第56期新人王戦(主催:しんぶん赤旗)は、服部慎一郎七段と斎藤明日斗六段の間で争われる決勝三番勝負の第1局が10月6日(月)に関西将棋会館で行われました。対局の結果、相掛かりのねじり合いから抜け出した服部七段が78手で勝利。
自身3度目となる新人王獲得まであと1勝と迫りました。
○注目の実力者対決
新人王戦では2022年と2024年の2回優勝経験がある服部七段。今年が最後となる参戦で、古賀悠聖六段ら強豪を破っての決勝進出です。対する斎藤六段は藤本渚六段らに勝っての登場で、自身初となる棋戦優勝に挑みます。振り駒が行われた本局は先手の斎藤六段が相掛かりを採用。対して服部七段は相手の得意であるひねり飛車を警戒しながら駒組みを進めます。
先に動いたのは斎藤六段。いきなり歩を突き捨てたのは持ち駒の角を生かした鋭い攻め筋で、まずは先手番らしく主導権を握ることに成功しました。とはいえ形勢はまだまだ互角で、むしろ実戦は後手からの力強い押し返しに苦労することになります。定跡を外れた難解な中盤戦、3時間と限られた持ち時間の中で両者決断よく指し手を進めていきます。
○服部七段の反撃決まる
角を成り込む戦果を挙げた斎藤六段は今度は飛車を切り飛ばして攻撃続行。手番を握って好調に思われましたが、局後この構想を「やりすぎだった」と後悔することに。
とはいえ飛車取りをかけられた局面では他に代わる手も難しく、ここに至るまでに決め手を与えず丁寧に受け続けた服部七段の胆力に軍配が上がった格好です。先手の攻めを凌いだ服部七段の待望の反撃が始まりました。
手番を得た服部七段は3筋に据えた角を起点に先手玉攻略に乗り出します。この直後、この角を犠牲にと金を作ったのが「終盤は駒の損得より速度」の格言通りの決め手となりました。終局時刻は15時38分、最後は自玉の詰みを認めた斎藤六段が投了。丁寧な受けで攻め急ぎを誘いつつ、リードしてからは一瞬の反撃で寄せ切った服部七段の快勝譜となりました。
敗れた斎藤六段は「中盤以降がまずかった、もうすこし良い粘りがあったか」と悔しさをにじませました。注目の第2局は10月21日(火)に東京・将棋会館で行われます。
水留啓(将棋情報局)
編集部おすすめ