広瀬すず主演の映画『遠い山なみの光』(公開中)の公開記念舞台挨拶が実施され、広瀬、二階堂ふみ吉田羊と石川慶監督が登壇した。

『遠い山なみの光』は、ノーベル文学賞受賞作家カズオ・イシグロ氏の長編デビュー作を、石川慶監督が映画化。
主演は広瀬すず、共演は二階堂ふみ、吉田羊、カミラ・アイコ、松下洸平、三浦友和ら。舞台は、戦後間もない1950年代の長崎と、1980年代のイギリスで、時代と場所を超えて交錯する「記憶」を巡る秘密を紐解いていくヒューマンミステリーに仕上がっている。

9月6日に本作の公開記念舞台挨拶がTOHO シネマズ六本木ヒルズで実施され、広瀬、二階堂、吉田、石川監督が登壇し、花束ゲストとして、子役・鈴木碧桜(みお)が登場した。

各国の主要映画祭への出品で、世界から注目を集めていることについて広瀬は「カンヌから始まり、海外の方に見ていただく機会が多かったので、日本で公開して、日本の物語をたくさんの方に知っていただくことに、"やっとだ!"みたいな気持ちもありつつ、世界で日本のことを知っていただくきっかけになる作品になったらうれしいなと思います。すごく光栄に思います」と声を弾ませた。本作が公開された心境を聞かれた二階堂は「今年もすごく暑いんですけど、撮影のときもとても暑くて、スタッフの方々もキャストもみんな大変でした。でも、丁寧に妥協なく一つひとつのシーンを作っていく現場でしたので、完成したものを見たときはすべてスクリーンの中に映っているなと感じて、それを今日みなさんに見ていただけてうれしいです」と微笑んだ。

広瀬と初共演した感想や印象について二階堂は「とても頼もしくて、現場で常にずっしりといてくださったので、スタッフの各部署の方々も我々も安心して現場に臨むことができて、本当に頼りになる座長でした」と称賛し、これに照れ笑いを浮かべた広瀬は、二階堂との共演について「この物語を自分で咀嚼していく中で、自分の中にある違和感みたいなものが佐知子さんといると解けるような、ヒモが解けていく感覚があって、この役は二階堂さんしかできないだろうなって思う説得力と、圧倒的存在感を目の前で見させていただいて、すごく刺激的な時間でした」と目を輝かせた。

そんな2人の共演について、石川監督は「初共演だと思えないくらい、押すところ引くところあうんの呼吸で2人の息がピタッと合って、見ていても心地よかったですし、編集していても音楽を聴いているみたいな心地良いセッションだったと思います」と舌を巻いた。

一方、先日本作の舞台挨拶で長崎にも行ったと、イギリスパートの悦子を演じた吉田は「すずちゃんと監督と一緒に平和祈念像にも献花させていただいて、舞台挨拶でも長崎のみなさまが私たちの言葉にじっと耳を傾けていらっしゃって、全国に先駆けて長崎で本作を公開できたということは、すごく意味のあることだったなと思います」としみじみと語り、「長崎の街って本当に美しくて、異国情緒あふれ、貿易で栄えた街ならではの活気もあって、かと思えば、ちょっと街を歩けば焦げついた建物が残っていたりして、歴史と記憶が混在した街なんだなと、行ってみて改めて感じました。映画を通して長崎について、そして原爆について、日本だけではなく世界の人がもう一度考えるきっかけになったらいいなと思います」と期待を寄せた。

舞台挨拶の終盤では、二階堂演じる佐知子の娘役を演じた鈴木碧桜(みお)が登場して、4人に花束を贈呈する一幕もあり、広瀬と共演した感想を求められると「本当に演技がお上手で、撮影で一緒に共演したときは、早く広瀬さんみたいに演技が上手くならないかなってずっと思っていました」と胸の内を明かし、広瀬は「また共演できたらうれしいですね」と優しく声をかけた。


最後に、締めのコメントを求められた石川監督は「カズオさんから言われて印象に残っているのは、『この物語は歴史の語り直しの話なんだ。だからあなたの言葉で、あなたの解釈で語り直してください』って言われて、こういう映画を作って、今日みなさんに見てもらって、みなさんの解釈で語り直していただけたら、この物語にとって一番幸せなのかなと思います」と語り、「いろいろな解釈ができる映画ですが、記憶の物語なのでどれが正解とかではなくて、みなさんがどう捉えたのかというのが正解なのかなと思っているので、ぜひみなさんの言葉で語っていっていただけたらなと思います」とお願いした。

広瀬は「長崎の歴史や当時を生き抜いた女性たちは、正直、このお仕事をするまでは自分とは近い存在ではなかったんですけど、役を通して、作品を通して、自分ごとのように感じられる作品でした。それが自分だけじゃなくて、この作品を見てくださった多くの方にも知ってもらえるようなきっかけになったらいいなと、誰かの希望になる作品になったらいいなと思っていますので、余白のある作品ですが、みなさん心と言葉で埋めてもらえたらうれしく思います」とメッセージを残した。

(C)『遠い山なみの光』製作委員会

【編集部MEMO】
原作者、エグゼクティブ・プロデューサーのカズオ・イシグロは、本作で描かれる長崎県の出身で、幼年期に渡英したのち、1983年にイギリス国籍を取得。2017年にノーベル文学賞を受賞している。本作以外にも映画化された作品は数多く、『日の名残り』『上海の伯爵夫人』『わたしを離さないで』『生きる LIVING』は、日本でも公開されている。
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