第84期順位戦A級(主催:朝日新聞社・毎日新聞社・日本将棋連盟)は3回戦が進行中。9月23日(火)には糸谷哲郎八段―千田翔太八段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、相雁木の終盤戦から抜け出した糸谷八段が165手で勝利。持ち時間の半分を残す早指しで開幕3連勝を飾っています。○糸谷流の相雁木糸谷八段2勝0敗、千田八段1勝1敗で迎えた3回戦。先手となった糸谷八段は角道を止めて雁木を志向、後手の千田八段も同様に応じて相雁木の戦型に落ち着きました。糸谷八段としては2回戦の佐々木勇気八段戦と同じ戦型選択で、その際は棒銀から終盤の華麗な玉さばきでリードを奪い快勝を収めていました。本局は一転して囲い合いの持久戦へと進めます。先に動いたのは糸谷八段でした。右桂を跳ね出して敵角を逸らしておいてから玉頭に継ぎ歩を繰り出したのが相居飛車の基本手筋ともいえる拠点の作り方。この数手後、角取りを手抜いて銀取りで切り返したのが鋭い一手で、一足先に後手玉に嫌味をつけて指しやすさを手にしました。千田八段の「冴えなかった」という局後の感想が本局の趨勢を物語ります。○圧倒的早指しで快勝!攻め続ける糸谷八段の早指しが目を引きます。100手目を指した段階での残り時間は千田八段の30分に対して糸谷八段は4時間強。一分将棋に入った千田八段が追われるように着手すれば糸谷八段がすぐに返すという場面が目立ち始めました。攻め合い一手勝ちを見抜いた糸谷八段は双方の玉に王手がかかる複雑な局面もスイスイと切り抜けていきます。終局時刻は21時45分、最後は自玉の詰みを認めた千田八段が投了。30手を超える実戦詰将棋を読み切った糸谷八段は全体でも持ち時間の半分を残す快勝譜となりました。千田八段としては終盤に香のタダ捨てで速度を逆転させる勝負手があったものの、第一感ではなく選びづらかった模様。挑戦に向け前進した糸谷八段は4回戦で増田康宏八段と対戦します。水留啓(将棋情報局)