ALSOK杯第75期王将戦(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)は藤井聡太王将への挑戦権を争う挑戦者決定リーグが開幕。9月26日(金)には菅井竜也八段―大橋貴洸七段の一戦が関西将棋会館で行われました。
対局の結果、得意のゴキゲン中飛車を駆使した菅井八段が127手で勝利。2年ぶりの王将挑戦に向けて好スタートを切りました。
○フレッシュな同学年対決

2年前の王将リーグでは渡辺明九段、羽生善治九段らそうそうたる面子を撃破して藤井王将への挑戦権を獲得した菅井八段。今期は大橋七段のほか伊藤匠叡王などフレッシュなメンバーが揃うなかでの戦いに注目が集まります。ともに1992年生まれの同学年対決となった本局は、先手となった菅井八段が得意の先手中飛車を採用して幕を開けました。

誰も指したことのないような独自の形を指しこなすのが菅井八段らしい職人芸。自玉を穴熊に囲いながら中央で銀交換をする展開は「持久戦と急戦の矛盾した両立」といえる指し回しで、局面のバランスを保つのが大変そうに思われました。形勢を「すこし悪いくらいには収まっている」とした菅井八段は、ここから持ち味の怪力を発揮してペースをつかみます。

○菅井流振り穴の快勝譜

大橋七段の攻勢が続くかと思われた局面、金取りを目指す角打ちに対し飛車取りの角で応じたのが菅井流の鋭い切り返しでした。飛車が逃げれば打ったばかりの角を切り飛ばして玉を薄める手があるだけに、後手は受けに窮しています。飛車を手にした菅井八段はその後も緩急自在の手順で「堅い、攻めてる、切れない」という穴熊の黄金パターンを実現します。

終局時刻は18時40分、最後は自玉の詰みを認めた大橋七段が投了。
序盤では金銀2枚の守りだったはずの先手玉は終盤の入り口には金銀4枚が集まる堅陣になっていたのが印象的で、中終盤に強みを発揮する菅井流振り飛車の代表局といえる快勝譜になりました。敗れた大橋七段は局後「中盤のあたりでよい選択ができなかった」と悔しさをにじませました。

水留啓(将棋情報局)
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