元AV女優の澁谷果歩(しぶや・かほ)の初の著書『AVについて女子が知っておくべきすべてのこと』(サイゾー)が話題を呼んでいる。澁谷は青山学院大学卒業後、スポーツ新聞社に就職。
記者として主にプロ野球の取材を担当した後に退社して、2014年11月にAVデビューという他にはない経歴の持ち主だ。

本書が凡百のアダルトビデオ関連本と一線を画しているのは、タイトルからも分かる通り女性読者に向けて書かれていること。2018年9月に引退するまで、オムニバスを含めて約750本に及ぶ、膨大な数の作品に出演した彼女だからこその圧倒的な情報量と洞察力で本書は構成されている。業界の内側が隅から隅まで記されているが、決して露悪的ではなく、業界の現状を素直に伝える作りになっている。

現在は執筆やタレント活動の傍ら、コスプレイヤーやMCとして海外のアニメイベントに多数参加している澁谷に、デビューのきっかけ、女優時代のお金について、引退を決意したきっかけなどについて話を聞いた。(3回連載の3回目)

※インタビュー1<澁谷果歩が教える「女優の給与明細」>はこちらから。
※インタビュー2<澁谷果歩が語る「私が業界に飛び込んだ理由」>はこちらから。

【写真】近年はコスプレイヤーとしても活躍、澁谷果歩の撮り下ろしカット

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最初の事務所に3年間所属した後、別の大手事務所に移籍した。

「引退を考え始めたときに、最初の事務所は信用できない部分も多かったので、そこを最後にしたくなかったんです。それに引退後のお仕事も考えると、比較対象となる他事務所での経験が欲しかったですし、もっとメディア展開ができそうな大手に移籍しようと決めたんです」

4年間でたくさんの女優と共演したが、プライベートで仲良くなることはなかった。

「そもそもデビュー当時は、プライベートで他のAV女優と交流するのは事務所から禁じられていたんです。ギャラを始め待遇面の違いがバレて不満が出てしまう可能性もありますからね。
ただデビューして1年も経つと、他の女優との共演作も増えて、業界のいろんな部分も見えてくるから、事務所の管理も緩くなるんです。それで何人かの女優とLINE交換もしましたけど、ある程度距離を置いて、仕事仲間として付き合おうと決めていました。別に友達探しをしたい訳じゃないですし、あくまで個人的な感想ですが、深入りした関係になると面倒なことも多いですからね」

一貫してメンタル面を考えてエゴサはしないようにしているが、それでも否応なしに目に入ってしまうことがある。そんなときは独自の対処法でやり過ごした。

「誤ってネガコメなどを見ちゃったときは、人気のある子や、可愛い子のネガコメを見るんです。それで、こんな可愛い子でも叩かれるんだから、私なんてしょうがないじゃんって思うようにしているんです(笑)」

引退を決断した1番の理由は、仕事のマンネリ化だった。

「私はメーカーにしても内容にしても、自分では希望を言わずに事務所任せでした。AV女優になった時点で、好奇心を満たすために、いろんなことをやろうってスタンスでしたからね。でも後半は似たような内容ばかりでルーティン化してきたんですよ。それだと会社勤めと変わらないなと。良くも悪くもお仕事って感じでやっていて,新しく学ぶこともないかなと思って引退を決意したんです」

引退後も、しばらくは現役のAV女優と一緒にネット番組のバラエティやAVイベントに出演していた。また海外からのオファーでヌードグラビアもやっていた。
しかし引退後もAV出演のオファーがあったことで一区切りをつける決心をする。

「いつまでもカムバックのオファーが来る状況だと引退した意味がないですからね。執筆のお仕事もいただいていましたし、経済的に困っていたわけでもないので、引退して1年でキリよく裸やAV絡みの仕事は辞めました。何より元AV女優として、他の人がやってないことで成功したいなって気持ちが強かったんです。そうすることで『AVに出たら人生おしまい』ってイメージを変えたかったんですよね。だったらAV女優だったことを隠すのはやめようと。でも、“あの人は今?”みたいな、AVをやっていた頃が一番輝いていたってことにはしたくない。どんな形であれ、『澁谷果歩って昔はAV女優をやっていたらしいよ』って言われるような存在にならないといけないなと思ったんです」

引退後はSNSで本格的なコスプレ動画を発信しているうちに、海外からも注目されるようになり、コスプレイヤーとして海外のアニメイベントにも呼ばれるようになった。

「海外のアニメイベントに行くと、知ってくださっている方が多くて、改めて日本のオタク文化はすごいなと感じました。今は女優時代とは逆に服を着るようになりましたけど、それが新しいお仕事にも繋がって。趣味と実益が上手くマッチしていますね」

▽『AVについて女子が知っておくべきすべてのこと』
出版社:サイゾー
定価:1,650円
誰も教えてくれないAVの本当を、AV女優が客観的に書いた、澁谷果歩、初の著書。『週刊新潮』で吉田豪が 「AVの暴露本でもなければ、イメージアップのための嘘だらけの本でもない。
驚くほど客観的で、なおかつ"デリケートゾーン"にも相当踏み込んでいる画期的な一冊。」と評するなど、メディアにも多数取り上げられ話題を呼んでいる。
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