中古マンションを購入し、自分好みにリノベーションする――この「中古×リノベ」という選択肢は、理想の暮らしを叶えるだけでなく、将来的な“売却”や“住み替え”を見据えた戦略的な住宅取得にもつながります。

その戦略を支える最も大きな要素の一つが「エリア選び」です。
どれだけ内装にこだわっても、立地の魅力が薄れてしまえば、資産価値を維持することは難しくなります。今回は、リセールバリュー(再販価値)の観点から見た、プロが実践するエリア選定の考え方をお伝えします。
○「立地が9割」は本当か

不動産業界でよく言われる「物件選びは立地が9割」という言葉。極端に聞こえるかもしれませんが、これは資産価値や売却時の流動性を重視する場合、決して言い過ぎではありません。

中古マンションは築年数とともに建物自体の価値が下がっていく一方で、「どこにあるか=土地の価値」は大きくは変わりません。つまり、将来の売却を見据えるなら、「建物」よりも「エリア」の見極めこそが肝になります。
○資産価値が落ちにくいエリアとは?

資産価値の下落が緩やか、または今後の上昇が見込めるエリアには、いくつかの共通点があります。
○1. 駅徒歩10分以内、かつ複数路線利用可能

アクセスの良さは資産性の基礎です。特に都市部では、駅徒歩10分以内・複数路線の利用可否が資産性に大きく影響します。
○2. 人口が増えている、または減っていないエリア

市区町村ごとの人口動向は、自治体のホームページなどで確認できます。人口が維持されている地域は、将来的にも安定した需要が見込めます。
○3. 商業施設や教育環境など、生活利便性が高い

スーパー、病院、公園、学校など、生活インフラが整っているエリアはファミリー層の支持が厚く、売却時も広い層にアピールできます。

○4. 再開発や大型プロジェクトが計画・進行中

再開発が行われているエリアでは、今後の街の価値が上がる可能性があります。たとえば大規模な駅前開発や公園整備、商業施設の新設などは注目材料です。
○価格で妥協すべきでないのが「立地」

物件選びでは、「広さ」「築年数」「眺望」など、惹かれる要素がさまざまありますが、どれだけ条件が良くても、立地で妥協してしまうと、あとから「売りづらい」「資産価値が下がった」という後悔につながりがちです。

とくに中古マンションの場合、エリアによっては新築と中古の価格差があまりないケースもあります。安さに目を奪われず、冷静に「長く住めるか」「将来貸せるか・売れるか」という視点を持つことが大切です。
○意外と見落としがちな「地盤」「ハザードマップ」

資産価値を守るうえで、地盤の強さや災害リスクにも目を向けるべきです。近年は水害・地震リスクを重視する買い手が増えており、購入時にハザードマップの確認は欠かせません。リスクが高いエリアでは、将来の売却に影響が出る可能性も。

また、地盤の弱いエリアでは地不同沈下などのリスクが高まり、長期的な修繕費用に影響する場合があります。土地の歴史や地名の由来を調べるのも、有効なチェック方法です。ハザードマップは、各自治体のホームページから閲覧・ダウンロードするか、役所の窓口で紙の地図を入手できます。
○1.3つ程度の候補地を並行して比較する

一つの駅・一つの街に絞りすぎず、同条件で複数のエリアを見比べると、判断がブレにくくなります。

○2.価格相場を把握しておく

ポータルサイトで、エリアごとの坪単価・m²単価の相場を把握することが、掘り出し物発見にもつながります。
○3.自分のライフスタイルと照らし合わせる

働き方や家族構成の変化を見据えて、将来的にも「ここに住み続けたい」と思えるかどうかを判断材料に加えましょう。
○まとめ:未来の"売りやすさ"をエリアで決める

リノベーションで理想の住まいをつくるからこそ、「どこに建つ家か」はとても重要です。長く快適に暮らすだけでなく、将来売却や賃貸に出す可能性があるなら、エリアの資産性は無視できません。

次回は、そんな「中古×リノベ」戦略を実行するうえで、プロが物件の“建物自体”をどう見極めているかをご紹介します。

角高広 株式会社すむたす 代表取締役。2012年、株式会社Speee入社。不動産売却メディア「イエウール」を立ち上げ、事業責任者として売却領域業界No.1へ。現GA technologiesグループのイタンジ株式会社にて、経営企画・複数事業責任者・人事を兼任した後、2018年、テクノロジーを活用した中古マンションの買取再販・仲介事業を手掛ける「株式会社すむたす」を創業。最短2日で現金化できるマンション売却サービス「すむたす売却」の累計査定数は4万件を超える。リノベマンションが仲介手数料0円で買えるポータルサイト「すむたす直販」も展開している。2019年、Forbes「アジアを代表する30歳未満の30人(Forbes 30 Under 30 Asia) 」選出。
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