富士通と、AI開発者向けのクラウドプロバイダであるScaleway SAS(以下、Scaleway)は12月4日、欧州において、データ主権を尊重しつつサステナブルなAI活用環境の構築を実現するため、戦略的協業に関する覚書を11月27日に締結したことを発表した。
富士通のプロセッサ開発における知見と、Scalewayの欧州クラウドインフラにおける知見を持ち寄り、効率・信頼・安全性を兼ね備えAIの普及を支援する新しい手法を探求するという。
今回の協業を通じて、AI推論処理において主流なGPU中心の構成に加えて、高性能かつ省電力性を追求したArmベースの次世代プロセッサ「FUJITSU-MONAKA」を欧州市場に提供することで、ワークロードに合わせたインフラ環境を実現するための共同検証を推進する。利用者はAIワークロードの特性やTCO(Total Cost of Ownership:総所有コスト)に応じて適切な基盤を選択できるようになるという。
○協業の背景
近年の生成AIの普及により革新的なサービスが生まれる一方で、データセンターの消費電力が増加する世界的な社会課題が発生している。こうした背景から、欧州では性能とエネルギー効率、データ主権を両立するAIインフラへの需要が急速に高まっている。
予測可能な性能、管理・抑制された運用コスト、そして環境負荷の低減が求められている中、CPUベースのアーキテクチャは安定した性能や高い電力効率、既存環境への統合の容易さから、これらの要件に適していると期待される。
○両社の取り組みと強み
富士通はスーパーコンピュータ開発で培った技術を継承し、高性能かつ省電力性を追求したArmベースの次世代プロセッサ「FUJITSU-MONAKA」の開発に取り組んでいる。最先端の2ナノメートルプロセス技術を採用する「FUJITSU-MONAKA」は、最新の3Dパッケージ構造に最適化した自社マイクロアーキテクチャ、超低電圧回路動作技術といった独自技術を適用し、AIをはじめとする多様なワークロードで高いアプリケーション性能と電力効率の両立を目指す。
一方のScalewayは欧州のデータ主権をリードするクラウドサービスプロバイダーであり、スタートアップから大企業までさまざまな規模の組織に対し、それぞれの運用上・戦略上の要件に合致した最適なインフラを提供するという理念を掲げている。
同社はこの理念に基づき、強力なGPUを備えた「AI Factory」から高効率なコンピューティング基盤までクラウドサービスを展開しており、各ユースケースに最適なアーキテクチャを、性能、コスト、環境負荷それぞれにおいて透明性を維持しながら提供している。
両社はユースケース創出など協議を進めており、2026年下期より共同PoC(Proof of Concept:概念実証)を開始し、その検証結果に基づいて2027年以降に利用者向けに実用性を確認するパイロット環境の構築と提供を検討する。
将来的には、欧州市場に最適化されたCPUベースの新たなAI推論サービスの商用化も検討を進めるとのことだ。
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