第46回将棋日本シリーズJTプロ公式戦はシーズンも佳境。11月9日(日)には準決勝の佐藤天彦九段―永瀬拓矢九段戦が大阪府大阪市の「インテックス大阪」で行われました。
対局の結果、矢倉対雁木のねじり合いから抜け出した永瀬九段が89手で勝利。安定した指し回しを見せて藤井聡太竜王・名人の待つ決勝戦にコマを進めました。
○優勝まであと2つ

勝てば決勝進出という大一番は振り駒で永瀬九段の先手番に。角道を止めた佐藤九段の戦型選択に注目が集まるなか、駆け引きのすえ雁木対棒銀の流行形に落ち着きました。佐藤九段としては本シリーズの3局をいずれも居飛車で通した形です。スルスルと繰り出された永瀬九段の右銀に対し、佐藤九段は右桂を跳ねて盤上は早くも攻め合いの様相を呈しています。

居玉のまま桂と歩を駆使して鋭いパンチを繰り出す佐藤九段。しかしこの日は永瀬九段の指し回しがその一枚上を行きました。自陣四段目に飛車を浮いたのが後手の攻め駒を一掃するための柔軟な一手。首尾よく2枚の歩を回収して指しやすさを手にしました。佐藤九段としては結果的に、右桂の活用を急いで金桂交換の実利を目指す方針が優りました。

○競り合い許さぬ快勝

手番を得た永瀬九段の反撃が始まります。
8筋のタダのところに香を打って飛車の成り込みを迫ったのが厳しい決め手。佐藤九段は飛車を端に逃がすよりありませんが、これにより両者の飛車の働きの差がクローズアップされ、形勢は急に先手優勢に傾いた印象です。「終盤に入るあたりで決定的に差をつけられ勝負所を失った」という佐藤九段の感想がその苦労を物語ります。

終盤に入ってからは永瀬九段の正確な寄せを見るばかりとなりました。終局の時刻は17時20分(対局開始16時8分)、最後は自玉の詰みを認めた佐藤九段が投了。軽やかな飛車のさばきで相手の攻めの芽を摘みつつ、正確な寄せを見せた永瀬九段の快勝譜となりました。藤井竜王・名人との間で行われる決勝戦は11月23日(日)に東京都江東区の「東京ビッグサイト」で行われます。

水留啓(将棋情報局)
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