高血圧=減塩この常識が覆る! この記事では高血圧治療の名医・渡辺尚彦氏が最新研究でわかった簡単なのにすごい高圧法を紹介した『血圧を下げるのに減塩はいらない!ナトカリ比であなたの血圧は下がる』(渡辺尚彦/アスコム)から一部を抜粋して解説します。

今回のテーマは『胃がん・認知症リスクも軽減!ナトカリ比改善による驚きの相乗効果』。


○胃がん・認知症リスクも軽減!ナトカリ比改善による驚きの相乗効果

ナトカリ比を下げると、予防効果が期待できそうな病気がほかにもあります。

そのひとつが、胃がんです。

日本は胃がん多発国として知られていました。

その理由として考えられるのが、高塩分の食生活です。

塩を摂りすぎると、胃の粘膜を傷つけ、炎症を起こしやすくなります。

そして、慢性的な炎症が続くと、細胞が異常な増殖を始め、がんにつながるリスクが高まります。

例えば、塩分過多によって傷ついた胃粘膜は、胃がんの原因のひとつであるピロリ菌が住みやすい環境です。また、塩分過多はピロリ菌を毒性の強いものに変化させることもわかっています。

まず、カリウムを摂ってナトカリ比を下げると、体内のナトリウムが排出されるので、胃粘膜が守られます。ほかにも、カリウム豊富な果物や野菜には、ポリフェノールやビタミンCなどの抗酸化物質もがん抑制にはたらくと考えられています。

厚生労働省の多目的コホート研究でも、塩分摂取量が多い人ほど胃がんリスクが高いことが示されています。一方で、野菜や果物を多く摂る人は、胃がんリスクが低下することも報告されています。


つまり、ナトカリ比を下げれば、胃がんリスクの低下にもつながるのです。

もうひとつ、ナトカリ比が低いと認知症予防にも効果があるのではないかと考えられています。

その理由を、順を追って説明します。

ナトカリ比が高いと、血圧は高くなります。慢性的に血圧が高いと、血管の壁は堅くなり、脳を含む全身への血流を悪化させます。

脳への血流が慢性的に不足すると、神経細胞がダメージを受け、血管性認知症のリスクが上がります。それに、高血圧が長年続くこと自体も、アルツハイマー型認知症の危険因子とされています。

一方、カリウムには血圧を下げる作用だけでなく、神経細胞の電気的な安定性を保ち、神経伝達をスムーズにするはたらきがあります。

さらに、カリウムをじゅうぶんに摂取すると、体内の酸化ストレスや炎症が抑えられ、脳の萎縮や神経細胞の障害が進みにくくなります。

そのため、ナトカリ比を下げると認知症の予防効果が期待できそうなのです。

因果関係はまだ明確に証明されてはいませんが、中国の研究では軽度認知障害のある方はナトカリ比が高いというデータや、ナトカリ比が高い人ほど認知テストスコアが低くなる傾向があるという報告があります。

こうした知見を踏まえると、ナトカリ比を下げることは、血圧を安定させて心血管病を予防するだけでなく、認知症そのものを遠ざける有効な戦略になるかもしれないのです。


○『血圧を下げるのに減塩はいらない!ナトカリ比であなたの血圧は下がる』(渡辺尚彦/アスコム)

減塩だけが血圧を下げる方法ではない――。私が約40年にわたる高血圧の診療の現場と研究生活で
つねづね感じてきたことです。実は、ふだん私たちが食べている物のなかに、食べるだけで血圧を下げてくれる食材がたくさんあります。それを医学的に正しく説明したのが本書の「ナトカリ比」です。最新の研究で解説するだけではなく、どういう食べ方をすればいいのか、何を食べればいいのかまで詳しく紹介しています。減塩は大切とわかっていながら、「外食中心なので無理」、「そもそも味が薄くてつらい」と断念した人、ぜひ、希望をもって本書を読み進めてみてください。
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