26回目を迎えたCEATEC。授業の一環で来場する学生の姿が目立った
長年CEATECを取材している筆者が今年のCEATEC 2025で「アレ?」と思ったのは、制服姿で会場を巡る学生の姿が目立ったこと。
就職活動の一環としてCEATECに来場する大学生、専門学校、高専生や高校生というのは理解できますし、最新技術を小学生以下の子どもと親が体験するのは過去にも目にしていたのですが、2025年は中学生(しかも会場のある千葉県の学校ではない!)の姿も多く目にしました。
少しお話を伺ってみると「授業の一環として、神奈川県から電車で来場した」とのこと。そういう課外授業があるのかと驚きました(学校をさぼって展示会に行っていた世代としては時代の変化を感じます……)。
運営事務局に質問したところ、特別なアピールはしていないものの「学校を対象とした団体見学」を歓迎しており「業界団体が主催する展示会ということで、次世代応援・育成にも取り組んでおります」との回答でした。
昨年(2024年)実績としては約8,000名が学生として入場。CEATEC 2024の総入場者約11万人で割ると7%ほどが学生ということになります。
ちなみに、小学生も参加できる大型展示会として、「SDGs Week EXPO」の一環として実施されている日本経済新聞社主催の「エコプロ」があります。
エコやSDGsを学ぶ校外学習の機会と位置付けられており、2024年は1万人近い生徒・児童の来場があったほか、無料送迎バスも用意されました(注:2025年の会期は2025年12月10日~12日ですが、申し込みはすでに締め切られています)。
エコプロは小学生が来場する前提の展示・説明を行っていますが、CEATEC 2025は特に事前説明などもなかったので、より驚いた次第です。
新たなデータセンターをアピールするオプテージ
それでは注目ブースを巡っていきましょう。まずはオプテージブース。ここ数か月のオプテージは企業向けの展示会で、2026年1月オープン予定のOC1と、2026年度オープン予定のコンテナ型という2つのデータセンターのプロモーションに注力しており、CEATECでも同様の展示をしていました。
利用者のサーバーを設置するコロケーションデータセンターは、データ遅延と、顧客が何かあったときに駆け付けやすいという理由で、需要の多い東京/大阪の近くに作るのが定番です。
かつての東京データセンターは大手町に設置されることが多かったのですが、大手町にDCを開設するような場所はもうありません(筆者が知る限りでは2018年に開設したブロードバンドタワー新大手町サイトが最後だと思います)。
関東圏では、地盤が強固なため千葉県・印西市に作られることが多くなっています。同様に大阪にも土地がなく、最近は大阪と京都の間にある大阪府・高槻市近辺にコロケーションのデータセンターが作られることも多くなりました。
その中でOC1は大阪市内という好立地が魅力です。オプテージは関西電力系の会社でネットワークにも強く、各社のネットワーク接続拠点の堂島エリアや心斎橋エリアから3km圏内と遅延が少なく、他社との接続にも有利。
さらにオプテージ自身のオール光ネットワークで、首都圏の主要データセンターを結ぶ国内DCI(データセンター相互接続)サービスの提供や、2028年度には東京-シンガポール間の国際海底ケーブルを利用したグローバルDCIサービスを開始するという発表もされました。
2025年度に福井県美浜町でオープンする予定の、生成AI向けコンテナデータセンターも紹介されていました。
福井県に設置するため遅延の点ではやや不利ですが、AI学習を福井で行い、即応性が求められる推論はOC1で処理するという分業を想定しています。生成AI学習用として占有型のGPU提供を行うため、機材にトラブルがあっても顧客が駆け付ける必要はなく、基本はサーバーを丸ごと貸し出します。
当然ながらOC1と福井県のデータセンター間は、オプテージの自社光ファイバーで接続されるので、インターネット上にデータが流れる問題もない、というわけです。
キャリアフリーとなり他社をメイン回線に使っていても問題はなく、データセンターとネットワークを両方行っている会社は少ないため、ワンストップ対応が可能とアピールしていました。
福井県美浜町は関西電力の美浜原子力発電所がある場所で、原発が設置できるだけの頑丈な地盤があるだけでなく、原発のCO2フリー電力を地産地消で安価に利用できる≒利用料もリーズナブルというのが魅力です(メガクラウドの半額程度を予定)。
コンテナ型データセンターは、土地の利用効率がビル型よりも悪い反面、建設費が安価になるため、用地代が安い地方では有利。CEATECでも自社敷地内に学習用GPUを設置するニーズに対応すべく、コンテナサーバーを紹介している会社も複数見受けられました。
「議事録文化の日本で好調」、PLAUDはAI質問機能を無料プランにも開放
AI文字起こし要約デバイスとして10月9日に新製品「Plaud Note Pro」を発表したPLAUDは、独立ブースで新製品をアピールしていました。
現在、法人向けソフトを新たに作り直しているとのことですが、企業で求められるセキュリティも確保しているので、現在のソフトでも法人利用可能ですし、発表会で代理店の方が「法人ビジネスでも引き合いは好調。他社と比較検討してPLAUDを選んでもらっている」とコメントしていました。
新製品のPlaud Note Proは録音音質の改善のため、従来2つだったマイクを4つに増やし、会議室での録音範囲を3mから5mに拡大しています。さらに通常の録音と携帯電話の録音モード変更を自動化し、OLEDディスプレイでのステータス表示に改善しました。一方で通常版「Plaud Note」からの価格上昇は最小限に抑えられています(27,500円→30,800円)。
ちなみにスマートホンの裏に張り付けるカード型のNoteおよびNote Proのほか、小型ピンマイクのような「Plaud Note Pin」の計3製品が現在発売中です。
ソフトウェアは本体から音声を読み出してクラウドに保存。書き起こしおよび要約はクラウドで行うため比較的短時間で終了するほか、要約に使用するLLM(大規模言語モデル)も現在GPT-5、Gemini 2.5Pro、Claude 4、o3、o3-miniとメジャーなLLMの最新モデルを使えるのが魅力です。
さらにテンプレート、Ask Plaudといった機能もあります。テンプレートはあらかじめ定められたフォーマットで要約をまとめてくれる機能で、ユーザーが独自のテンプレートを作成して業務や目的に合わせられるほか、利用者フォーラムに投稿されたテンプレートの一部もアプリから利用可能となっています。Ask Plaudは問いかけに対して
録音データを基に回答を導く生成AIと思えばよいでしょう。
これら3つの機能は、以前だと有償のサブスクリプションユーザーのみに開放されていましたが、Plaud Note Proの発売に合わせて、機器購入ユーザーが使える無料プラン(月300分までの文字起こしと要約が可能)にも開放されました。
ちなみに有償サブスクリプションは月1,200分と無制限の2段階で、単発の文字起こし追加オプションも用意されています。Note Proの発売に合わせてUI変更や機能追加されたスマホアプリ(Ver.3)も登場しました。
Plaudにとって日本市場は米国に次ぐ重要市場で、その背景には「会議の議事録作成」という日本市場特有の課題が根底にあるといいます。
むろん、無料の文字起こしや要約ソフトは他にもありますが、会議情報はセンシティブな扱いを要求されるものも多く、この辺は有償製品の方が有利でしょうし、ワンストップで録音から要約まで行えるのは便利です。
Plaudは日本国内でのデータ保存には対応していませんが、SOC2やHIPAA、GDPRに準拠、ISO27001取得(今年度中予定)と安全面の配慮もアピールしています。
高級キーボード最新モデル「REALFORCE R4」をいち早く体感
東プレはCEATEC前日に発表し、10月15日から発売を開始した「REALFORCE R4」をいち早く展示し、実際に触ることができました。
REALFORCEシリーズは、業務用キーボードを販売している東プレの独自技術「静電容量無接点方式」を使用したキーボード。高い質感と長寿命が特徴で、筆者も仕事用パソコンに初代REALFORCEを使っています。
筆者は昔パソコンを組んだ際、それまで使っていたPS/2接続キーボードが使えなくなったので「適当なUSBキーボード」を買ったらあまりに質感が悪く、即座にREALFORCEを買い直した経験があります。いまでも全然壊れる気配がありません。R4では1億ストローク以上に対応するというスペック表記がありますが「この数値にはかなり余裕がある」そうです。
R4はBluetooth 5.0ワイヤレスとUSBの両接続に対応。静電容量無接点方式の近接センサーが用意されており、手を近づけるだけで再接続するので、Bluetooth接続で放置した際のスリープ復帰を意識することがなくなりました。
また無線による出っ張りが気にならない新デザインの採用や、対応する乾電池を変更(単3形×2本から単4形×3本に)。単4形対応になって電池持ちが気になるところですが、約3カ月以上と、前世代機「R3」のBluetoothモデルと変わらぬ持ちを達成しました。アクチュエーションポイント(キーオンになる押し込みの深さ)はキーごとに22段階で設定できます。
Fn+WASDのキー動作でマウスカーソルを動かす機能も加わりました。移動速度は現状固定。個人的にはキーの押し込みで速度を変えて欲しいと思います(要望が多ければ対応してくれそうな感触でした)。
今回のR4はコンパクトにしたこともあり、全モデルがBluetooth/USBのハイブリッド接続となり、色(白/黒)、サイズ(フルサイズ/テンキーレス)、キーレイアウト(日本語配列/英語配列)、キー荷重(30g/45g/偏荷重)、かな刻印(あり/なし)の違いで、全20モデルが発売されます。
ゴルフで活躍! 富士通はマーカー不要の骨格特定技術をデモ展示
富士通は、通常のカメラで撮影するだけで人間の骨格状態を推定する技術「Human Motion Analytics」を持っています。
2017年から国際体操連盟と共同でJudging Support System(JSS)を開発しており、2023年にはベルギーの世界体操競技選手権大会において、体操競技の全10種目でJSSが利用され演技価値点(Dスコア)の採点サポートが行われるまでに発達しています。
CEATEC 2025ではゴルフを題材に、他社の技術と組み合わせ、AIキャディがプレイヤーにアドバイスするデモの展示・体験を行っていました。
アマチュアがゴルフのスコアを向上させるためにはプロのコーチングが欠かせません。レーダー式チャートを元にトレーナーが指導するAIGIAの技術を使い、レーダーチャートの内容をAIがわかりやすく言語化してコーチングする「モンスターバンカーチャレンジ」と、シミュレーションゴルフのシステムを使ったアプローチチャレンジにPRGRのシステムと連動させることで、体の使い方とクラブヘッドの挙動の両方のデータを分析し、AIキャディとしてアドバイスします。
デモエリアでは「東急セブンハンドレッドクラブ・西コース18番ホール」グリーン手前の1.6mの垂直バンカーを模した環境を用意。トラックで現地の砂数トンを運んできたという力作です。
実際に試すこともでき、初日と2日目は午前中の段階で予約満了でした。なぜゴルフを題材に選んだのか聞いてみたところ「来場する経営層が興味を持つと判断した」と60代以上の重役のココロを掴む狙いだったようで、その効果は十分にあったようです。
ちょっと気になったアイテムいろいろ
デルタ電子というと産業用機器のイメージが強いのですが、USB出力のACアダプタや壁埋め込み型のウォールジャックを展示していました。USBウォールジャックは、この手の製品としてはハイパワー。2口サイズでPD 60Wまでの製品を展示しており、PD 100Wも開発中とのこと。
家庭内のコンセント工事には資格(電気工事士)が必要なので、その辺で売られるものではありませんが、ホームセンターなどではパナソニック エレクトリックワークス(元「松下電工」と言えばピンと来る人も多いハズ)のパーツが広く売られています。一般では2口だと18Wまでの製品しかないので、気になった製品でした。
太陽誘電はJCコートという撥水・親水コート材料をほぼ毎回のように展示しています。今年は使える材料範囲が広がったことに加え、PFAS(有機フッ素化合物)フリーになっている点が特徴ですが、やはりフッ素の効果は偉大なようで、以前の製品よりは水滴の転がりがにぶかったような気も。
CEATEC主催のJEITAは、2025年11月19~21日に開催されるメディア総合イベント「Inter BEE」も開催します。
ということで事前告知を兼ね、会場の様子を配信するYouTuberやクリエイター向けの「Streamer Lounge」が用意されていました。
残念なことにこの場所を使って撮影している人は見当たらず……。短時間のショート利用で筆者が気付かなかったのかもしれませんが、人気スポットにはなっていなかったのはちょっと残念。
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