正月明けに体重計に乗って「やっぱり増えていた」と感じる人は多い。ただし、その増加分はすべて“脂肪”とは限らない。


年末年始は食事量の増加だけでなく、生活リズムの乱れや運動量の低下、アルコール摂取などが重なり、体の中では代謝や水分バランス、消化機能にさまざまな変化が起きているのだ。

なぜ正月は太りやすく、戻りにくいのか──クリニックフォア監修医の内科医・渥美 義大先生に聞くと、意外な落とし穴が見えてきた。

「食べ過ぎ」だけが原因じゃない、“正月に太る人”に共通するNG行動

――年末年始はついついおいしい料理やお酒をいつもより多く口にする機会が多く、つい食べ過ぎてしまいます。食べ過ぎで体重が増えるのは理解できるのですが、「単純に食べ過ぎている」以外に太る要因には何があるのでしょうか?

年末年始に体重が増える背景には、単純な「食べ過ぎ」以外にも、生活リズムの変化によるさまざまな要因が関係しています。

まず大きいのが、睡眠リズムの乱れです。夜更かしや睡眠不足が続くと、食欲を抑えるホルモンであるレプチンが減少し、食欲を高めるグレリンが増加することが知られています。その結果、普段よりも空腹を感じやすくなり、食事量が増えやすくなります。また、睡眠不足は血糖値やインスリンの働きにも影響し、短期間でも太りやすい状態を招くとされています。

次に、身体活動量の低下も見逃せません。年末年始は外出や通勤が減り、日常的な歩行量や運動量が大きく低下しがちです。摂取エネルギーが増えている一方で消費エネルギーが減るため、エネルギーバランスが崩れやすくなります。さらに寒さによって体を動かす機会が減ることも、代謝低下につながります。


また、この時期に増えやすい体重の中には、脂肪ではなく「水分による増加」も含まれます。おせち料理や外食は塩分が多く、体が水分を溜め込みやすくなるため、むくみによって体重が一時的に増えることがあります。アルコール摂取も体内の水分バランスを乱し、同様の現象を起こしやすくします。

さらに、アルコールそのものの影響も重要です。アルコールは体内で優先的に代謝されるため、同時に摂取した糖質や脂質がエネルギーとして使われにくく、脂肪として蓄積されやすくなります。加えて判断力が緩みやすくなり、おつまみもつい進んでしまいますから、無意識のうちに食事量や間食、塩分摂取が増えることも少なくありません。

このように、年末年始の体重増加は「食べ過ぎ」だけでなく、睡眠・運動・ホルモンバランス・水分バランスなど、複数の要因が重なって起こるものと考えられます。

今すぐやめるべき、正月太りを加速させるNG行動

――年末年始の典型的な行動(長時間の座りっぱなし・遅めの起床・夜更かし・連日の飲酒・間食など)で、医学的に特にダメージが大きいものはどれですか?また、その理由を教えてください。

年末年始に見られる行動の中で「医学的なダメージが大きい」と考えられるのは、体重増加そのものよりも、代謝やホルモン、自律神経のバランスを崩しやすい行動です。その観点から特に注意したいのは、次の3つです。
○連日の飲酒(最も影響が大きい)

医学的な影響が最も大きいのは、連日の飲酒です。

アルコールは体内で「毒素」として扱われるため、肝臓では最優先で代謝されます。
その間、糖質や脂質の代謝は後回しになり、結果として脂肪が蓄積されやすくなります。また、アルコールは1gあたり約7kcalと高カロリーで、飲酒量が増えるほどエネルギー過多に直結します。

さらに重要なのは、飲酒が睡眠の質や自律神経に与える影響です。アルコールは一時的に眠気を誘いますが、深い睡眠を妨げ、夜間覚醒を増やすことが知られています。その結果、翌日の食欲増加につながりやすくなります。加えて、おつまみによる塩分過多はむくみや血圧上昇のリスクを高めます。
○睡眠不足・生活リズムの乱れ

次にダメージが大きいのが、睡眠不足や夜更かしによる生活リズムの乱れです。

睡眠不足が続くと、食欲を抑えるレプチンが減少し、食欲を高めるグレリンが増加します。その結果、甘いものや脂っこいものを欲しやすくなり、食事量が対増えてしまいます。

この影響は「寝だめ」ではすぐに戻らない点も、医学的には重要です。
○長時間の座りっぱなし

三つ目が、長時間の座位行動です。

長時間座ったままの状態が続くと、下半身の大きな筋肉が使われず、1日の総エネルギー消費量が大きく低下します。
活動量の低下は血糖値の上昇や脂肪蓄積を招きやすくするだけでなく、血流の停滞によるむくみや腰痛、全身のだるさにもつながります。
「正月太り」のリスクを下げられる最低限の心得とは

――年末年始は生活リズムが崩れがちですが、太るリスクを抑えるために“これだけは守ってほしい最低限のポイント”は何でしょうか?

年末年始の体重管理で大切なのは、完璧を目指すことではありません。

医師として最低限お伝えしたいのは、次の3つの「判断基準」を守ることです。
○「起きる時間」だけは普段と大きくずらさない

夜更かし自体を完全に避けるのは難しくても、起床時間が大きくずれると、食欲や血糖値を調整する体内リズムが崩れやすくなります。年末年始でも「起きる時間は±1時間以内」を目安にするだけで、太りやすさは抑えられます。
○「毎日飲む状態」を作らない

量よりも重要なのは頻度です。連日の飲酒は代謝や睡眠に影響が残りやすいため、「今日は飲まない日」を1日でも挟むことが、年明けの体の戻りやすさにつながります。
○「1日トータルで全く動かない日」を作らない

運動の有無よりも、「1日を通してほぼ座りっぱなし」にならないことが重要です。数分立つ、少し歩くといった小さな動きをこまめに取り入れるだけでも、代謝低下を防ぐ効果が期待できます。

年末年始は「食べ過ぎない」よりも、生活リズムが完全に切れてしまわないことを意識するのが、現実的で医学的にも意味のある対策です。
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