自民党と維新の会は20日、政策協議を取りまとめ、連立政権を樹立させることで合意。高市氏が初の女性首相に選出されることが確実な情勢となった。
松本氏は、現時点では非現実的とも思える国民民主党・玉木氏の政策をあえて分析することで、党派を超えた「共通の成長戦略」が浮かび上がり、そこにこそ投資のチャンスが眠っていると言う。
今回は、松本氏の解説に基づき、政局のノイズに惑わされずに「鉄板ポートフォリオ」を組むための思考法を解き明かしていく。
○政権交代リスクを無力化する「鉄板ポートフォリオ」とは
政治の「もしも」を考えても仕方ない、結局はどちらか一方に賭けるしかないのか...。そう考える投資家もいるだろう。しかし、松本氏は「いかなる政治シナリオにも対応できる、明確な投資戦略が存在します」と断言する。
松本氏が「本命の戦略」として挙げるのが、まさにこの「政策の共通項」に着目したポートフォリオだ。
「両氏の政策で明確に重なっているのが、『半導体』と『防衛』の2大セクターです。これらは経済安全保障の中核で、どちらの政権になっても国家戦略として推進されることは間違いありません。政権交代リスクを過度に恐れる必要がなく、安心して長期保有できるテーマと言えるでしょう」(松本氏)
具体的には、半導体分野でアドバンテスト(6857)や東京エレクトロン(8035)、防衛分野では三菱重工業(7011)やIHI(7013)などがその代表格となる。
「事実、これらの銘柄は高市氏の総裁就任後も高値圏で安定しており、市場がすでに『政策の継続性』を織り込んでいる証拠と言えます。政治の動向に一喜一憂せず、どっしりと構えるなら、この2大セクターをポートフォリオの中核に据えるべきでしょう」(松本氏)
○高市政権で加速する成長投資シナリオ
高市政権の誕生が濃厚と見られるなか、投資家の関心は次第に、「この先どんな分野にチャンスが広がるのか」に向かいつつある。
すでに市場では、半導体や防衛関連といった"中核セクター"が注目を集めているが、果たして次の一手はどこにあるのだろうか。
「高市政権が続く場合、現在の『積極財政・成長投資』の流れはさらに加速するでしょう。共通項である半導体・防衛に加えて、インフラ・建設関連や、減税・所得支援による恩恵が見込める内需・消費関連にも資金が向かうと考えられます」(松本氏)
中でも、老朽化が進むインフラの更新や、国土強靭化計画の前倒しといったテーマが、より現実味を帯びてくるという。
「橋梁やトンネルの補修、公共施設の耐震化など、具体的なプロジェクトが動き出せば、大手ゼネコンだけでなく、建設機械やセメント、専門工事を手がける企業にもビジネスチャンスが広がります。補正予算の規模次第では、息の長い投資テーマになる可能性もあります」(松本氏)
一方で、内需・消費関連も見逃せない。政府による所得減税や給付金などの家計支援策は、個人の可処分所得を直接的に押し上げ、消費マインドを刺激する。
「長らく抑えられてきた消費意欲が回復し、百貨店や旅行・レジャー、外食産業など、幅広い分野での需要拡大が期待できます。いわば"リベンジ消費"の本格化です」(松本氏)
○もし玉木政権なら...中小企業DX・地方創生に注目集まる
高市政権の誕生が濃厚とはいえ、「もし玉木政権が誕生したら」──そんな"もしも"を考えてみたくなる投資家もいるだろう。
実際に、異なる政策が掲げられれば、見逃せない投資チャンスが生まれる可能性もある。これについて、松本氏の見解はこうだ。
「彼の政策でとりわけ目玉となるのは『暗号資産減税』です。これが実現すれば、SBIホールディングス(8473)やマネックスグループ(8698)など、暗号資産交換所を運営する企業に短期的な資金が集中する可能性があります」(松本氏)
さらにもう一つの注目テーマとして、「中小企業DX・地方創生」が挙げられるという。
「自治体向け研修を手がけるインソース(6200)や、マイナンバーカード関連の大日本印刷(7912)などは、独自の材料株として物色されるかもしれません」と松本氏。
もっと言えば、これらの動きは"政権交代"という低い確率の事象に賭ける側面があり、投機的な色合いが強い点は押さえておくべきだ。
二つのシナリオ、そしてそれぞれで注目される銘柄群。結局のところ、投資家はどこに軸足を置くべきなのか迷う投資家も多いだろう。そこで松本氏は、改めて大局的な視点を強調する。
「高市政権の誕生をメインシナリオとしつつも、重要なのは"誰が首相になるか"ではなく、"どのような政策を進めるか"です。政府が財政を拡大して経済成長を促すという方向性は、高市氏と玉木氏に共通しています。続けて、松本氏は「半導体強化や防衛力増強などの主要政策でも、与野党の合意が進んでいます。こうした"政策の一致"こそが市場の安心材料となり、長期的に日本株を支える力になるでしょう」と話す。
短期的な政局のノイズに反応するよりも、政策の継続性と経済の潮流に目を向ける──。
その視点こそが、これからの日本株投資で成果を積み上げるための確かな指針であり、長期的な市場の波を読み解く"投資家の感度"を磨く第一歩になるだろう。
西脇章太 にしわきしょうた 1992年生まれ。三重県出身。県内の大学を卒業後、証券会社に入社し、営業・FPとして従事。現在はフリーライターの傍ら、YouTubeにてゲーム系のチャンネルを複数運営。専門分野は、金融、不動産、ゲームなど。公式noteはこちら この著者の記事一覧はこちら