伊藤園お~いお茶杯第67期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は予選が大詰め。12月25日(木)には2局が東京・将棋会館で行われました。
このうち、齊藤優希四段―伊藤沙恵女流四段の一戦は124手で齊藤四段が勝利。二転三転の終盤戦を制して初参加の王位戦で挑戦者決定リーグ入りを決めています。
○大注目の一戦

ここまで中村太地八段や斎藤明日斗六段といった錚々たる面子を制してきた伊藤女流四段。本局で勝てば女流棋士として初の挑戦者決定リーグ入りをつかむとともに、棋士編入試験の受験資格を得ることになる大一番です。注目の対戦相手となった齊藤四段は今年28歳でプロ入りした遅咲きながら、三段リーグで17勝1敗の記録を持つ大型新人です。

振り駒が行われた本局は伊藤女流四段の先手番で相居飛車へと進行。矢倉に組んでじっくり指すのは伊藤女流四段得意の持久戦で、これに対し後手の齊藤四段が雁木+右四間飛車の急戦形で応じたことで盤上は早くも一触即発の雰囲気に。しばらく間合いの計り合いが続いたのち、「齊藤四段の攻めVS伊藤女流四段の受け」という構図で局面が動き始めます。

○勝敗分けた攻守判断

齊藤四段の鋭い攻めが決まったかと思えば伊藤流の丁寧な受けが力を発揮、ともに決め手を得られぬまま戦いは終盤戦へと突入します。馬の力で玉を逃がしつつ逃げ切りを図りたい伊藤女流四段ですが、後手からの桂不成の好手を軽視してリードを許すことに。しかしこの直後、齊藤四段の攻めにも一失あって先手にもチャンスが回ってきました。

伊藤女流四段が敵玉そばに香を打ち込んだ場面が勝負の分かれ目となりました。
この手に代えては再度ていねいに受けに回るのが正着とされ、先手玉もすぐには寄らず激戦だったとの結論に。実戦は一瞬の隙を見逃さなかった齊藤四段が「寄せは俗手で」のベタ打ちの金で攻め合い勝ちをハッキリとさせました。終局時刻は19時23分、最後は自玉の受けなしを認めた伊藤女流四段が投了。

一局を振り返ると、伊藤女流四段が持ち前の受けを基調に堂々たる戦いぶりを見せるも、最後の最後で現れた攻め急ぎを見逃さなかった齊藤四段が抜け出した格好に。齊藤四段は初参加となる王位戦で挑戦者決定リーグ入りを決める快挙を達成しています。敗れた伊藤女流四段も「自分のすべてを出し切ろうと思って挑んだ」と晴れやかな顔を見せました。

水留啓(将棋情報局)
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