東西所属の棋士による対抗戦「SUNTORY将棋オールスター東西対抗戦」は、決勝戦が12月14日(日)に東京都渋谷区「明治神宮会館」で行われました。このうち藤井聡太竜王・名人と中村太地八段による団体戦第5局は77手で藤井竜王・名人が勝利。
横歩取りの中盤戦で劣勢に陥るも逆転に成功し、3年連続となる西軍の優勝に大きく貢献しました。
○注目のファン投票首位対決

本対抗戦はファン投票および予選から選ばれた12名の棋士が東軍と西軍に分かれて争うもの。前日に自身の動画サイトを更新した中村八段は「1手30秒の早指しでは何が起こるかわからない、持てる力をすべて発揮したい」と意気込みます。藤井竜王・名人の先手番で始まった対局は横歩取りへと進展、駆け引きのすえクラシカルな持久戦に落ち着きました。

先に動いたのは後手の中村八段でした。自陣の金取りを手抜いて王手飛車取りをかけたのが局後の藤井竜王・名人に「見落として苦しくした」と言わしめた積極策で、敵陣に二枚竜を作って指しやすさを手にします。しかしこの日は藤井竜王・名人の老獪な勝負術が一枚上を行きました。遊び駒の桂を活用しながら敵玉頭に迫ったのが反撃開始の合図です。

○超絶技巧の寄せ

後手玉が中段に逃げ出し、長期戦かと思われた終盤戦。しかしここで藤井竜王・名人は決め手を用意していました。ぼんやりと空中に打った角が格言「玉は包むように寄せよ」を地で行く絶妙手で、次の両王手の筋がわかっていても有効な受けがありません。広そうに見えた中村玉を二枚角と二枚桂の4枚の網でからめとった超絶技巧に、観戦者は舌を巻きました。


この直後、自玉の受けなしを認めた中村八段が投了。中村八段の積極策に苦戦しつつも巧みな玉さばきで決め手を与えず、最後はキレのある寄せで体を入れ替えた藤井竜王・名人の技が光る逆転劇となりました。なおこの日は豊島将之九段らの活躍で6局中5局を制した西軍が決勝戦に勝利。一方の東軍は伊藤匠二冠が山崎隆之九段に勝利し一矢報いました。

水留啓(将棋情報局)
編集部おすすめ