共働き世帯の増加にともない、「ペアローン」で住宅ローンを組むケースが増えています。また、昨今の住宅価格高騰も利用増加を後押しする一因と考えられます。
では、実際にはどのような理由でペアローンが選ばれているのでしょうか。

「ペアローン」利用の背景とは

ペアローンとは、一つの物件に対し、夫婦または親子などが各自の収入を基準に、合計2本の住宅ローンを組む方法です。ペアローンでは、両者とも「主たる債務者」であり、互いに相手の連帯保証人となります。

収入合算とは、住宅ローンを申し込んだ本人の収入に、配偶者または親子など親族の収入を合算して住宅ローンの審査が行われ、借入可能額が決まる方法です。なお、収入を合算した親族は、連帯保証人になる必要があります。

こうしたペアローンや収入合算といった仕組みを利用する人は、どのくらいいるのでしょうか。住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用者調査(2025年4月調査)】」によると、住宅ローンを利用して住宅を購入した人のうち、「ペアローンまたは収入合算を利用」した割合は39.3%でした。

内訳を見ると、「ペアローンを利用した」と回答したのは25.9%(2024年10月調査比-0.5ポイント)、「収入合算を利用した」と回答したのは13.4%(2024年10月調査比+0.8ポイント)でした。収入合算の利用が微増しているのに対し、ペアローンの利用はわずかに減少しています。
ペアローンを組むメリットとデメリット

夫婦でペアローンを組んだ場合、具体的にはどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。
<メリット>

ペアローンの最大のメリットは、単独で住宅ローンを組むより借入額が大きくなる点でしょう。仮に、共働き夫婦の収入額が同じ場合、夫と妻がそれぞれローンを組むことで、単独で組んだときの倍の金額を借り入れることができます。
借入可能額が多くなれば、希望する物件の選択肢が大きく広げられます。

また、夫婦それぞれが住宅ローンを組むことで、両者とも住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)が受けられます。住宅ローン控除は、住宅ローンの返済中に特定の条件を満たした場合、最大13年間、年末時点の住宅ローン残高の0.7%を所得税や住民税から控除できる制度です。

住宅ローン控除は、住宅ローンの債務者が対象となりますので、夫婦のどちらも主債務者になるペアローンは2人分の節税効果が得られてお得です。

さらにペアローンでは、団体信用生命保険(団信)もそれぞれ加入できます。どちらかの契約者が死亡または高度障害となった場合、その契約者分のローン残債は保険で完済されるため、もう一方の契約者のローン負担が増えることはありません。
<デメリット>

一方、ペアローンは住宅ローン契約が2本になるため、契約時の事務手数料や登録免許税、保証料などの諸費用も2本分発生する点には注意が必要です。

また、ペアローンではどちらも団信に加入できますが、どちらかの契約者に万が一のことがあった場合でも、残された側は自分のローンの返済義務を負い続けなければなりません。収入の柱が一つとなるうえ、住宅ローンの負担も続くとなると家計が圧迫されるかもしれません。なお、どちらか一方の収入が大幅に減ったり仕事を辞めたりした場合は、もう一方が2人分の返済を負担する必要があります。

そして、住宅ローンの返済中に離婚することになった場合は、ローン残債のある物件をどうするか話し合うことになります。どちらか一方が住み続ける場合、ローンの一本化により2人分のローン負担がかかりますし、物件を売却するとなればさまざまな手続きが必要になります。
いざ離婚となった時、ペアローンはトラブルの原因になるケースもあるため注意しましょう。

武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら
編集部おすすめ