【写真】ビジュアルにも注目、新センター藤崎未夢のキュートな自撮り
7月22日、NGT48の5thシングル『シャーベットピンク』が発売される。一昨年10月発売の『世界の人へ』から約1年9カ月ぶりの発売となり、レコード会社はユニバーサルミュージック内のEMI Recordsに移籍し、グループとして再出発を図ることになった。
今作はグループ初となる全員選抜。先輩後輩関係なく、在籍30人全員がフラットな状態でシングルを歌う。そのセンターに抜擢されたのは、研究生の藤崎未夢だった。
この新潟県新潟市生まれの19歳は、全国的にはまったく無名。それどころか、48グループのファンにすらほとんど認知されていないといってよい。そんな彼女がなぜ大役を任されたのか、紐解いていこう。
私は彼女を一度だけ取材したことがある。今年2月のことだ。
1月18日、TOKYO DOME CITY HALLでNGT48は選抜メンバーコンサートを開催した。
1期生も研究生も参加したこの合宿、コンサート当日にその模様が映像で披露されたのだが、内容はかなり過酷なものだった。歌唱指導は菅井秀憲氏。ハロプロ、AKB48、PRODUCE 101 JAPANなどへの指導で知られるボイストレーナーで、その指導っぷりは参加者ばかりか視聴者まで恐怖を感じさせることでおなじみだ。
そんな歌唱指導とダンス指導をクリアした16人にコンサート出演のチャンスが与えられることになっていたのだが、藤崎はコンサートのセンターを任された本間日陽の横で参加することになった。研究生ながら3トップの一角を占めたのだ。コンサートに出演できない1期生もいた。藤崎は並みいる先輩をごぼう抜きしたわけだ。
この未知の研究生はコンサートで輝きを放っていた。名前をうっすら知っていた程度だったが、長身から繰り出すダンスが魅力的だった。きっと経験者ではない。だが、スキル不足を補おうとする溌溂さが気を引いた。
藤崎はアイドルが好きだった。初めて両親に買ってもらったCDはモーニング娘。で、祖母の家の床の間を即席のステージにしてアイドルごっこに興じていた。興味の対象が48グループに移ると、特にAKB48の板野友美を推すようになった。小学校の頃、あまりにハマりすぎて親に怒られ、“AKB48禁止令”を出され、1年間AKB48から離れざるを得なかった苦い経験もある。
禁止令がとけると、小嶋真子を推すようになった。2015年、地元・新潟市にNGT48が結成されると知って、喜び勇んで1期生オーディションを受けた。しかし、あえなく最終審査で落選。悔しさを胸にしまい込んで、古参ヲタになる道を選んだ。
劇場公演やイベントに通っているうちに、すっかりNGT48の虜になっていた。
学校ではおとなしく過ごしていた。まじめに机に向かい、中学では茶道部に入った。運動が苦手で、活動が楽そうだったからだ。まじめだからか、部長に推挙されている。
性格は人見知り。高校に入っても友達ができず、弁当を一人で食べる時期が続いた。親から「友達できた?」と聞かれるのが苦痛だった。そんな中、アイドル好きの同級生を見つけ、ようやく自分を開放することができた。NGT48のイベントを観に行っていたのは、その同級生と、だ。
高校は進学校だった。
進路先を固めなくてはならない時期だっただけに、締め切りのギリギリまで悩んだが、「実はアイドルになりたいんです」と意を決して先生に相談することに。ドラフト会議の結果、NGT48のチームNIIIから5巡目に指名され、同チーム最後の指名者となり、綱渡りではあるが、同級生よりも一足先に第一志望へと歩を進めることとなった。
ちなみに、その進学校での最高成績はクラスで1位、学年で3位。NGT48に合格したことでその学校は転校したが、面接だけで受けられる大学を受験してみると、不合格に終わった。勉強することは好きなので、現在は宅建の資格取得に動き出しているという。
ドラフト会議ではギリギリの指名。ダンス経験はゼロ。振り覚えは悪い。運動は大の苦手。
話を1月の選抜コンサートに戻す。藤崎は、「レッスンからコンサートが終わるまで絶対に泣かない」と決めていた。研究生にとってはあまりに大きな不安を抱えていたから、一度決壊したらフロントメンバーなど務められないと判断したのだろう。それに、後ろで踊る先輩の気持ちを考えたら、めそめそしているわけにはいかない。
結果、藤崎は涙を流すことなく、2時間15分のステージを終えた。裏にハケると、見知った顔があった。ダンスの先生だ。藤崎のことは加入当初からよく知っている。その顔を見ると、藤崎の緊張の糸は一瞬で切れた。
「今も思い出すと泣きそうなんですけど……」と言いながら、取材中の藤崎は泣いていた。
6月に入って、キャンプ・アウトドア情報メディアでの連載も決まった。最後方から巻き返すアイドル人生が始まった。
5枚目のシングルをリリースするにあたり、NGT48に向けられている視線を、藤崎はどう考えているだろう。自分だけで抱え込むことなく、30人で立ち向かってほしい。それが今作のNGT48に課せられた使命だ。