。のんは昨年4月27日放送のTBS系日曜劇場『キャスター』第3話にゲスト出演し、民放ドラマ出演を果たした。さらに今年1月期には、中京テレビ・日本テレビ系『こちら予備自衛英雄補?!』にメインキャストの一人として出演し、約12年ぶりに連続ドラマのレギュラーを務めた。こうした流れを見ると、彼女は業界の変化に伴い、地上波本格復帰に向けて歩みを進めてきたと言える。

ただし、のんの‟復活”は業界の変化だけで説明できるものでもない。本人は地上波の民放ドラマから遠ざかっていた間も、映画や配信作品で地道に実績を積み重ねてきた。昨年4月からNetflixで世界配信された映画『新幹線大爆破』や、同年9月から配信されたABEMAオリジナルドラマ『MISS KING / ミス・キング』など、話題作への出演が続いた。さらに、今年8月28日公開予定の映画『平行と垂直』では安田章大とW主演を務める。腐ることなく演技力を磨き続け、俳優としての存在感を失わず、需要を維持し続けてきたことも再躍進の大きな要因となった。


さらに、のんのケースに限らず、芸能界全体の空気も変わりつつある。テレビ露出が一時激減していた「新しい地図」の香取慎吾、稲垣吾郎、草彅剛が地上波で存在感を取り戻し、独立騒動の末に岡田健史から改名した水上恒司も俳優として着実にキャリアを積み重ねている。近年は俳優やタレントの独立も相次ぎ、大手事務所を離れてもそれだけで致命傷になる時代ではなくなりつつある。

ただし、芸能界の体質改善が問われるのはここからだろう。こうした変化が一部の影響力のあるタレントに限った例外ではなく、本当に業界全体に浸透するのか。そして、その変化しつつある芸能界の中で、のんは‟名前を取り戻す”段階の先に進み、地上波で本格的な再浮上を果たせるのか。『あまちゃん』で国民的人気を得ながら、一度は業界の力学に翻弄された存在だからこそ、のんの今後は「芸能界はどこまで本気で変わるのか」を測る試金石にもなりそうだ。

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