第84期順位戦B級1組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社・日本将棋連盟)は、10回戦計6局の一斉対局が12月18日(木)に各地の対局場で行われました。このうち東京・将棋会館で行われた広瀬章人九段―石井健太郎七段の一戦は110手で広瀬九段が勝利。
二転三転の終盤戦を制して今期8勝目を挙げています。
○中盤は広瀬リード、しかし…

A級に向けた2つの昇級枠を13名で争うB級1組。9回戦を終えた段階で伊藤匠二冠が8勝1敗で首位、2位につける広瀬九段はこの日抜け番の伊藤二冠に追いついておきたいところです。石井七段の先手番で始まった本局は両者得意の角換わりへと進展、石井七段の早繰り銀に後手の広瀬九段が腰掛け銀調で応じて攻防の構図が決まりました。

丁々発止の中盤戦が終わるころ、先にリードを奪ったのは広瀬九段でした。攻防の要と思われた馬を見捨てて金取りに桂を打ったのが格言「終盤は駒の損得より速度」を地で行くスピード感覚。居玉のままの自玉に対する見切りも抜群で、そのまま押し切るのは時間の問題かと思われました。しかし石井七段も飛車を見捨てる勝負手を繰り出し食い下がります。

○冷や汗かきつつも勝利

ともに持ち時間30分を切った最終盤にドラマが待っていました。手番を握った石井七段は4筋へのタダ捨ての角で詰めろをかけますが、結果的にこの手が敗着に。同じようでも角は6筋に放り込むのが正着で、本譜と同様に後手が受けに回ったときに飛車を取る含みがあるため、より厚い攻めが実現できていました。これを逃して実戦は泥仕合に突入します。


九死に一生を得た広瀬九段が最後は押し切る形に。飛車を切って質駒の銀を入手、さらに要の竜まで切り飛ばしたのが先手玉への詰みを見切った決め手となりました。終局時刻は23時34分、最後は詰みを認めた石井七段が投了。最終盤で冷や汗をかく場面があったものの、総じて主張ある指し手を貫いた広瀬九段の勝利となりました。

勝った広瀬九段は8勝1敗で伊藤二冠に並び首位タイに。一方敗れた石井七段は2勝7敗と苦しい星取りです。

水留啓(将棋情報局)
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