ビットコインの価値はいったいどこまで上がるのか、GAFAMが支配するビジネスとWeb3の決定的な違いとは? この記事では、これからの資産形成やビジネスに新たな視点を与える一冊『デジタル資産とWeb3』(小田玄紀/アスコム)から一部を抜粋して紹介します。

今回のテーマは『ゲームで稼げるPlay to Earnとは/ゲームが社会課題を解決する』

○ゲームで稼げるPlay to Earnとは

近年、ゲームがお金を稼ぐ手段として広がっています。
よく知られているのは、有名なゲームの大会でプロゲーマーとして賞金を稼ぐ「eスポーツ」。それからYouTubeなどでゲームの実況動画を配信して広告費やスーパーチャット(いわゆる「投げ銭」)を収益にする「ゲーム配信」ではないでしょうか。

私もマリオカートで子どもと遊んだりすることがありますが、あくまでもゲームは遊びでしかなかったので、いまのようにプレイヤーも巻き込んでビジネスの領域が広がっているのを見ると、隔世の感があります。ちなみに私はマリオカートが子どもよりもはるかに下手なので、とてもゲームの競技や配信では稼げないでしょう。

現状では、eスポーツ選手や配信者のように、競技スキルや配信時のトーク力がなければゲームで稼ぐことはできません。しかしWeb3の世界では、ゲームをプレイすること自体を価値に変えられる、新しい仕組みのゲームが登場しています。それがGameFi(ゲーミファイ)です。これはオンラインゲームにDeFiの要素を掛け合わせたブロックチェーンゲームです。

特に注目されているのが、ゲームをプレイすることで稼ぐPlaytoEarnタイプのGameFiです。PlaytoEarnのゲームでは、プレイ報酬として受け取った暗号資産を売却して利益を得られます。
○ゲームが社会課題を解決する

代表的なGameFiが、ベトナムのSkyMavis社が開発した「AxieInfinity」です。

2018年にリリースされたタイトルですが、2021年になって売上高が急増。
月間の売上(=粗利)がそれまでの100倍以上になり、世界中から注目を集めました。いったい何があったのでしょうか?

AxieInfinityではプレイするとSLPというトークンがもらえます。ただし、プレイするにはゲーム用のキャラクターNFTを3体購入する必要があります。当時は3体分のキャラクターNFT購入には100万円程度の費用がかかり、当然ながら、その資金が調達できない人たちもいました。

そこで運営会社は、スマートコントラクトを使った「スカラー制度」をつくりました。このスカラー制度が売上急増のきっかけです。

まず投資家(マネージャーと呼びます)がゲーム用のキャラクターNFTを用意します。これを途上国の人たち(スカラーと呼びます)に貸し出します。

貸し出しにあたって、スカラーは勝手にNFTを第三者に譲渡することができないこと、マネージャーはいつでもNFTを返却してもらう権利があることなどをスマートコントラクトでブロックチェーンに記録しておきます。

こうしておくことで、一回も会ったことがない外国の相手に対しても、NFTを預けることが可能になるのです。

その結果、ちょうど新型コロナで仕事がなくなったフィリピンなど途上国の人たちが、AxieInfinityのゲームを通じて毎月数万円の利益を上げることが可能になりました。

さらに、スカラーを多数擁するゲーミングギルドという会社が次々に設立され、AxieInfinityのプレイヤーが増え、SLPの取引が急増したというわけです。


このケースでは、結果的にゲームを介し貧困層の生産活動を促すことに成功しました。Web3のサービスが高い収益性を生み出すだけでなく、従来にはなかった形で社会課題を解決できる可能性を示したといえるでしょう。

また、従来のオンラインゲームは基本的に、ゲームを開発して運営する会社が収益を得ます。それに対してAxieInfinityは、ゲームのプレイヤーや彼らにNFTを貸し出す投資家にも収益が配分されます。収益の分散化が多くの参加者を集め、大きな経済圏(エコシステム)を生み出したのです。

なお、既存のオンラインゲームには一定の課題(ミッション)をクリアすることでポイントが得られ、それを現金と交換できる仕組みを持つものがあります。これも一種のPlaytoEarnといえ、似ているのは確かです。ただ、ポイントは交換レートが一定なのに対し、AxieInfinityのトークン(SLP)は市場で値上がりする可能性があります。

ブロックチェーン(スマートコントラクト)を使うことでスカラー制度といった新し仕組みもつくれます。

そうした工夫の余地こそGameFiの大きな魅力だと思います。

○『デジタル資産とWeb3』(小田玄紀/アスコム)

ビットコインの価値はいったいどこまで上がるのか、GAFAMが支配するビジネスとWeb3の決定的な違いとは?これからの資産形成やビジネスに新たな視点を与えるビジネスパーソン必読の一冊!『怪しい? 危ない? よくわからない? みんな「インターネットに乗り遅れた人たち」が言ってたことです。同じ失敗をしないために、本書を読みましょう』(山口周さん推薦)
編集部おすすめ