米Microsoftは10月16日(米国時間)、Windows 11の今後のアップデート方針を発表した。「Making every Windows 11 PC an AI PC(すべてのWindows 11 PCをAI PCに)」というブログ記事を公開。
AI PC化の最初のステップは、キーボードとマウスに続く「第3の入力」としての音声である。AIは、ユーザーがより多くの文脈や具体的な指示を与えるほど、的確な応答を返す。しかしそれをキーボードで入力し調整するのは手間と時間がかかる。
音声なら「Hey Copilot」と呼びかけるだけですぐに対話を開始でき、キーボード入力よりも直感的にやり取りできる。Microsoftによれば、音声入力時の方がテキスト入力時よりもCopilotの利用率が約2倍高いという。
この「Hey Copilot」というウェイクワードでCopilotとの対話を開始し、「さよなら(Goodbye)」で終了できる「Copilot Voice」は、現在Windows 11 PCで一般提供中で、ユーザーの許可によるオプトイン方式で利用できる。
この音声の活用を皮切りに、次の3段階を通じてAIとの連携を深化させる方針である。
テキストや音声でAIとの対話を促進し、AIの理解を高める。
ユーザーが見ているものをAIが理解し、ガイド付きサポートを提供する。
ユーザーに代わってAIがエージェント的に行動する。
次の段階に位置づけられるのが「Copilot Vision」である。CopilotがPCの画面やカメラ映像を解析し、文脈を理解して最適な支援を行う機能だ。 Microsoftは昨年末からCopilot Visionをプレビューし、段階的に提供を拡大しており、今後はCopilot提供地域のすべてでWindows版が順次利用可能になる。
Copilot Visionでは次のような活用が想定されている。
デスクトップやアプリケーションを共有すると、Copilot がコンテンツを分析し、洞察の提供、質問への回答、コーチングなどを行う。
特定のタスクについてCopilotに「やり方を見せて」と頼むと、アプリ内でクリックする場所をハイライトし、操作方法を表示する。
Word、Excel、PowerPointファイルを共有すると、画面外の情報も含めた分析が可能になる。
例えば、新しいアプリケーションの使い方に戸惑った際に「このボタンはどう使うの?」と尋ねれば、Copilot Visionが画面を分析し、ハイライト付きで操作手順を案内する。文書の校正支援やゲーム中のヒント提示、写真編集の照明補正など、多様な場面で活用される。
○Copilot Actionsがローカルファイルにも対応
さらに、3番目のステップを見据えたAIおよびエージェント機能の実験的な提供を、Windows InsiderプログラムやCopilot Labsで進める。
まず、タスクバーで、Copilotと検索を統合した新しい「Ask Copilot」を提供する。Copilot VisionとCopilot Voiceにもワンクリックでアクセス可能。
この新たなタスクバー体験はWindows APIを通じて、アプリ、ファイル、設定などを返すが、Copilotがユーザーのコンテンツに直接アクセスすることはない。
さらに、今年5月に発表されたAIによる自動実行機能「Copilot Actions」が、従来のWeb上でのアクションに加え、Windowsのローカル ファイルにも対応する。
休暇中に撮影した大量の写真の整理、PDF書類からの情報の抽出など、タスクを言葉で説明すると、Copilot ActionsがPC上の状況に基づいて、デスクトップ アプリケーションや Web アプリケーションと対話し、タスクの実行に取り組む。Copilot Actionsの進行状況を監視し、必要に応じてユーザーが停止・介入することが可能。Copilot Actionsの作業中に、ユーザーは他の作業を進められ、単純作業から解放されて、より生産的なことに集中できるようになる。
Copilot Actionsのローカルファイル対応は、Copilot LabsのWindows Insiderを対象に、近日プレビュー提供が始まる予定である。
また、10月からWindows Insiderで提供されている「Copilot connectors」を利用すれば、 OneDriveやOutlookに加えて、Googleドライブ、Gmail、Googleカレンダーなどの外部サービスとも連携し、個人データを横断的に検索・利用できるようになる。
○「会話ができるコンピュータ」との新しい関係
Microsoftは、Windows 10サポート終了の時期に合わせて「meet the computer you can talk to(会話ができるコンピュータと話そう)」というマーケティング動画を公開した。
「Making every Windows 11 PC an AI PC」の中で、ユサフ・メディ氏(エグゼクティブバイスプレジデント)は、「(Windows 10から11へ)移行するすべての人に、単なるツールではなく真のパートナーとなるPCを持つことの意味を体験していただきたいと考えています。そして、これらの体験はすべてのWindows 11 PCで利用可能です」と述べている。