アフラック生命保険(以下、アフラック)、日立製作所(以下、日立)、GlobalLogic Japan(以下、GlobalLogic)は12月23日、がんを取り巻く社会的課題に対して企業が従業員とその家族を包括的にサポートするため、職域の従業員を当事者としたキャンサーエコシステム(職域版キャンサーエコシステム)の構築に向けた「がんを知り・がんに備える」プログラムの実証実験の効果検証を完了したことを報告した。

○検証の背景

日本人が一生のうちにがんと診断される割合は約2人に1人とされ、新たにがんと診断される人の約30%が就労世代(20歳~64歳)に該当する。
就労世代が多くの時間を過ごす職場においては、企業も従業員の健康管理の観点から制度整備や理解促進などのサポートに着手しているが、これらの取り組みに対する従業員の認知や意識が十分でないことから、活用が進まないなど、就労世代におけるがんの予防や罹患者のサポートには課題がある。

がんへの対応は社会全体の課題であり、企業においても人的資本や健康経営に直結する重要な経営課題の一つとなる。これらの課題を解決するために、企業は従業員に対するサポートを検討し、有機的かつ統合的なアプローチで企業内における周知と啓発を図ることが重要だ。
○3社におけるこれまでの取り組み

アフラック、日立、GlobalLogicの3社は2022年12月より、日立の従業員とその家族にがんに関して包括的かつ中長期的なサポートを提供する「職域版キャンサーエコシステム」の構築の先行検討を開始した。がん予防や治療における職場からのサポートに関する従業員視点での「ありたい姿」の方向性と、それを実現するための施策アイデアを検討している。

この施策アイデアの検討において、日立ではヘルスケア施策は整備されているものの認知率が低いことに加え、若年層を中心に受診が必須ではないがん検診への意識が十分でないことや、従業員と企業系列保険代理店のタッチポイントが限定されているという課題が明らかになった。

また、3社は2023年9月から企業におけるウェルビーイング向上を目指し、施策アイデアの具体化を実施している。施策アイデアの具体化にあたっては、アフラックは保険会社としてがん保険の知見を提供した。これに、GlobalLogicによるデザイン思考のアプローチに基づく課題抽出や施策アイデア創出力、日立の社会イノベーション創出に向けた価値協創のノウハウを融合して、従業員とその家族の目線での各種施策アイデアを具体化している。

一連の施策アイデアの検討から具体化のプロセスでは、3社のプロジェクトチーム間だけでなく、日立の人事・健康推進部門、健康保険組合、企業系列保険代理店などと連携し、施策アイデアの実現性などを考慮して実効性のある施策として策定した。これらの状況を踏まえ、今回は策定した施策の効果を測定するため、日立社内で検証を実施した。
○検証の概要とその結果

今回の検証では、2025年4月から11月にかけて、日立の従業員のうち約3000人を対象に、「職域版キャンサーエコシステム」の構築に向けた「がんを知り・がんに備える」プログラムの有効性を確認した。


従業員のがんに対する意識向上やがん検診の受診、および保険検討機会の創出を実現するための取り組みを実施し、「がんを意識する機会の拡大」「がん検診の受診機会の拡大」「がん保険の検討機会の拡大」の3つのKPIから効果を検証した。

具体的には、GlobalLogicによる、個人の選択の自由を尊重しながら望ましい行動を自然に促すための「行動のデザイン」の手法をもとに施策を検討し、がんに対する自律的な意識向上につなげるための施策を実施。

その一つとして、主催元となる日立の企業系列の保険代理店である日立保険サービスと共にがんセミナーなどのイベントの周知方法の変更や、アーカイブ配信などの改善を実施した。

その結果、「がんを意識する機会の拡大」「がん検診の受診機会の拡大」の観点では、がんセミナーの認知率がおよそ20%向上し、セミナー後のアンケートでは、セミナー参加者のうち約70%が「がん検診を受けようと思った」と回答するなど、がんに関する備えや検診受診、保険加入などに前向きな回答を得られ、意識向上につながる結果が示された。

また、「がん保険の検討機会の拡大」については、セミナーの参加やアーカイブ視聴を通じて日立保険サービスへの保険相談も増加するという成果が見られた。これらの結果を踏まえ、検証した3つのKPIのいずれにおいても一定の効果が得られたことが確認されている。
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