第84期順位戦B級2組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社・日本将棋連盟)は、7回戦計13局の一斉対局が各地の対局場で行われました。このうち、関西将棋会館で行われた久保利明九段―北浜健介八段の一戦は88手で久保九段が勝利。
7勝0敗と星を伸ばして昇級に向け大きく前進しました。
○全勝街道まっしぐら

久保九段は4年ぶりとなるB級1組復帰に向け6戦全勝で邁進中。この日は中飛車党の北浜八段に振り飛車を譲って久保九段は居飛車穴熊の持久戦策を採用しました。早めのぶつけで角交換を迫ったのは「振り飛車には角交換」の格言通りの一手で飛車先を突破する狙い。この戦型を知り尽くす久保九段らしく、居飛車を持っても軽快なさばきで局面が動き始めました。

先手は成銀を、後手は馬を作って競り合いは一段落。駒の損得こそないものの、後手の馬と比較して先手の生角が働きに欠いているため、盤上は居飛車ペースで推移しています。北浜八段も垂れ歩から着実な攻めを目指しますが、手番を握った久保九段が反撃を開始します。端歩攻めを決行したのが急所を突いた筋良い一手で、ここからは久保九段の一人舞台となりました。北浜八段は垂らした歩を成る暇がありません。

○腕力見せた中押し勝ち

反撃を間に合わせたい北浜八段も手筋連発で食い下がりますが、この日は久保九段からの急所の端攻めに最後まで苦しめられることに。銀頭へのタタキの歩で形を乱したのもそつのない利かしで、堅かったはずの中飛車穴熊はいつの間にか見る影もなくなっています。
直後、一転して先手の要である飛車を攻めたのが緩急自在の一局を締めくくる久保流の決め手となりました。

終局時刻は21時52分、最後は逆転の見込みなしと認めた北浜八段が投了。中盤の競り合いで抜け出したのち、端攻めでリードを拡げ寄せ合いにすら持ち込ませなかった久保九段の強さが光る一局となりました。勝った久保九段は7勝0敗として昇級に向け大きく前進、一方敗れた北浜八段は0勝7敗と苦しい星取りになっています。

水留啓(将棋情報局)
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