ダークパターン対策協会は10月15日、ダークパターン被害の軽減と誠実なWebデザインの普及を目的とした「NDD(Non-Deceptive Design)認定制度」の正式運用を開始しました。事業者が「自己審査チェックシート」に従って自己審査を行った後、認定審査機関に審査を依頼することができます。
○ダークパターンの累計被害総額は年間1兆円以上
同日開催された記者発表会でダークパターン対策協会代表理事の小川晋平氏が語ったところによれば、ダークパターン(消費者を意図的に誤認、誘導させる不適切なデザイン)による1人あたり年間被害額は推計でおよそ33,000円、累計被害総額は年間1兆円以上に達するそうです。
「2023年度の経済産業省の統計ではECサイトの市場規模が25兆円で、毎年拡大しています。およそECの取引の4%ほどがダークパターンの被害にあたると推計され、もはやインターネットは安心して安全に使える状況ではありません。誠実なWebサイトがダークパターンを駆使しているWebサイトに負ける事態も起きており、正直者が馬鹿を見る状況に陥っています」(小川氏)
小川氏によると、アメリカやヨーロッパではダークパターンを規制する包括的な法律があるのですが、日本にはそういった法律が存在しないとのこと。日本においては、特定商取引法や景品表示法は消費者庁、電気通信事業法は総務省、個人情報保護法は個人情報保護委員会が管轄するなど、ダークパターンに関連する法律が各省庁に分断されているため、「グレーゾーン」がかなりの割合で発生しているといいます。
「例えば、ECサイトで商品を購入するとき、規約を読まずに同意ボタンを押してしまう人が多いのですが、規約をスクロールしていくと“半年間定期購入をすることが9割引きの条件”などと記載されていることがあります。しかし、条件の記載は行っているため、法律には触れない。こうしたケースがグレーゾーンとして存在しています。この問題を解決するため、民間主導の取り組みとしてNDD認定制度を策定しました。誠実なWebサイトを審査・認定して、改ざんしにくい認定マークを付与することで、消費者被害を減らすことを目的としています」(小川氏)
○NDD認定制度の審査は3段階
NDD認定制度は事業者が自ら自己審査を行ったのち、認定審査機関による審査を経て、ダークパターン対策協会が最終審査を行います。すべての審査に合格すると、認定マークが付与されます。
自己審査チェックシートは7月15日より無料で一般公開されており、「審査対象編」と「推奨編」が用意されています。
認定審査機関については、2025年4月~6月に全国の適格消費者団体向けに認定審査員の募集を行い、試験に合格した認定審査員を2名以上要する団体が認定審査機関として登録しています。現在は3団体が登録済みで、1団体が手続き中とのこと。11月からは適格消費者団体に加えて、全国の地方銀行や一般企業に募集を広げていく予定です。
ダークパターン対策協会 事務局長の石村卓也氏は「地方銀行に審査機関として参画いただくことで、取引先である全国の中小企業が知らないうちにダークパターンを使ってしまっているという部分が是正されることが期待できます」と説明していました。
最終審査は、ダークパターン対策協会の企業審査局により行われます。審査の際に是正が必要な箇所については是正の依頼を行うこともあるそうです。審査に合格すると、認定マークの実装に進みます。登録の有効期限は1年です。
認定マークは、審査対象範囲ごとに、その認定範囲を示すアイコンとの組み合わせでWebサイト上の該当箇所に掲載します。NDD認定番号をクリックすると、問い合わせ窓口や協会が提供する詳細情報を閲覧できます。Webサイトのデザイン上、イラストを掲載しにくい場合には、テキストリンクでの掲載も可能となっています。
○学生向け啓発動画公開でITリテラシーを高める
NDD認定制度の運用開始に先立ち、ダークパターン対策協会では7月15日から「ダークパターン・ホットライン」を開設しており、3カ月間で60件以上の情報が寄せられています。通報の傾向としては、解約方法が書かれていないなど「解約しづらい設計」が約30%、条件がわかりにくい/選んでいない商品が追加されているなど「購入前最終確認画面での誘導」が約20%の割合になっているそうです。
このダークパターン・ホットラインについて小川氏は、「通報いただいている内容としては、実際のURLからスクリーンショットの画面、どの部分で嫌な思いをしたのかなど、生の声として意義深いものが寄せられています。我々としては非常に価値がある情報をいただいていると考えています。ぜひ消費者の方には通報いただきたい」と呼びかけていました。第1回レポートは11月中旬に公開される予定です。
また、協会ではダークパターンの理解促進と被害防止を目的として、学生向け啓発動画の一般公開も開始しました。
今回、学生向けの啓発動画を制作することになったのは、ダークパターンはITリテラシーが高くない高齢者や子どもたちが被害に遭いやすい傾向があるためです。
本動画について小川氏は「文科省とのやり取りもあり、まずは子どものリテラシーを上げていくことが長い目で見ると国民全体のリテラシーの底上げに繋がると考えた」と話します。実際に起こったトラブル事例を元に、小学生から高校生までのそれぞれの年代向けに動画を制作し、消費者庁および文部科学省にも内容の確認を受けたうえで公開しているとのことです。
石村氏はこの年代について「日常的にネットに触れてはいますが、情報を正しく見極める力といったところはまだ発展途上」であるとし、「学校教育の現場で先生方や地域の教育者の方々、それからPTAなどの保護者の皆様にも動画を活用していただき、子供たちがしっかり立ち止まって考える習慣を自然に身につけられるようにしてほしい」と話しました。
なお、今回の学生向け動画に続くものとして、一般向けの動画も現在制作中とのことです。
○対策ガイドラインのバージョン2.0策定、AIツール開発などを予定
ダークパターン対策協会は、2026年1月以降にダークパターン対策ガイドラインのバージョン2.0に向けた分科会を開始していく予定です。また、事業者が消費者を自社に有利にするために心理的に誘導している度合をスコアリングする「ダークパターンスコアリングAIツール」を開発中であることも発表されました。
石村氏は「ダークパターン対策協会はダークパターンによる消費者被害を軽減するために、このNDD認定制度を通じて、消費者が安心できるWebサイトを判別できる目安を提供し、日本企業のビジネスに対する信頼構築に努めていきたいと考えています。ぜひご興味のある企業様には、ダークパターン対策協会の正会員にご応募いただきたいと考えております」と話していました。
著者 : 鈴木朋子 すずきともこ ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザー。スマホやSNSなど、身近なITサービス全般に関する記事を執筆。なかでもSNSに関しては、コンシューマーからビジネスまで広く取材を行い、最新トレンドを知るジャーナリストとして定評がある。また、安全なIT活用をサポートするスマホ安全アドバイザーとして記事執筆や講演も行う。著書は『親が知らない子どものスマホ』(日経BP)、『親子で学ぶ スマホとネットを安心に使う本』(技術評論社)、『インターネットサバイバル 全3巻』(日本図書センター)など。 この著者の記事一覧はこちら











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