建設業者の財務体力低下が懸念される中、リフォーム工事中に業者が倒産する事例が相次いでいます。発注側としては前払い金を失った上に、代替業者による工事再開費用が当初の契約額を大幅に超過する可能性も。
ここではフォーム業者の倒産事例、工事を依頼する前に確認しておきたい「住宅完成保証制度」の概要を解説します。

リフォーム業者の倒産件数が増加している

東京商工リサーチの発表によると、リフォーム・塗装工事業者の倒産が急増しています。2025年1月~6月の倒産件数は119件であり、過去20年で最多となっていた2009年の111件を上回っています。

倒産が急増しているのは、大手ではなく小規模のリフォーム会社です。地元密着で外壁塗装や内装改修などを行ってきた会社が経営破綻しています。
○倒産件数が増えている要因

倒産急増の要因として、建築資材の高騰・人材不足に加え、価格競争の激化によって工事単価への転嫁が難しい状況が挙げられます。体力の弱い業者は今後ますます苦しい状況に陥る可能性があります。

また、一括見積サイト・価格比較サービスが普及したため、価格で判断する顧客が多くなっていることも背景のひとつに挙げられます。小規模の会社では広告やキャンペーンの展開が難しいため、安くしないと仕事を獲得できない状況となりつつあります。
○リフォーム工事中に業者が倒産した事例

勤続10年以上の会社員Aさんは、不動産投資に関心を寄せていました。定年まで安心して働けるのか疑問を覚え、別の収入の柱を確保したいと考えたことがきっかけでした。

関東近郊に中古の一戸建てを購入したAさんは、総額500万円で職人にリフォームを依頼。
当初は、3~4カ月ほどで完成する予定となっていました。

ところが職人が自己破産を申請し、前払いで払った代金は戻らず、物件は放置されてしまいました。この代金が弁済される予定はありません。
リフォーム工事で加入すべき「住宅完成保証制度」とは

住宅完成保証制度とは、契約した工務店などが倒産した場合に保証する制度です。施主(発注者)が支払ったお金の損失や別の業者への追加費用を保証し、最小限の負担で工事を完成させることができます。
○建築会社が登録をする制度

この制度は、工事を請け負う会社が保証期間に登録するものであり、施主が申し込むものではありません。登録するには財務内容などの審査を受ける必要があり、基準をクリアした会社のみ登録が認められます。
○制度の対象

保証対象となるのは、発注者がすでに支払った工事費と、工事を引き継ぐ会社への追加工事費です。保証期間によって保証限度額はさまざまで、請負金額の20%~30%ほど、上限1,000万円までと決められているケースもあります。
○大きく分けて2種類ある

保証制度のタイプは大きく分けて2種類あり、「保険タイプ」と「エスクロータイプ」です。「保険タイプ」は割り増し工事費など、損害の一部を補償するものです。

「エスクロータイプ」は建築資金を保証会社に預け、出来高に応じて工事費が建築会社に支払われる仕組み。
損害を最小限に留められます。
工事会社の“途中倒産リスク”を回避するポイント

ここまでの内容をもとに、リフォーム会社倒産による損失を抑えるためのポイントをまとめます。
○住宅完成保証制度への加入を確認する

まず、建築会社が住宅完成保証制度へ加入していることをしっかり確認しましょう。発注者が加入できる制度ではないため、工事を請け負う側が加入していないと意味がありません。

具体的なサービスの例として、住宅保証機構が提供する「住宅完成保証制度」のほか、リクルート住まいカンパニーの「スーモカウンター 完成あんしん保証」、ハウスデボの「ハートシステム」などがあります。

制度に加入しているかは直接会社に聞くほか、それぞれの保証会社のホームページで検索することも可能です。
○利用申請をしてもらう

建築会社が制度に加入していることを確認した上で、保証契約の利用申請をしてもらいましょう。建築会社が保証会社に支払うコストを建築費用に含めているケースもあるため、事前にチェックすることをおすすめします。

安藤真一郎 あんどうしんいちろう マーケティング会社に勤務した後、フリーランスのライターに転身。 多種多様なジャンルの記事を執筆するなかで、金融リテラシーを高めることや情報発信の重要性に気づき、現在はマネー系ジャンルを中心に執筆している。 ライターとして、知識のない人でも理解しやすいよう、かみくだいた文章にすることが信条。 ファイナンシャルプランニング技能士2級、日商簿記検定2級取得。
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