12月5日と8日の両日、埼玉県立三郷北高等学校の高校1年生たちに向けて「ダークパターン」の手法や対策を学ぶ授業が行われました。この授業は、一般社団法人ダークパターン対策協会が制作した学生向け啓発動画を利用した初の授業となります。


教材として利用された動画は、高校生向けに用意された「定期購入の罠!篇」「推し活に気を付けて!篇」「存在しないグッズ篇」の3本で、消費者庁と文部科学省によるレビューを受けたもの。

「定期購入の罠!篇」は、わかりにくい説明で除毛クリームを定期購入させられる事例が紹介されています。「推し活に気を付けて!篇」はコンサートチケットを格安で購入したと思ったら手数料などで高額になったケース、「存在しないグッズ篇」は購買サイトで不当な機会に個人情報の入力などを求められるダークパターンが紹介されています。

授業は、生徒が3つのグループに分かれ、それぞれが動画を1本ずつ視聴したのちにグループワークに参加する形式で行われました。

○啓発動画を視聴してからグループワークを行う

今回見学した授業では、冒頭に石田実里教諭から、不当な表示(有利誤認/優良誤認)とダークパターンについての説明がありました。

埼玉県では2024年度、高校生と大学生に向けて不当表示の広告についての調査を行っています。石田教諭は「(この調査で)不当表示広告は見つからなかったと答えた人もいましたが、もしかすると気づいていないだけかもしれない。こうした表示をダークパターンと呼びます」と説明しました。さらに、「ダークパターンは消費者を意図的に誤認、誘導させる不適切なデザイン」であること、NDD認定制度はダークパターンを用いていないWebサイトに認定マークを付ける取り組みであることが説明されました。

そして生徒たちはプリントにメモを取り、各自のGIGAスクール端末でダークパターン対策協会が作成した動画を視聴。その後、座席を移動し、同じ動画を視聴した生徒が数人一組になって、他の生徒に動画の内容について解説しました。

授業の最後には、石田教諭からトラブルに巻き込まれた際の相談先について説明がありました。
また、消費者側も「少し疑う目」を持つ意識が重要であり、新しい手口が増え続けるので最新の知識を得ておくことが大切だというお話もありました。

○成年年齢に達する前に繰り返し教える

授業の終了後、石田教諭にお話を伺いました。

今回は、ダークパターンについて二度目の授業となるため、ダークパターンの手口を再確認することと、新しくできたNDD認定制度について紹介し、一つの判断基準にしてもらうのが目的だったとのことです。

「ダークパターンに関する課題が教科書に出てくることはあまりないのですが、消費者被害から身を守るという単元があるので、その派生としてダークパターンも教えています。実際にネットで買い物をしている高校生は少ないとはいえ、被害に遭っている自覚を持っていない人もいますし、将来的に被害が増えることを防ぎたいと思っています」(石田教諭)

成年年齢の引き下げにより、高校3年生でも成年として消費行動ができるようになりました。そのため、高校1年生~2年生のうちに消費について履修していく必要があります。「授業で何度も消費について触れることで学習の積み上げをしていきたいと考えている」と石田教諭は話してくれました。

ダークパターン対策協会が作成した動画について石田教諭は、「他にも啓発動画はあるので特に目新しいわけではありませんが、1本が3~4分に収まっていて、利用しやすい教材だと感じました。生徒はビジュアルを重視するので、デザインが古かったり、ぎこちなかったりすると視聴しません。その点では、ちゃんと見てくれる動画でありがたいと感じました」と評価していました。

授業を終えた生徒に尋ねたところ、「動画サイトの広告などでダークパターンを見かける」「グループワークで楽しく学べた」という感想でした。

ダークパターン対策協会が作成した動画は、小学生向け/中学生向けもあります。
今後、動画を活用した授業が広がり、ダークパターンへの啓発が広がっていくかもしれません。

著者 : 鈴木朋子 すずきともこ ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザー。スマホやSNSなど、身近なITサービス全般に関する記事を執筆。なかでもSNSに関しては、コンシューマーからビジネスまで広く取材を行い、最新トレンドを知るジャーナリストとして定評がある。また、安全なIT活用をサポートするスマホ安全アドバイザーとして記事執筆や講演も行う。著書は『親が知らない子どものスマホ』(日経BP)、『親子で学ぶ スマホとネットを安心に使う本』(技術評論社)、『インターネットサバイバル 全3巻』(日本図書センター)など。 この著者の記事一覧はこちら
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