10月1日・2日、新潟市産業振興センターで「けんせつフェア北陸2025 in 新潟」が開催された。この展示会は、産・学・官の新技術・新工法を一堂に集め、建設技術の研鑽や情報交流、ひいては地域づくりや建設業における担い手確保に資することを目的とするもの。
会場には多くの企業がブースを構え、最新の製品やソリューションを披露した。

本稿では、日本製鉄の出展を取り上げる。同社は建設ソリューションとして「ProStruct(プロストラクト)」を掲げ、高性能な鋼材と、その性能を引き出す設計・施工技術を組み合わせた提案を行っている。今回の展示で、ProStructの一環として紹介された「NSコネクター」に加え、「二相ステンレス鋼」「チタン」「ノイラックスルーバー」について話を聞いた。

角度対応と工期短縮を両立する「NSコネクター」

鋼矢板の接続部材である「NSコネクター」は、幅広い接続角度に対応可能な溶接レスのコネクターだ。

従来、角度付きのコーナーや線形の変化に対応する際には、鋼矢板の事前加工や溶接が必要であり、施工現場の作業負荷が高く、施工会社の悩みだった。

NSコネクターを用いれば、形状に合わせた加工を事前に行わずに角度を付けられるため、納期の大幅な短縮が見込める。鋼矢板の主流工程である圧入工法・バイブロハンマ工法で施工できる点も実用的で、施工現場の効率化や工期短縮に貢献している。

なお、「NSコネクター」は鋼矢板向け接続部材の総称であり、溶接レスタイプのほかに、おもに仮設用の鋼矢板擁壁を対象とした溶接タイプも揃えている。

水インフラ設備の長寿命化とコスト削減に寄与する「二相ステンレス鋼」

フェライト組織とオーステナイト組織を併せ持つ二相ステンレス鋼は高強度・高耐食を両立し、維持管理の負担を抑えた設計を可能にする。東日本大震災を機に、防潮堤の出入口に設けるゲートなど防災設備での採用が一気に拡大した。

材料面では、SUS821L1は従来型ステンレス鋼に対しニッケル比率の低減が進み、価格面でも従来比で約5%の低減を実現している。
ニッケルは将来の資源枯渇が懸念されており、また、海外依存度が高く、調達安定の観点からも意義がある。

展示ブースでは水門やダム放流設備といった設備に加え、飲食店や工場の排水溝など日常的な設備への適用事例も紹介されていた。従来材より薄肉・軽量化が図られており、脱着および清掃作業の効率化につながる点が評価されている。加えて、耐熱性および耐摩耗性に優れた材料特性を活かし、花火筒等への応用も検討されている。

人口減少を背景に将来的なメンテナンスの担い手不足の深刻化が予想される中、更新頻度を抑えられる材料選択はその解決策として重要性を増している。JIS規格化に加えて設計指針類への展開も進めており、導入は全国に定着しつつある。

「軽い・錆びない」を軸に用途を広げる「チタン」

チタンは、軽量(比重は鉄の約6割、銅のおよそ半分)かつ高い耐食性を備え、建築の長寿命化と意匠性を両立させる建材だ。世界的には航空機や防衛分野で需要が大きい金属だが、建築分野でも屋根や外装パネルで用途が拡大している。

陽極酸化による発色の自在さも特長で、特に中国・台湾・スペインなどの建築物で採用されている。国内では浅草寺の屋根などに採用され、軽量化による耐震性向上と景観維持に寄与している。

「軽い」「錆びない」の二点が大きな強みであり、長期の景観維持やメンテナンス抑制を求められる用途で使われる。

もっとも、全面をチタン化するにはコスト上のハードルがある。
この点について同社は、腐食が進みやすい“要所”のみをピンポイントでチタン化する部分最適の提案を行っている。必要箇所に限定することで、コストと性能のバランスを取りやすくしている。

シャープな外観と省エネを両立する「ノイラックス ルーバー」

外壁などで培われた既存の建材技術を、ルーバーへと応用する取り組みも紹介された。新規開発ではなく既存技術の転用である点が特徴で、意匠性を付加した建材として提案されている。

2020年に販売開始され、富山県警富山南警察署や千葉県警富津警察署、大阪歯科大学などに採用された実績がある。官庁・文教施設、集合住宅のZEB(ゼブ:ネット・ゼロ・エネルギービル)化に貢献できる商材として営業活動を展開中であり、適用の拡大が見込まれている。

ルーバーは表面に高耐久の仕上げが施されており、長期にわたり美観を保つことができる。金属製であるため地震などによる変形もしにくく、割れや欠けの心配が少ない点も安心感につながる。

高強度でありながら軽量であることから現場での作業負荷を軽減でき、現場塗装も不要なため工期短縮に寄与する。こうした特性により、デザイン性と施工性の両面で活用可能な建材として位置付けられている。

総じて、日本製鉄の展示は「材料そのものの性能」と「性能を引き出す利用技術」をセットで提示する構成だった。工期短縮、長寿命化、省メンテナンス化、景観維持といったさまざまな技術は、いずれも現場の課題解決に直結する。


これらを組み合わせて提供するソリューションが「ProStruct」である。「高性能鋼材×高度利用技術」 の掛け合わせによって、設計・施工の課題に総合的に応えるパッケージだ。

現状は日本製鉄が提供する範囲が中心だが、将来的にはグループ各社の技術も含めた横展開を視野に入れている。人員の不足や資材価格の変動といった変わりゆく制約のなかで、施工性・耐久性・コスト・景観の最適点を実現するサービスとして、取り組みはさらに拡張していく見込みだ。
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