新NISAの登場によって身近になった投資ですが、加速するインフレやトランプショック、円安などの状況で、投資を始めたことを後悔した人も少なくないと言います。『投資の解像度を上げる 超インフレ時代のお金の教科書』(クロスメディア・パブリッシング刊)では、著者の頼藤太希氏が、投資理論・行動経済学・地政学・バブルの4つの視点から、「どう投資していけばいいのか?」という疑問に回答。
不安定な状況下において、投資の解像度を上げる知識を与えてくれます。

本書の終章では、「オルカン」の人気について解説します。投資信託ランキングでも6連覇を達成中のオルカンが、多くの人から推される理由は何なのでしょうか?
○「人気が人気を呼ぶ」だけじゃない

本書でも何度か全世界株式型インデックスファンドの「オルカン」こと「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の名前が出てきました。オルカンは、個人投資家が選ぶ投資信託のランキング「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year」(2024年からは「個人投資家が選ぶ! Fund of the Year」)で2019年~2024年まで6連覇を達成中です。2024年の新NISAスタート以降も「オルカンかS&P500か、どちらを買うべきか」と幾度となく2択で語られてきました。オルカンはとても人気があるのです。

オルカンが人気で、いろいろな人が推す理由は、次の点にあります。
○合法的な投資先だから

第2章で紹介したとおり、オルカンは純資産総額が6兆円を超える大規模な投資信託です。月次資金流入額も好調に推移しており、特に新NISAが始まった2024年1月以降は1か月で1000億円以上も資金が流入。2024年1月・2025年1月は1か月で3000億円以上も資金が流入しています。資金が流入しているということは、それだけ人気だということですし、より効率の良い運用ができるようになる点でもメリットがあります。

保有中にかかる手数料「信託報酬」も年0.05775%と同種の投資信託のなかでも最安水準。
「eMAXIS Slim」シリーズは、純資産総額が増えると投資家が負担する信託報酬が下がる「受益者還元型信託報酬」を取り入れているのも嬉しいポイントです。

実際、オルカンの2024年4月26日~2025年4月25日の実質コストは0.094%と非常に安くなっています。低コストで分散投資が実現できる、合理的な投資先だといえるでしょう。
○地政学リスクに配慮した投資先だから

オルカンは23の先進国・地域と24の新興国・地域に分散投資しています。そのうち89.4%が先進国で、米国だけで64.2%。以下日本5%、英国3.3%、カナダ2.7%などに投資しています。新興国も、中国2.9%、インド2.1%などに投資しています。米国が投資先の大部分を占めているので、米国の動向の影響は色濃く受けますが、米国以外の国・地域にも投資しているので、何か地政学的な問題が発生したときには分散投資によるリスク低減効果を発揮します。
○業績が安定している運用会社だから

運用会社も業績が悪くなれば、事業を終了することがあります。2024年10月にはPayPayアセットマネジメントが事業終了を発表。運用中だった12本の投資信託のうち4本を繰上償還、8本をアセットマネジメントOneに移管することになりました。移管であれば引き続き運用が行われるので問題は少ないですが、繰上償還となると運用がそこで終了し、その時点での利益または損益が確定。
長期・積立・分散投資ができなくなってしまいます。

オルカンの運用会社「三菱UFJアセットマネジメント」は非上場会社ですが、ウェブサイトに決算公告が公表されています。2025年3月期は営業収益が1182億円、営業利益が174億円。前期(2024年3月期:営業収益1019億円、営業利益158億円)より増収増益となっています。三菱UFJアセットマネジメントはオルカンのほかにも「eMAXIS Slim」シリーズでさまざまな人気の投資信託を展開しています。だからといって、同社が今後も絶対に大丈夫という保証はできませんが、業績が安定している運用会社であることは間違いないでしょう。
○取扱金融機関が多いから

オルカンは53の金融機関で販売されています(2025年7月8日時点)。取扱金融機関が多いということは、それだけ普段利用している金融機関で購入できる可能性が高いですし、主だった金融機関でオルカンを購入可能です。新たに金融機関の口座を作ったりする必要なく手軽に購入できるのも推しやすいポイントです。

このようにみてみると、オルカンは、「みんなが推しているから」という理由でおすすめされているわけではないことがわかります。オルカンには、多くの人に推されるだけの理由があるのです。

○『投資の解像度を上げる 超インフレ時代のお金の教科書』(頼藤太希 著/クロスメディア・パブリッシング 刊)

新NISAの登場によって投資ブームが起きました。
しかし、進むインフレ、トランプショック、円安など不安定な状況が続く中で、「貯金しておけばよかった」と後悔する人も少なくないと言います。2024年の暴落時に株を手放した人は40%超というデータも。こんな中、どう投資していけばいいのか? その疑問に、ベストセラー著者の頼藤氏が答えます。投資の失敗のほとんどが解像度が低いことにあります。本書では、その罠を乗り越えるための知識を投資理論・行動経済学・地政学・バブルの4つの観点から伝えます。大量のエビデンスを交えながら明快に解説し、確実性の高い投資の結論を導き出します。もし、恐慌が起きても損をしない投資スキームを組めれば、乱高下も怖くない! すでに投資している人の不安、これから始める不安を解消する一冊です。

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