●“俳優として一番にやるべきこと”を実感した転機を明かす
2026年度前期のNHK連続テレビ小説『風、薫る』で見上愛と共にW主演を務める上坂樹里にインタビュー。朝ドラ主演に決定した心境や意気込みを聞くとともに、2021年の俳優デビューからの歩みについて話を聞いた。
『風、薫る』は、明治時代に看護の世界に飛び込んだ大関和さんと鈴木雅さんという2人のトレインドナース(正規に訓練された看護師)をモチーフに描くバディドラマ。同じ看護婦養成所を卒業した2人が、患者や医師たちとの向き合い方に悩み、ぶつかり合いながら成長し、やがては“最強のバディ”になって、まだ見ぬ世界を切り拓いていく。大関さんをモチーフにした一ノ瀬りんを見上愛、鈴木さんをモチーフにした大家直美を上坂樹里が演じる。
――俳優デビューから4年経ちますが、ここまでの歩みをどのように感じていますか?
周りの環境にすごく恵まれているなと思います。これまでの作品もそうですし、ご一緒したキャストさんやスタッフさん、家族や事務所のマネージャーさんなどもそうですが、常に周りの環境が自分を成長させてくれたり、変えてくれたりしていたので、すごくありがたいなと感じています。
――特にご自身に大きな影響を与えた転機を教えてください。
初めて地上波のドラマに出演させていただいた『生理のおじさんとその娘』は、扱っている題材が難しいものだったので、放送後にすごく反響をいただいた中で、私自身のお芝居について言ってくださっているのももちろんうれしいですが、ドラマを見てこう思ったとか、誰かと共有したというメッセージを多く目にして、自分が俳優として作品に携わる中で一番にやるべきことがそこにあるんだなと、初めて身をもって実感できた作品でした。自分にとってはじめの一歩でもあり、今でも大切な作品です。
――自分をこう見せたいというより、作品全体のことを一番に考えるように?
そうですね。
――演技を磨くために日々努力されていることなどあるのでしょうか。
作品ごとに学んだことや得たものがそれぞれたくさんありますが、いつも壁があって、お芝居って難しいと思う場面の方が多いです。『御上先生』では、それまで自分の演技にいっぱいいっぱいだったのが、初めて周りを見られるようになったなと感じられて、撮影していく中で芽生えた感情があったり、相手とキャッチボールができたと感じる瞬間が多くあったので、自分でもできる限りのことは準備しますが、撮影現場で学ぶことが圧倒的に多いなと思います。
――『風、薫る』のオーディションにも『御上先生』での経験が生かせたなという手応えがありましたか?
『御上先生』でたくさんの学びがあったので、自然とそれが生かせていたのかもしれません。
――経験を重ねていく中で、俳優業に対する思いはどのように変わってきていますか?
お芝居に対する探求心がものすごく湧き上がってきています。周りの方のお芝居を間近で感じられる環境にいさせてもらっていて、こういうお芝居の仕方をするんだという新たな発見や気づきがあり、学ばせてもらいながら、自分の演技に関してもっとこうできたのにという悔しい思いも出てくるので、お芝居に対する思いは強くなる一方です。
●朝ドラ主演を少しずつ実感も「いまだに信じられないという気持ちも」
――以前から朝ドラヒロインを目標に掲げられていましたが、オーディションで2410人の中から主演に選ばれた時の心境を教えてください。
伝えてもらった時は、自分に何が起きているのか理解が追いつかないぐらいうれしかったです。発表されてからたくさん祝福のメッセージをいただいたり、「応援している」「頑張ってね」という声をいただいて、少しずつ実感が湧いてきていますし、『風、薫る』という作品に携わる責任感が強くなってきています。ただ、ふとした瞬間に振り出しに戻って、「え!?」という感覚になることは多々あります(笑)。いまだに信じられないという気持ちもあって。
――『風、薫る』の撮影に向けて準備していることはありますか?
稽古をしています。明治時代の話なので、基本の所作などを習っていて、全部難しいです。
――特に苦戦していることは?
着物を着ているので気をつけることがいろいろあって、座り方、立ち方、歩き方など、すべてが難しいです。意識して動くのではなく、それが日常という世界に生きている人物を演じるので、自然に振る舞えるようにもっと頑張らないといけないなと思っています。
――トレインドナースの大家直美を演じられますが、役柄についても深めているところでしょうか。
書籍などを読んで学んでいるところですが、これからもっと大家直美という役を知って、役と共に自分も成長できるように頑張りたいです。
――役柄の魅力をどのように感じているか、またご自身との共通点についてお聞かせください。
すごく人間味にあふれていて、自分が生き抜くためにプライドを捨てて、嘘をついたり、ずる賢いところもあって、したたかで芯のある強い女性だなと感じています。今の段階だと自分とは全く違うキャラクターだなという印象です。
――制作統括の松園武大さんは、「凛とした佇まいと奥底にあるたくましさが、どんな苦境にあっても生き抜くことを諦めない大家直美という人物像と重なって見えました」とおっしゃっていたので、客観的に見ると似ている部分があるんでしょうね。
そうなんですかね(笑)。期待に応えられるようにしっかり頑張りたいです。
●川栄李奈&高石あかりの存在に心強さ「背中を追っていけるように頑張りたい」
――事務所の先輩で、2025年度後期の連続テレビ小説『ばけばけ』の主演を務められる高石あかり(高ははしごだか)さんからオーディション合格を伝えられたそうですが、朝ドラヒロインの先輩として何かアドバイスはもらいましたか?
会見当日に「今日は樹里ちゃんが主役だから全力で楽しんでね」というエールをくださって、すごく心強くてうれしかったです。あかりさんはすでに撮影に入られていて「楽しい」とおっしゃっていて、きっと大変なこともあると思いますが、お芝居を楽しむことを大事にされているので、私も楽しみたいなと思っています。
――2021年度後期の『カムカムエヴリバディ』で主演を務められた川栄李奈さんとはお話されましたか?
会見後に連絡をいただいて、まさか川栄さんから連絡をいただけると思ってなかったので、本当にうれしかったです。「おめでとう。
――改めて今後の抱負をお聞かせください。
自分の中で変わらずあるのは、作品の世界観の中で、1人の人間としてそこに存在できるような俳優になりたいという思いです。そして、今、目の前にあるやるべきことに真正面から向き合い続けていけたらいいなと思っています。
――今は朝ドラに全力を! という思いでしょうか。
まずはそれをしっかり果たすというのが一番です。その中でまた新しく目標ができるかもしれないですし、そういうものが出てきたらまたそれに向かって頑張っていけたらと思います。
■上坂樹里
2005年7月14日生まれ、神奈川県出身。2017年にエイベックス主催のコンテスト「キラチャレ2017」でモデル部門の審査員特別賞を受賞し、2018年に活動開始。「ミスセブンティーン2021」で『Seventeen』専属モデル入り。