先日、Xで「学資保険」についての議論が盛り上がっていました。教育資金を準備する方法としてよく知られる学資保険ですが、「マネーリテラシーが低い人が選ぶ」という意見も出ています。
はたして、学資保険を選ぶことは本当にマネーリテラシーが低いと言えるのでしょうか。

学資保険のメリットとデメリット

学資保険は、教育資金の準備に特化した保険であり、多くの場合、貯蓄と保障の両方の機能を備えています。賛否が分かれる学資保険ですが、まずは、具体的にどのようなメリット、デメリットがあるのか見てみましょう。
<メリット>

学資保険の一番のメリットは、子どもの教育資金を計画的に準備できることです。教育費は子どもの成長とともに負担が大きくなり、特に高校や大学ではまとまった金額が必要になりますが、保険料を一定期間支払うことで、こうした将来の大きな支出に備えられます。

また、学資保険は、契約者(通常は親)が亡くなったり、高度障害状態になったりした場合、それ以降の保険料の支払いが免除される「保険料払込免除特約」が付帯していることが一般的です。

これにより、親に万が一のことがあっても子どものために教育資金の準備を続けることができ、予定通り満期金や祝金という形で給付金が受け取れます。

さらに、学資保険は「生命保険料控除」が適用されますので、支払った保険料の一部が所得控除の対象となり、所得税や住民税の負担を軽減できます。
<デメリット>

学資保険のデメリットは、途中で解約すると「解約返戻金」が支払った保険料の総額より少なくなるケースが多いところです。そのため、学資保険に申し込む前に、途中で解約する可能性があるかどうかを見極める必要があります。

また、学資保険は、契約時に将来受け取る給付金額があらかじめ決まっているものが多いですが、インフレが進むと、その給付金の“実質的な価値”が目減りしてしまう可能性があります。

学資保険は安全性を重視しているため、一般的に、運用利回りが低めに設定されているからです。
その結果、物価が上がるスピードに給付金の増え方が追いつかない場合があります。

学資保険には、将来決まった金額を受け取れる安心感はありますが、ほかの投資商品と比べてもお金を増やす効率は高くはなく、インフレに対応しにくい商品と言えるでしょう。
「学資保険を選ぶ=マネーリテラシーが低い」ではない

それでは、学資保険は教育資金の準備方法として選択すべきではないのでしょうか。たしかに、運用利回りは低く、昨今のインフレを考慮すれば積極的に選ぶべき方法ではないのかもしれません。

しかし、学資保険を選ぶ人の中には、効率やどれだけお金が増えるかよりも、「安心感」を優先する人が少なくありません。

「投資にはどうしても抵抗がある」
「保険なら安心できる」

こう感じている人は、意外と多いものです。また、学資保険は、途中で解約すると元本割れしやすい商品です。一見デメリットに思えますが、これが「簡単にやめられない」という歯止めとなり、結果的に計画的な資金準備につながることもあります。そのほか、学資保険の保障機能を重視する人もいるでしょう。

自分が優先したいのは、利回りなのか、安心感なのか、それとも他の基準なのか。そこを明確にした選択であれば、学資保険を選んでも、決してマネーリテラシーが低いとは言えないでしょう。

もちろん、教育資金を準備する方法はほかにもあります。
NISAでの運用、学資保険以外の保険商品、定期預金、もしくはそれらの組み合わせなど、選択肢はいろいろ。お金を増やす効率だけを考えれば、学資保険が最も優れているわけではありません。

ですので、「教育資金の準備=学資保険」と決めつけず、さまざまな方法があると知ったうえで選ぶことも大切です。

しかし、方法を選びきれず、結局何も始められないまま…という状態のほうがよほどもったいないものです。「無理なく行動に移せるのは学資保険」であるなら、それは十分に価値のある選択でしょう。

武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら
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