学校に1人1台のコンピュータ環境を導入する「GIGAスクール構想」第2期がスタート。第1期の各自治体での評判や活用事例を参考に、WindowsからiPadに鞍替えするところが増えています。


そのようななか、ユニークな取り組みを進めたのが岐阜市。先生が使う校務用パソコンをWindowsからMacに鞍替えし、市内の公立学校の先生すべてにMacBook Airを1台ずつ貸与。2学期が始まるこの9月から本格的に利用を開始しました。公立学校の校務用端末にMacを使う自治体は日本で初めてとされ、全国的に見ても珍しいといえます。

教育委員会の責任者は、薄型軽量で持ち運びやすくバッテリーが長持ちし、場所を選ばず使える点が、先生の働き方改革につながると注目。先行してMacBook Airを使い始めた先生は、これまでパソコンがある職員室でしかできなかった仕事が教室でもできるようになったと評価しました。さらに、Macに不慣れなベテラン先生に若い先生が使い方を教えたり、授業の進め方もアドバイスしたりと、上意下達が中心だった学校内に好ましい化学変化が起こっていました。

○児童生徒の学びの質を高めたあとは、先生の働き方改革を進めたい

岐阜市は、GIGAスクール第1期で児童生徒用の端末にiPadを採用。「黒板に向かって先生の話を一斉に聞き、児童生徒に分かりましたかと問う授業は古い」という考えのもとに、知りたい情報を児童生徒がiPadで調べて自分用に最適化する、ネットワーク経由で共有された仲間の考えを見て自身も学ぶ、という探求型の学びで教育の質を高めることに成功。岐阜市では、不登校も減少したといいます。

そんな岐阜市ですが、昨今社会問題化している先生の働き方改革も進めています。岐阜市教育委員会 教育長の水川和彦氏は「先生の負担を少しでも減らし、授業の準備や子どもとの関わりにより多くの時間を使えるようにしたい」という思いから、先生が使う校務用パソコンをそれまでのWindowsからMacへ変更することを決断。
市で1,849台ものMacBook Airを用意し、すべての先生に1台ずつ貸与して使ってもらうようにしました。

岐阜市がMacBook Airの導入で目指したのは「校務端末のロケーションフリー化」。これまで職員室でしかできなかった業務を、教室など職員室以外の場所でも柔軟にできるようにしよう、というわけです。

授業中にテストをしている間、職員室で行っていた作業の続きを教室で行うだけでなく、育児や介護などで帰宅した際に学校での作業の続きを自宅で行うなど、先生のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を可能にし、仕事の効率化と健康の維持増進につなげる狙いです。

9月の一斉導入に先行してMacBook Airを使ってきた若い先生からは、「パソコンでの作業は腰を据えてやるデスクワーク、という印象だったが、子どもたちの様子を見に行きながら授業の合間に作業できるようになったのはありがたい」「授業の準備や子どもとの関わりに、より多くの時間が使えるようになった」「サイズ感がよく持ち運びに苦労しない。バッテリーがよく持つので、授業中に充電のことを気にしないで済むのもうれしい」といったポジティブな感想が返ってきたそうです。ほかにも、デジタル教材を作成する時間が大幅に削減できた、紙の資料が減らせた、といった声もありました。

AirDropを介した児童生徒用iPadとの連携のしやすさも、やはり評価されていました。先行して使い始めた先生は「子どもたちがiPadで撮影した写真や作成した課題は、AirDropで担任が受け取れるので、とても手軽ですね。校外学習の記録や学習のまとめをMacBook Airで作成するのがはかどりました」と評価します。

意外な効果として、Macの使い方に関して年配の先生から若手の先生への質問が増え、組織としてよい循環や活性化が見られているそう。市も、先生に向けた研修会を実施するほか、いつでも参照できる使い方動画を配信するなど、しっかりとしたサポート体制を整えています。


MacBook Airは若いビジネスパーソンや大学生を中心に広く愛用されていますが、公立学校の先生にとってもメリットをもたらしていました。GIGAスクール構想でiPadを採用し、アップル製品になじみを持つ自治体が多いことを考えると、この流れは岐阜市以外に広がる可能性もありそうです。
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