「脂肪肝やアルコールの飲みすぎで肝機能が衰えたとしても、ポイントを押さえた生活改善を行えば、スピーディに機能を回復させることができる」こう語るのは、3万人以上の肝臓を"復活"させてきた名医・栗原毅氏。
本記事では、栗原氏の著書『肝臓大復活 100歳まで食・酒を楽しむ「強肝臓」の作り方』(東洋経済新報社)から一部を抜粋してご紹介します。
今回のテーマは『高齢者がいちばん気にするべき血液検査の値は「アルブミン」』。
○高齢者がいちばん気にするべき血液検査の値は「アルブミン」
歳をとると誰しも日々を営む元気や活力にかげりが見えてくるものです。ただ、「いまの自分がどれくらい元気なのか、どれくらい弱ってきたのか」は、自分自身ではなかなか気づかないものですよね。
でも、じつは健康診断の血液検査のデータを見れば、こうした自分の状態を客観的につかむことができるのです。
その指標となるのが「アルブミン値」です。
アルブミンは肝臓でつくられているたんぱく質のひとつ。血液中においてさまざまな物質と結合して、栄養素を体の目的部位へ運搬するのが主な役目です。簡単に言うと、アルブミンによって栄養がちゃんと運ばれていれば配達先の臓器が活気づき、アルブミンによって栄養がスムーズに運ばれなくなると配達先の臓器に元気がなくなってくることになります。だから、血液中にアルブミンが多い人は各臓器がしっかり働いて元気もりもりになりますし、逆に、血液中にアルブミンが少ない人は各臓器の働きが落ちて全体に弱っていってしまうようになる。そのため、血液中のアルブミン値が、その人の元気度の格好のバロメータになるわけです。
たとえば、アルブミンは栄養失調を見分ける際の重要な指標になります。近年、高齢者を中心に食事量が落ちて低栄養になるケースが増えているのですが、そういう方は医療機関で血液検査をしてアルブミン値が低いと「新型栄養失調」と診断されることになるのです。
また、アルブミンは筋肉量にも深く関係していて、アルブミンが十分に足りていると筋肉量が増えて代謝もアップするようになります。一方、アルブミンが少ないのは筋肉量が減っていることの証でもあり、あまりに低いとサルコペニアやフレイルなど身体機能の衰弱が危惧されることになります。
さらに、アルブミンは「骨が丈夫かもろくなっているか」「肌つやがいいか悪いか」「髪が元気か弱々しいか」「免疫力が高いか低いか」など、体のさまざまな部位のコンディションにも影響してきます。まさに、「元気指数」「老化指数」のようなものであり、アルブミン値が高いか低いかによって、その人の体の健康コンディションがいまどういう段階にあるのかが分かるのです。
当然ながら、アルブミンが高いか低いかは人の寿命のバロメータにもなります。実際、東京都健康長寿医療センター研究所が行なった研究調査では、「血液中のアルブミン値が低い人は死亡リスクが高くなる」ということが明らかになっているのです。これはもちろん、「アルブミン値が高い人ほど長生きできる」と言い換えてもいいでしょう。
では、この「元気指数・アルブミン」を引き上げるにはいったいどうしたらいいのでしょうか。
これには「肉や卵などの動物性たんぱく質を食べること」が大切。たんぱく質全般のなかでもとりわけ肉をしっかり食べることをおすすめします。高齢で肉をあまり食べられないという方は、卵でもOKです。
なお、「卵をたくさん食べるとコレステロール値が心配」という人もいますが、これはもう医学的に否定されています。卵がコレステロール値を必要以上に上げることはありませんし、そもそも最近の研究ではコレステロール値は高めのほうが長生きにつながることが明らかになっています。
ちなみに、私のクリニックに、足腰が弱って息子さんの介助なしでは歩けない状態で来院された80代の患者さんがいらっしゃいました。「もう先生の診察を受けるのも最後です」とあきらめたように話されていたのですが、アルブミン値を測ってみると、たしかに3.3とかなりの低値です。そこで私はその方に「アルブミン値を上げるために、1日に5個のゆで卵を食べてください」とアドバイスしました。
すると、どうでしょう。1か月後、その患者さんはひとりで歩いて来院され、顔つやも前よりよく、別人のように明るく話されるようになったのです。血液検査をするとアルブミン値も4.1にまで見事に回復していました(2か月後にはなんと4.7にまで上昇しました)。その方によれば、「1日5個、まじめに卵を食べ始めたところ、徐々に体が動くようになって、元気や活力が戻ってくるのが分かった」とのことです。
ですから、みなさんも肉や卵をしっかり食べてアルブミン値を引き上げるようにしてください。
とにかく、アルブミン値を高く保つことは、高齢になればなるほど生きていくうえで重要な意味を持つようになるのです。それと、肝臓が元気であればアルブミンをつくる力も落ちないわけですから、そのためにも日々肝臓ケアを心がけて、肝臓のパワーを落とさないようにしていきましょう。
○『肝臓大復活 100歳まで食・酒を楽しむ「強肝臓」の作り方』(栗原毅/東洋経済新報社)
「脂肪肝やアルコールの飲みすぎで肝機能が衰えたとしても、ポイントを押さえた生活改善を行えば、スピーディに機能を回復させることができる」こう語るのは、3万人以上の肝臓を“復活”させてきた名医・栗原毅氏。さらに、栗原医師によれば「肝臓は歳をとらない臓器」。毎日正しくケアをすれば、90歳になっても20代の人と同じようなピンピンした肝臓をキープすることも可能です。人の体の健康を支える「縁の下の力持ち」である肝臓を復活させれば、健康寿命を延ばすことができますが、弱った肝臓を放置しているとさまざまな病気に悩まされる老後を迎えることになってしまいます。本書には、肝臓大復活の新常識&かんたんに始められる肝臓対策が盛りだくさん。AST・ALT・γ-GTPの数値が気になる人におススメの一冊。本書で肝臓を大復活させて、生涯現役を貫いていきましょう!