今回は、完全ワイヤレスイヤホンの売れ筋について、イヤホン専門店のe☆イヤホン秋葉原店 本店に取材しました。

完全ワイヤレスタイプがイヤホンの主流となって久しいですが、現在のトレンドについて同店のゆーでぃ氏は「全体的に音質や技術が上がって、最低限のスペックはどの製品もクリアしている感があります。
それゆえか、『音質に全振りしました』『ノイズキャンセリングがものすごいですよ』みたいな一芸が抜きん出た製品が売れている印象ですね」といいます。

成熟した市場にのみ許された、ある種の贅沢なフェーズに入った現れのようにも感じられます。「完全ワイヤレスイヤホン選びの3ポイント」を踏まえ、最前線の売れ方を追っていきましょう。
<完全ワイヤレスイヤホン選びの3ポイント>

やはり使用シーンをしっかりイメージすることが大事。強い機能を絞って選んだほうが高コスパな製品に出会いやすい。
複数の機器につなぐならマルチポイント機能、騒音を抑えるならノイズキャンセリング、充電の手間を減らしたいならワイヤレス充電の有無を要確認。
そしてフィット感は本当に人それぞれなので、売り場で実際に装着して確かめたい。ノイズキャンセリングなら遮音性の確認も大切。

※本文と写真で掲載している価格は、取材した2025年10月6日15:30時点のe☆イヤホン秋葉原店 本館のものです。本店とは異なる場合があり、日々変動もしているので、参考程度に見てください。
第1位…ボーズの定番第2世代「QuietComfort Ultra Earbuds (第2世代)」が安定人気

個性勝負のフェーズで一番人気になっていたのは、ボーズの「QuietComfort Ultra Earbuds (第2世代)」でした。本体のみで約6時間の連続再生が可能な製品で、取材時の価格は33,840円でした。


「ボーズはノイズキャンセリングの性能が特に優れています。そこが評価されたモデルの第2世代(2nd Gen)ということで、『なら買ってみようか』という人が多い印象です。空間オーディオも優れていて、通勤通学でドラマや映画をよく観るという人にも支持されていますね」

第2位…ASMR専用をうたうfinalの「ZE500 for ASMR」

2位に入ったのは、自律感覚の絶頂感とされる「ASMR」(Autonomous Sensory Meridian Response)向けと銘打ったfinalの「ZE500 for ASMR」です。本体連続再生時間は約4.5時間で、取材時の価格は8,080円でした。

「とりわけ声が聞き取りやすいチューニングになっていて、細かやな息づかいなどの表現力に優れています。そのうえとてもコンパクトなので、耳が小さめの方でも装着しやすい強みもあります。女性の方にも人気がありますね」

第3位…コスパの高さが評価される水月雨の「SPACE TRAVEL 2」

続く3位は、水月雨(MOONDROP)の「SPACE TRAVEL 2」でした。本体連続再生は約7時間で、取材時の価格は4,150円でした。

「水月雨は、有線イヤホンも含めて5,000円弱から40万円級の製品までありますが、どれもコストパフォーマンスの高さが評価されています。SPACE TRAVEL 2も、この音質やアプリの操作性、マルチポイントやノイズキャンセリングなどの機能も含めて、なぜこの値段で出せるのかと驚きます。そこに注目して買われる方と、このブランドだからと買う方がいらっしゃいますね」

第4位…磁性流体のドライバーを採用した初の完全ワイヤレス「EAH-AZ100」

4位は、再び数万円クラスの製品が入りました。Technics(テクニクス)の「EAH-AZ100」で、取材時の価格は39,600円。
完全ワイヤレスイヤホンとして、磁性流体ドライバーを採用した初の製品で、本体連続再生時間は約10時間となります。

「これまで10万円を超えるような有線イヤホンにしか搭載されてこなかったドライバーを組み込んだということで、上半期にとんでもなく売れました。おそらく年間ランキングでも上位に入る製品です。ノイズキャンセリングももちろんついていて、機能面でも隙がありません」

第5位…強NCの定番モデルが安定のランクイン「WF-1000XM5」

5位は、ソニーから2023年9月に登場した「WF-1000XM5」が入りました。アクティブノイズキャンリング(ANC)に定評のあるモデルで、ANC有効時は約8時間、無効時は約12時間の連続再生が可能です。取材時の価格は32,670円でした。

「とてもロングヒットしている定番モデルですね。やはり、最近は電車の中で映像コンテンツを楽しむ方が増えていて、ノイズキャンセリングの性能が高いモデルの需要が高まっています。1位もそうでしたが、こちらもシリーズを通して定評のあるモデルということで盤石の売れ方をしています」

はみ出し情報…「Inovatör」や「HSX1001」など7万円台の高級人気モデルも

抜きん出たモデルが注目を集める時代、ランキング上位には入らなかったものの、目立った売れ方をしている製品で目立っているのは、音質や機能を追求した高級モデルでした。ゆーでぃ氏は、NUARLの「Inovatör」と、Acoustuneの「HSX1001 Jin -迅-」を挙げます。取材時の価格は、それぞれ74,250円と76,890円でした。

ゆーでぃ氏は、まずInovatörについて「音質などの基本スペックが非常に高いことに加え、パーソナライズ機能が秀でています。
専用のスマホアプリを使って自分の耳を測定して、傾向にあわせて最適化した音を出してくれるんですね。聞こえにくい帯域を補ったりしてくれるので、体感としてはっきりと違いが感じられるという人が多くいます」と言います。

HSX1001については「有線イヤホンで40万円超の高級モデルで名を馳せているブランドでして、そこから登場した初のワイヤレスイヤホンです。もう本当に音質重視で、その一芸に特化したところを気に入って購入する人が多い製品です」とのこと。ちなみに、有線イヤホンに変形するギミックも備えています。

著者 : 古田雄介 ふるたゆうすけ フリーランスライター。『アキバPick UP!』(ITmedia PC USER/2004年~)や『売り場直送! トレンド便』(日経トレンディネット/2007~2019年)などのレポート記事を手がける。デジタルと生老病死のつながりにも詳しい。著書に『スマホの中身も「遺品」です』(中公新書ラクレ)、『ここが知りたい!デジタル遺品』(技術評論社)、『故人サイト』(社会評論社)など。 この著者の記事一覧はこちら
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