2025年の相場を振り返ると、「結局、強いところは強かった」と感じた人は多いはずだ。生成AIや半導体を軸に、資金が集まる銘柄ははっきりしていた。


ただ、次に気になるのは「2026年も伸びるのはどこか」だ。上がった株を追いかけるべきか、それとも次の主役を探すべきか。迷いどころでもある。

そんな中で、投資家・トレーダーの窪田剛氏が“2025年に当たった株”として挙げたのが、評価が真っ二つに割れる一社だった。

「AI時代の本命」と期待される一方で、「トップの一言で値動きが変わる」と敬遠する人もいる──いわゆる“安定”とは真逆の銘柄だ。それでも窪田氏は、「これから最も期待している銘柄です」と語る。

なぜ今、“その一社”なのか。窪田氏が見ているこれからの勝ち筋を伺った。
チャートより“資金の流れ”が答えを出す

その銘柄とは、ソフトバンクグループ(9984)である。株価は、孫正義会長兼社長の言動一つで大きく揺れ動く。市場のセンチメントに左右されやすい同社を、長期保有の対象とすることに抵抗を感じる投資家は少なくない。

「安定成長」こそが資産形成の王道であり、ジェットコースターのような値動きは避けるべきだという慎重論も根強くある。
しかし、窪田氏は現在の相場環境を冷静に分析したうえで、同社を「今年当たった銘柄」の筆頭に挙げ、さらにその先を見据えている。

「私自身の短期トレードでは、2025年後半は半導体や生成AI関連が中心になっていました。ソフトバンクグループ(9984)やキオクシアHD(285A)といった銘柄でした。短期目線では、市場の資金の流れ、すなわち『流動性』と『強さ』を見れば、AI時代の勝者が誰かは明白でした」(窪田氏)

さらに、窪田氏は短期トレードの対象としてだけでなく、長期投資の対象としてもソフトバンクグループに注目している。その根底には、トップに対する強烈な信認がある。
「自分より孫さんを信じる」という合理性

とはいえ、孫氏が掲げるビジョンは、時にあまりに壮大で、実態を掴みづらい側面がある。「AIが人類を超える」「シンギュラリティの到来」といった語りは、数字に基づいた投資判断を好む層にとっては、具体性を欠く夢物語のように映るかもしれない。

実需を伴わない期待だけで株価が形成されているのではないか──そんな懐疑的な見方に対し、窪田氏は「実績」というファクトを提示する。

「私たち個人投資家が見えていないものが、孫さんには見えている。そう考えざるを得ません。ヤフー(※現・LINEヤフー: 4689)を探り当て、アリババ(BABA)に投資し、ARMホールディングス(ARM)を買収し、エヌビディア(NVDA)の筆頭株主だった時期もある。その先見の明は圧倒的です。
もちろん外すこともあるでしょう。ですが、彼のような優秀な人間が、優秀なチームを率いて24時間365日、世界中の成長企業を探している。私が自分で銘柄分析をするよりも、孫さんが選んだ未来に賭けるほうが、期待値が高いと判断するのは合理的ではないでしょうか」(窪田氏)

窪田氏は同社を、30年前のバークシャー・ハサウェイ(BRK-A)になぞらえる。中身はまったく違うものの、「自分より優秀な人間が運用してくれている投資会社」としての機能に、これからの20年を託す価値を見出しているのだ。

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集中投資より危険な“円集中”

もちろん、リスク管理の観点から言えば、単一銘柄への集中投資は推奨されるものではない。「卵を一つのカゴに盛るな」という格言通り、分散こそが資産を守る鉄則だ。

ソフトバンクグループが巨額の損失を出し、危機的状況に陥る可能性もゼロではない。企業の存続にかかわる不確実性を負ってまで、特定の一社にこだわる必要があるのだろうか。しかしここで窪田氏は、その「常識」の裏側にある、多くの日本人が見落としがちな「円という資産」の危うさを指摘する。

「私は真面目に、日経平均は将来10万円に行くと考えています。それは日本経済が強くなるからではなく、円の価値が希釈化していくからです。将来的に円が1ドル200円に向かうと言われている中、現金のままで持っていることこそが最大のリスクになります」(窪田氏)

たしかに、ソフトバンクグループという「箱」が経営破綻するリスクはあるかもしれない。
しかし、同社の投資・事業領域と深く結びついたPayPayやLINEヤフー、ARMといったサービスや技術が、この世から完全に消えてしまうとは考えにくい。社会インフラ化したそれらの価値は残り続けるはずだ。

「そう考えると、会社が消えてしまうリスクよりも、円建ての資産だけを持ち続けてインフレで実質価値が目減りするほうがよっぽど怖い。だから私にとって、ソフトバンクグループへの投資、ひいては株式への投資はインフレヘッジでもあるのです」(窪田氏)
子どもには、配当より“夢”を残したい

円の価値が揺らぐいま、窪田氏は自身の運用だけでなく、子どもの資産づくりにも同じ危機感と発想を持ち込んでいる。

子どもの資産形成の方法としては、低コストのインデックスファンドをコツコツ積み立てるスタイルが広く浸透している。「オルカン(全世界株式)」や「S&P500」も、定番の選択肢として語られることが多い。

だが、窪田氏が子どものために選んだのは、あえてのソフトバンクグループだった。その理由はシンプルで、短期の勝ち負けではなく、20年後を見据えた投資だからだという。

「実は、私の息子の出産祝いやお年玉、お小遣いなどは、すべてソフトバンクグループの株に変えています。100株単位では買えないので、1株ずつ買い集めて、今では100万円を超える規模になりました。2026年、2027年にどうなるかはわかりません。でも、子どもが大人になる20年後を想像したとき、孫さんが世界中にばら撒いた“AIの種”が花開いている可能性は高い。
配当狙いの堅実な銘柄もよいですが、子どもに残すなら『夢』があるほうがよいなと。20年後、世界がどう変わっているか。その答え合わせをソフトバンクグループという株を通じて子どもと一緒に楽しみたいと思っています」(窪田氏)

市場の常識や「こうあるべき」という教科書的な分散投資論に縛られず、圧倒的な「個」の力と時代の潮流に資金を乗せる。見方によっては、それもまた一つの“洗練されたリスク管理”なのかもしれない。

円の価値が揺らぐいま、私たちが本当に恐れるべきなのは値動きそのものではない。何もしないまま、資産の実質価値がじわじわ削られていくことではないだろうか。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買や投資を推奨するものではありません。

西脇章太 にしわきしょうた 1992年生まれ。三重県出身。県内の大学を卒業後、証券会社に入社し、営業・FPとして従事。現在はフリーライターの傍ら、YouTubeにてゲーム系のチャンネルを複数運営。専門分野は、金融、不動産、ゲームなど。
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