久原本家は11月21日に「東京銀座 茅乃舎」をグランドオープンする。日本の「だし」文化の魅力を国内外に向けて発信する旗艦店として、厳選のだし素材、上質な贈答品を販売していく構え。
メディア内覧会には、店舗のデザインを監修した建築家の隈研吾氏がゲストとして招かれた。

だし商品を展開

「東京銀座 茅乃舎」は、選び抜かれた素材から生まれる「だし」の奥深い世界を丁寧に案内し、その魅力を心ゆくまで体験してもらうための店舗。茅葺き屋根を想起させる、杉格子の庇(ひさし)を重ねた温かみのある外観が目印となる。

茅乃舎の原点である「素材」へのこだわりを体現する1階には、主力のだし商品のほか、本店舗の核となる「乾物」20種類以上の単品を用意。茅乃舎が全国各地から選び抜いた鰹節、昆布、炭火焼きあご、あご煮干しなど、日本の食文化に触れる商品を取り揃える。

このほか、地域の特色ある乾物素材を組み合わせた「茅乃舎 厳選素材 乾物キット5種」(東京、名古屋、能登、京都、博多)も販売。各地の郷土料理のレシピも用意しているため、日本の豊かなだし文化を家庭でも手軽に再現できる。

2階には、選び抜かれた贈答品を用意。『特別誂え みやびだし』『特別誂え 山椒生七味』や、京都・一乗寺にあるフランス菓子の名店Regis d.(レジス・デ)の茅乃舎特別仕様のクッキーなど、ここでしか手に入らない商品を販売する。お手土産として『東京銀座 茅乃舎 限定 だしいなり』も用意した。

メディア内覧会で、久原本家グループ社主の河邉哲司氏は「この旗艦店を建築できるのは隈さんしかいないと思った」とし、これに隈氏も「これまで培ってきた職人の技の集大成のようなものが作りたいと思った」と応じる。「茅乃舎さんが日本の食で追求してきたことを、我々も建築で追求してきました。
今回は素敵なコラボができました」と隈氏。

このあと隈氏は、店舗のしつらえ、設置されている工芸品などを紹介。

「この店舗に来ていただけたら、日本伝統の食、工芸、建築などの文化は、根っこのところで繋がっていることを理解いただけるのではないかと思います。日本人にも海外の人にも、そうした気付きを与えられたら」と話す。

これを受け、河邉氏は「私も同じことを思いました。日本の食、工芸、建築はとても繊細なもの。来店したお客様に、日本の文化って深いなぁ、素敵だなぁと感動してもらえる場所になれば、と願っています」とした。

店舗デザインは「『茅』の優しさを銀座でいかに表現するか」にこだわり

隈研吾氏に店舗デザインのコンセプトについて聞くと、「日本の伝統的な美意識につながる『茅』、茅乃舎さんの『茅』を、いかに見せていこうか考えました。田舎の古民家で用いられている『茅』の優しさを、都会のど真ん中にある銀座という地でいかに表現するか、ということです」と話す。

茅乃舎のブランドに対するイメージについては「日本の食文化だけでなく、工芸、建築、ものづくり、すべて含めて『守り伝えていこう』という姿勢が感じられて、深く共感しています」と隈氏。河邉社主とはもう長いお付き合いになるんです、と笑顔を見せる。

「東京銀座 茅乃舎」は、来店した客にモダンな美しさを印象づける。
けれど、ただモダンなだけで終わらない。ふんだんに使われている木、そして石から温もりのようなものを感じさせる。

そこで内装について聞くと「たとえば金属の手すりひとつとっても、火であぶって光沢の雰囲気を出しています。陳列棚の木材には釿(ちょうな)などの大工道具で模様をつけるなぐり仕上げを施していますし、イサム・ノグチが愛した庵治石(あじいし)も効果的に使っているんです。そういったひとつひとつのストーリーも、ぜひ楽しんで欲しいですね」と隈氏。

近隣では、世界中のハイブランドがひしめき合っている。そんな銀座のど真ん中で「東京銀座 茅乃舎」が目指したのは、人が訪れて思わずホッとする、そんな空気感だ。

隈氏は「これは日本人だけでなく、外国人も同じだと思うんです。来店してホッとしてもらい、だし汁を口にしてホッとしてもらえたら。この店舗は銀座にあるから、より存在意義があるのではないか――。そんなことも考えています」と話した。

近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。
出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら
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