前回は政策金利上昇に伴う融資金利の反応について考察しました。今回はコマーシャルペーパー(CP)について説明します。
コマーシャルペーパーは2025年1月31日まで日本銀行が公開市場操作の一環で実施する買いオペの対象となっていたため、経済ニュースで用語を目にしたことがある読者も多いと思います。金融商品としての存在は知られていても、誰がどのような条件で発行しているのか、具体的な内容について話題になることが少ないので調べました。

書名にコマーシャルペーパーという文言が入っている本は、筆者がアプローチした限りでは『CP=コマーシャルペーパー』と『電子コマーシャルペーパーのすべて』しかないです。前者は1987年発行で、日本のコマーシャルペーパー市場が創設される直前に欧米の取組事例を紹介した内容です。後者も2003年の電子コマーシャルペーパー市場の創設を契機として2004年に出版されたので、2025年時点の情報を知ることができません。最新情報は、東京大学の服部孝洋教授がコマーシャルペーパーを研究テーマのひとつに据えていらっしゃるので、noteで発信されている内容を追うのが良さそうです。

社債に関する書籍を確認しても、例えば『社債市場の未来』や『入門社債のすべて』にはコマーシャルペーパーの項目がないです。実務に関する記述がある専門書は『銀行実務詳説 証券』以外に見当たらず、筆者自身もまだ参考図書を探し求めている状況ですので、情報をお持ちの有識者の方がいらっしゃいましたらご一報を賜れれば幸甚です。

コマーシャルペーパーの概要について『銀行実務詳説 証券』から引用すると、商品性と発行・流通の取り扱いの枠組は「社債、株式等の振替に関する法律」と「金融商品取引法」によって規定されています。期間は1年未満、付利方法は割引方式(つまり割引債)、額面は1億円以上100万円単位で発行可能ですが10億円券面であることが多く、無担保、少人数私募形式での発行が一般的です。発行手続きは通常、発行希望日の2営業日前に発行体がディーラーに対して発行総額・発行期間を通告し、引受条件の提示を求めるかたちで進みます。

コマーシャルペーパーの発行期間の傾向については、日本証券業協会が2022年3月まで公表していた「短期社債等及び私募社債の取引状況等」のExcelファイルを参照すると把握しやすいです。
2022年時点の数字を用いて金額ベースの割合で類推するかたちになりますが、1週間以上1か月未満のものが最も多く全体のうち約27%を占め、次いで3か月以上4か月未満のものが約20%、2か月以上3か月未満のものが約18%という状態です。発行体にニーズに合わせて柔軟に期間が設定されているイメージです。

企業がコマーシャルペーパーを発行できるようになるための事前準備については、『電子コマーシャルペーパーのすべて』に段取りがまとめられているので、内容を抜粋します。主だった作業項目は、コマーシャルペーパーの発行に関する取締役会決議、コマーシャルペーパー格付の取得、ディーラー契約の締結、証券保管振替機構への登録、IPA(発行・支払代理人)と資金決済会社の選択です。格付を取得するまでのリードタイムは、初めて申請するケースで資料を提出してから約1か月とされています。

コマーシャルペーパーの発行状況を確認する方法は私募債と同じです。証券保管振替機構のWebサイトへアクセスします。個別銘柄について知りたい場合は「取扱銘柄情報」→「短期社債振替制度」→「銘柄公示情報(短期社債振替制度)」の順に進み、検索します。発行者名や金額の情報を得ることが可能です。金利の相場について知りたい場合は「制度について」→「短期社債振替制度」→「短期社債等平均発行レート(日次)」の順に辿ります。報道機関としては金融ファクシミリ新聞https://kinfaku.jp/がコマーシャルペーパーに関する情報を手厚く配信しており、例えば2025年11月末時点での発行残高は約25兆円と発表しています。

要約された情報を知りたい場合は、上田八木短資株式会社が毎月公表している「オープン市場短信」を読むとよいでしょう。
半年分のレポートを参照して金利の動向についてチェックすると、a-1格の一般事業法人が3か月のコマーシャルペーパーを発行するとき、2025年5月の上限0.630%・下限0.555%から2025年10月の上限0.760%・下限0.600%へと、上昇傾向にあることが分かります。

a-1格はコマーシャルペーパー発行時に用いられる短期格付の符号のひとつで、株式会社格付投資情報センターのWebサイトに説明文が掲載されています。短期債務履行の確実性は高いa-1格から、最低位の格付で債務不履行に陥っているか、またはその懸念が極めて強いc格まで5段階あります。公募債発行時に用いられる発行体格付とは内容が異なります。

「オープン市場短信」には月末時点の発行残高上位10社についても掲載されています。金利と同様に半年分のランキングを追いかけたとき、リース会社の存在感が大きくノンバンクの資金ニーズを満たしていることと、三菱商事や日本製鉄といった事業会社が短期資金を調達してすぐに返済する様子を見ることができます。

事業会社のコマーシャルペーパーの利用について、資金調達手法に詳しいテンキューブ株式会社の伊藤信雄氏から「借り換えや売掛買掛の回転差などのつなぎ資金をはじめ短期資金ニーズが発生する、高格付け企業(商社、リース、海運、素材産業等)が利用しているイメージ。」とコメントをいただいております。製鉄会社のニーズについては、鉄鉱石や石炭をスポットで購入する際の資金決済に活用しているのだろうと筆者は想像しました。

コマーシャルペーパーは融資と比較して低金利かつ圧倒的に短いリードタイムで資金調達できる仕組ではありますが、低利が故に券面の金額が大きくなる商慣習がボトルネックとなり、中小企業だけでなく東京プロマーケット上場企業や東証グロース上場企業にとっても、資金調達手段として検討するためのハードルが非常に高くなっていると言えるでしょう。コマーシャルペーパーの解説は以上です。次回は2025年の私募社債の状況について情報提供いたします。
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