第83期A級順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は2回戦が進行中。8月21日(木)には糸谷哲郎八段―佐々木勇気八段の一戦が関西将棋会館で行われました。
対局の結果、力戦調の相雁木から抜け出した糸谷八段が攻めきって115手で勝利。持ち時間を半分以上残すスピード決着で開幕2連勝としています。
○絶好調の糸谷八段

1回戦では豊島将之九段を得意の右玉で破った糸谷八段。6月に将棋連盟の常務理事に就任してからもその成績は上向きで、直近の公式戦では3連勝と好調をキープしています。双方が角道を止める相雁木に進んだ本局はしばらく穏やかな駒組みが続くと思われましたが、後手の佐々木八段が駒組みの中で指したさりげない桂跳ねに糸谷八段のセンサーが反応します。

後手の右銀が立ち遅れていると見た糸谷八段は棒銀を採用。考慮時間わずか1分での銀出に決断の良さが表れています。結果的にこの選択により佐々木八段は通常の雁木の駒組みを断念させられることとなり、雁木対右玉の力戦へと変化しながら長い中盤の押し引きが始まりました。ペースをつかんだと思われた糸谷八段も決め手を得るには至りません。

○超早指しの快勝譜

夕食休憩が明けて対局再開。形勢は互角ながら、ここまでの指しやすさを生かして糸谷八段は残り時間で3時間ほどのリードを奪っています(持ち時間各6時間)。玉頭の厚みを生かした佐々木八段が総攻撃を開始した場面が本局のポイントとなりました。
放たれた手裏剣の歩の手筋に対し、玉を早逃げしたのが薄い玉型をいとわない糸谷流の指し回しです。

筋よい受けで反撃の手番を得た糸谷八段は満を持して反撃開始。8筋に打った桂での王手が寄せの決め手となりました。終局時刻は20時34分、最後は形勢の開きを認めた佐々木八段が投了。持ち時間を使い切った佐々木八段に対し、3時間45分を残した糸谷八段の早指しっぷりが光る快勝譜となりました。勝った糸谷八段は開幕2連勝で挑戦に向け前進。敗れた佐々木八段は2連敗となっています。

水留啓(将棋情報局)
編集部おすすめ