●『テニスの王子様』『HUNTER×HUNTER』など人気舞台に出演するなかで学んだこと
テレ東のドラマ『コーチ』(毎週金曜21:00~21:54)に出演中の俳優・阿久津仁愛にインタビュー。前回は『コーチ』で共演する唐沢寿明とのエピソードや、役づくりについて話を聞いた。
今回は、彼にとって芝居の原点とも言える舞台について話を聞いた。(全2回インタビューの2回目)

○ミュージカル『テニスの王子様』初演後に届いた手紙

――阿久津さんは舞台と映像、どちらの現場も経験されています。それぞれの違いや魅力を感じるところはありますか?

舞台は、ステージに立った瞬間に自分の表現がそのまま作品に直結する場所だと感じています。だからこそ、のびのび演じられるように稽古でしっかりと準備をしておくイメージがあります。

特に2.5次元の作品では原作があって、アニメを観て育ってた方も多く客席にいてくださるので、キャラクターに自然に見えるように演じることを、一番大事にしています。

――原作があって、キャラクターの“正解”がある世界だと、プレッシャーも大きいのでは?

どうだろう……僕にとって最初の大きな仕事だったミュージカル『テニスの王子様』のときは、本当にたくさんのご意見をいただきました。初演の頃は特に、「もっと良くなってほしいからこそ、率直に伝えます」という内容のお手紙をいただいたり。

――手紙ですか。

そうなんです。真剣に作品を観てくださっているからこその言葉だと受け取りました。SNSでもいろいろな反応があって、当時の自分には大きな励みにもプレッシャーにもなりました。初めての仕事で必死だったので、観てくださる方の視点にまで思いが至っていなくて……。
でも、そのときに気づけたことが大きかったです。

そこから少しずつ自分を客観視できるようになって、プレッシャーとの向き合い方も変わった気がします。それでも、作品の初演で世界で最初に挑むというときは、やっぱり怖いです。『HUNTER×HUNTER』THE STAGEの初演のときも、正直に言えばとても怖かったです。

○『鬼滅の刃』舞台演出の末満健一氏からもらった“金言”

――阿久津さんはキルア役を演じられましたね。

キルアはたくさんの方に愛されているキャラクターですよね。僕自身も大好きなので、(原作のファンの方に)どうすれば好きになってもらえるだろうと考え続けました。

以前『鬼滅の刃』の舞台に出演したときに、演出の末満(健一)さんが「2.5次元の芝居は、最初の一言目でキャラらしさを自然に出せれば、その後は自分の色を出しても受け入れられやすい」とお話しされていて、それがとても印象に残っているんです。

それ以来、最初の登場の印象づくりをとても大切にしています。そこでしっかりキャラクターらしさを出せれば、その先は少しずつ自分なりの表現も自然に、観ている方たちに馴染んでいくのではと思うんです。

●厳しい意見にも素直に向き合えたワケ、『千と千尋の神隠し』ソウル公演への意気込み
――少し話が戻るのですが、手紙をもらったときに、めげずに向き合えたのがすごいと思います。

いや、その頃は本当に悩んでいました。
地方公演では、トイレにこもって、一人で泣いてしまったこともありました。周りは経験豊富な先輩方ばかりで、どうすれば近づけるかをずっと考えていました。

でも、ミュージカル『テニスの王子様』のように長く愛されてきた作品だからこそ、いただく言葉を前向きに受け取り、自分の力に変えたいと思ったんです。真剣に観てくださるからこその声だと感じられたからこそ、素直に向き合えたのかもしれません。

――その後、どう変わりましたか?

「先輩方の演技をもっとちゃんと見たい」と思って、DVDを何度も観ました。移動中もずっと資料映像を観て、「ここに表現のヒントがあるんだ」と思って、練習してました。

公演を重ねるうちに、「今の動き、誰々さんに見えました」とか「こだわりが伝わります」と言っていただくことが増えて、それが本当にうれしかったです。「よっしゃ!」って(笑)。

○『千と千尋の神隠し』ソウル公演でハク役

――そうした積み重ねがあって、次は『千と千尋の神隠し』ソウル公演への出演が決まっています。

ハク役の醍醐虎汰朗くんや増子敦貴くんとは学生時代からの友だちで、そんな仲間と同じステージに立てるのがまずすごくうれしいです。二人は何度もこの作品に出演してきたので、ご一緒できるのが楽しみですし、自分も同じ熱量で良いものを届けたいと思っています。

それに、『千と千尋』の世界観が本当に好きなんです。
切ないけど美しい、あの独特の空気感。そういうところを繊細に、自分なりのハクとして表現できたらと思っています。(この取材のときは)まだ稽古は始まっていませんが、資料をいただいて想像を膨らませている段階から、すでにワクワクしています。

――最後に、今後やってみたいことを教えてください。

『BLドラマの主演になりました』のように続編が決まって、一つの作品を長く続けられたらうれしいですね。完結するんじゃなくて、つながっていく作品に携われたらうれしいなと思っています。

それから、コメディ作品にも挑戦してみたいです。この間ドラマ『パワプロドラマ 2025 ー平凡な新社会人の俺がサクセスした話』(ABCテレビ)で、矢部くんを演じたのですが、すごく楽しくて。

――間(ま)であったり、コメディはまた違う難しさがあると聞きます。

そうですね。映像の現場でコメディをされている方を間近で見ると、テンポ感や間の正確さに驚かされます。たとえば、ドラマ『バントマン』(東海テレビ・フジテレビ系)で共演した平原テツさん。
間の取り方、体の角度、表情の使い方など、本当に巧みなんです! ああいうお芝居ができたら楽しいだろうなって思います。難しそうですが、ぜひ挑戦してみたいですね。

■プロフィール
阿久津仁愛(あくつ にちか)
2000年12月23日。栃木県出身。2014年、「第27回 ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」の準グランプリを受賞し、芸能界デビュー。2016年、ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズンで主人公・越前リョーマ役に抜擢され、注目を集める。以降、舞台を中心に映像作品でも活躍。ドラマ『コーチ』(テレ東)が放送中のほか、舞台『千と千尋の神隠しSpirited Away』韓国公演(2026年1月7日~3月22日)を控える。
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