キャンプ場の運営やトレーラーハウス活用事業などを展開するNTT Landscapeは、山梨県南都留郡山中湖村に新しいキャンプ施設「LScamp(エルエスキャンプ)山中湖」を2025年10月1日にグランドオープンした。同施設は、NTTグループならではの知見を生かしたテクノロジーを導入し、便利・快適かつ安心・安全なフィールドを提供する次世代型キャンプ場だ。


10月4日にはメディア向け体験会が開催され、獣害対策ドローンやモバイルオーダー×電動モビリティのデリバリー、見守りスマートウォッチ、マインクラフトを活用した宝探しといった4つの実演が披露された。

「自然×ICT」の設計思想

オープニングでは、NTT Landscape代表取締役社長の木下健二郎氏が、会社の概要と「LScamp山中湖」のコンセプトを語った。

同社は2024年11月に設立。NTTグループが得意とするICTテクノロジーを活用し、キャンプやアウトドアシーンの利便性と魅力を高めることで、人の流れを地域に生み出し、地域経済活性につなげることを目標にしている。事業の柱は、キャンプ場運営、DX推進、トレーラーハウスの活用、アウトドア研修の4つだ。

続いて木下氏は、LScamp山中湖の施設づくりについて説明。無人でチェックイン・チェックアウトが可能となる「スマートチェックイン」(スマートチェックインはR.projectよりサービス提供)や、夜間でも薪などを無人で購入できるレジレス方式の「スマートストア」を導入した。

場内全域でWi-Fi接続を可能とし、SNS投稿や各種サービスを快適に利用できる環境を整備。さらに、Wi-Fi接続時に地域の飲食店・アクティビティ情報を発信し、来場者に周遊を促す仕掛けも取り入れている。

フィールド設計にもこだわりがある。サイトの中央に遊具を配置し、保護者がサイトから子どもの様子を見守れるようにするなど、安全面への配慮がされている。

さらに、顧客満足度に直結する水回りにも配慮し、炊事場・トイレ・シャワーなどにトレーラーハウスを活用して清潔感と機能性を両立。
ファミリー層が安心して、快適に過ごせる環境づくりを実現している。

実演(1)鳥獣害対策ドローン「BB102」

LSCamp山中湖は、関連会社の最新テクノロジーを積極的に取り入れている。最初に紹介されたのは、NTT e-Drone Technologyが開発した鳥獣害対策ドローン「BB102」だ。

機体には2色のレーザー照射装置を搭載。緑色レーザーはシカ・イノシシ・カラスなど野生動物の視覚を刺激し接近を抑止する。赤色レーザーは鳥から見ると虫のように認識され、注意を引きつける効果がある。

両者を組み合わせることで高い抑止力を発揮する仕組みだ。照射距離は約30m、照射角は約70度。さらに動物が慣れてしまうのを防ぐため、照射パターンは万華鏡のように変化する。

当日はフライトが披露された。ホバリング中もレーザー照射機が左右に首振りを行い、広範囲をカバー。飛行範囲を設定すれば、自動航行での運用も可能だという。


LScamp山中湖では、このドローンを利用者がいない時間帯に飛行させ、野生動物による被害を未然に防ぐ運用の導入を予定している。

実演(2)電動モビリティ×モバイルオーダーの場内デリバリー

続いて披露されたのは、山田製作所と連携した四輪電動モビリティ「Lactivo」を活用したデリバリー実証だ。

Lactivoは、四輪による高い安定性に加え、坂道でも後退しない『タイヤロック機能』を備える。さらに座席下に荷物カゴを搭載できるため、薪や飲料など需要の多い物資を坂道などの多いキャンプ場でも安全に運搬できるのが特徴となっている。

今回の実証では、このLactivoをモバイルオーダーと組み合わせて運用。利用者はスマートフォンのメニュー表から商品を注文する。サイト番号を指定して送信すると、管理棟に通知が入り、スタッフがLactivoに注文された商品を積載して配達する仕組みだ。

デモンストレーションでは「富士山サイダー」と「薪」を想定し走行。砂利道でも安定した発進・停止を確認でき、その実用性の高さが印象的だった。

実演(3)子ども用スマートウォッチによる見守り

ファミリーキャンプで特に関心の高い“迷子・安全確保”に向け、NTTドコモのウォッチ型キッズケータイと「イマドコサーチ」のサービス組み合わせた見守りサービスが紹介された。

端末は3分ごとに場所の測位を行い行動軌跡を可視化。管理端末からはリアルタイム検索で現在地を即時取得できる仕組みだ。
運用イメージとしては、キャンプ場がウォッチを貸し出し、万一の際はスタッフが位置情報を確認して保護者と連携する。

さらに、端末側面にはSOSボタンが搭載されている。長押しすると管理端末へ自動発信し、応答されるまで呼出しが継続される仕様となっている。

通話機能も備えており、緊急時には子供とスタッフ・保護者が直接会話できるため、状況をすぐに把握できるのも安心材料だ。

担当者は「このような機能を活用して、安心安全なキャンプ場を提供することで、子どもは自由に遊び、大人は気を張り詰めずに自然を楽しんでもらえる」とまとめた。

実演(4)マインクラフトで“リアル×バーチャル”宝探し

さらに、子どもの教育や体験価値を高める取り組みとして、人気ゲーム「マインクラフト」を活用した宝探しイベントを実施している。

ゲーム内にLScamp山中湖のフィールドを忠実に再現。参加者はタブレットでバーチャルのキャンプ場を探索、そこで得たヒントをもとに実際のキャンプ場を駆け回ってリアルな探索を行う。

イベントは家族単位ではなくチームを組んで挑戦する形式。初対面の家族同士でも、ゲームを媒介に短時間で打ち解ける姿が見られ、終了後には保護者同士が連絡先を交換して交流が続く事例もあるという。単なるアクティビティにとどまらず、コミュニティ形成や子どもの成長を意識した内容となっている。

「普段あまり外に出る機会が少ない子どもでも、ゲームをきっかけに楽しく自然を体験してほしい」と担当者が語るように、新しい形での学びの提供の工夫が凝らされていた。
イベントの所要時間は1時間から1時間半程度で、1日10組ほどを想定している。スタッフと子どもが笑顔で一緒に楽しむ姿が印象的だった。

今回の体験会で感じたのは、LScamp山中湖は自然の魅力をそのままに、テクノロジーを通して快適さと安心を加えていることだ。

獣害や広い敷地での移動、子どもの安全といったファミリーキャンプならではの課題にNTTグループの技術を掛け合わせることで、安心して楽しめるキャンプ場のかたちを提示していた。
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