腕時計の「薄さ」は数値で語れるが、感覚的な一面もあると思う。袖口に無理なく収まり、手首の動きを妨げず、視線の中でさりげなく存在する軽やかさが、時計の印象を左右する。


たとえばエレガンスを意識した時計においては、ケースの薄さは装いとの調和のために大切な要素だ。厚みのある時計が力強さを演出するのに対して、薄型の時計は品の良さを携える。たたずまいで語るという点で、薄い時計は大人のスタイルと相性がいい。

ここでは、そうした薄型エレガンスを体現する4本を選んでみた。いずれもケースの厚さは8.5mm以下。加えてデザインや機構の完成度によって、腕元に穏やかな上質さをもたらしてくれるモデルだ。

○ジャガー・ルクルト「マスター・ウルトラスリム デイト」(Ref.Q1238480)

マスター・ウルトラスリム・デイトは、ジャガー・ルクルトの中でもベーシックな薄型ドレスウォッチだ。Q1238480はステンレススチールのケースとブルー系ダイヤル、ケース径は39mm、厚さは約7.8mmに抑えられている。

全体的にフラットなケースは、ベゼルの立ち上がりも浅い。そのため39mm径でも実際の見え方はやや小さく、手首に乗せたときの厚みもほとんど意識させない。ラグも長く張り出さず、ケース全体が一枚の薄い円盤のような印象であることが、このシリーズらしいプロポーションだ。

ダイヤルはサンレイ仕上げのシンプルな3針構成。
アプライドインデックスとドーフィン針はポリッシュ仕上げだが、光沢を出すというより、角を立てて輪郭を見せるタイプの仕上げに思える。薄型ケースと組み合わさることで、ダイヤル全体が立体的に見えすぎないことも上品さに一役買っている。

自社製のムーブメントは自動巻き機械式の「キャリバー 899」だ。直径と厚みを抑えた設計で、日付表示を備えながらも、ケース全体の厚さを8mm以下に収めるベースとなっている。シースルーバックから見るムーブメントの仕上げと装飾にも注目だ。

マスター・ウルトラスリム・デイトが評価されている理由として、薄型ケース、シンプルなダイヤル、現実的な自動巻き機械式ムーブメントを、無理のない寸法の中でまとめている点は大きいだろう。ダイヤルカラー、クロノグラフ、ムーンフェイズといったバリエーションも多彩なので、好きな1本を見つけてほしい。

ケース素材:ステンレススチール
ケースサイズ:直径39mm×厚さ約7.8mm
風防:サファイアクリスタル

ストラップ:アリゲーターレザー
防水性能:5気圧
ムーブメント:自動巻き機械式「キャリバー 899」
パワーリザーブ:約38時間
価格:154万円

○ノモス グラスヒュッテ「ラドウィッグ 38 エナメルホワイト」(Ref.236)

ノモスの「ラドウィッグ 38」は、ノモスの中ではクラシックな位置づけ。ローマ数字のインデックスと細いリーフ針を組み合わせた文字盤が特徴的だ。光沢のあるエナメルホワイトのダイヤルは、細い青焼きの針やレイルウェイタイプの分目盛りとともに、落ち着いたクラシック感と伝統的な表情をつくっている。

ケース径は37.5mm、厚さは6.8mmと薄い。ベゼルはほとんど主張せず、ダイヤルがそのまま外周まで広がっているような見え方で、数字の配置や余白の取り方がはっきりと伝わる。
ラグも短く、ケースの外形がコンパクトにまとまっているため、腕に乗せたときの収まりが素直だ。

ムーブメントは自社製の手巻き機械式キャリバー「DUW 4001」だ。6時位置のスモールセコンドによって文字盤の上下バランスが安定し、ローマ数字の並びにも無理が出ない。巻き上げは手動ではあるが、そのぶんムーブメントの厚みを抑えやすく、ラドウィッグの薄さとクラシックなプロポーションを支えている。

ノモスの薄型モデルは、構成そのものを簡潔にして薄さを得るアプローチに近い。ラドウィッグ 38も余分な表示を持たず、ケースとダイヤルの関係が整理されているからこそ、6mm台の厚みが自然な形で成立している。整った見た目の裏側に、ドイツのブランドらしい設計の合理性が見て取れる。

ケース素材:ステンレススチール
ケースサイズ:直径37.5mm×厚さ6.8mm
風防:サファイアクリスタル
ストラップ:ホーウィン社製シェルコードバン ブラウン
防水性能:5気圧(日常生活防水)
ムーブメント:手巻き機械式「キャリバー DUW 4001」
パワーリザーブ:約53時間
価格:34万7,600円

○ハミルトン「ジャズマスター シンライン オート」(Ref.H38525811)

ジャズマスター シンラインは、ハミルトンのラインナップの中で「薄さ」を主軸に据えたコレクション。H38525811は自動巻き機械式のモデルだ。ケース径は40mmと標準的だが、厚さを8.45mmに抑えることで、見た目よりも軽快な印象で腕に収まる。

ベゼルやケースサイドもシンプルにまとめられ、流麗だがシャープな雰囲気も目を引く。着用したとき側面方向にふくらみが出にくく、シャツの袖口とも干渉しにくいはずだ。


ダイヤルのバーインデックスと細身のリーフ針も似合っている。秒針のない2針(時分針)というのも注目ポイントだ。ムーブメントは自動巻き機械式の「キャリバー 2892-A2」で、型番的に定番の「ETA2892-A2系」をベースにしたものだろう。

ジャズマスター シンラインは薄型であることを強く打ち出してはいないが、直径40mm×厚さ8.45mmのケースサイズは日常的に着用しやすい。ダイヤルカラーやストラップカラーのバリエーションも豊富だ。

ケース素材:ステンレススチール
ケースサイズ:直径40mm×厚さ8.45mm
風防:サファイアクリスタル

ストラップ:カーフレザー
防水性能:5気圧
ムーブメント:「キャリバー 2892-A2」
パワーリザーブ:42時間
価格:15万700円

○シチズン時計「エコ・ドライブ ワン」(Ref.AQ5010-01E)

クオーツ式のエコ・ドライブ ワンは、薄型化を大きなテーマとして開発されたシリーズ。AQ5010-01Eのケース径は36.6mm、厚さは4.5mm、重さも42gと軽く、手首に巻いても腕時計を身に着けているとは思えないくらいだ。

独自の表面硬化技術「デュラテクトプラチナ」を施したステンレススチールのケースは、ベゼルの立ち上がりがほとんどなく、裏ぶたまで含めて一枚板のよう。スモールセコンドを6時位置に配したダイヤルは、極薄ケースの中で視覚的な安定感を生んでいる。

ちなみに、エコ・ドライブ ワンは2針モデルでスタートし、2021年にスモールセコンドモデルが加わった。2針モデルのほうが薄いのだが(現行モデルの最薄は2.98mm)、AQ5010-01Eの4.5mmも十分に薄い。

ムーブメントはクオーツ式で定期的な電池交換がいらない光発電エコ・ドライブ仕様。
厚さ約1mmの専用設計ムーブメントによって、時計全体の薄さが成立している。フル充電から約7カ月の駆動力があり、日常の中で薄さそのものを楽しめることが魅力だ。

ケース素材:ステンレススチール(ライトシルバー色のデュラテクトプラチナ)
ケースサイズ:直径36.6mm×厚さ4.5mm
風防:サファイアガラス(クラリティ・コーティング:光の透過率を約99%まで高めたシリコン化合物の多層コーティング)
ストラップ:ワニ革
防水性能:日常生活防水
ムーブメント:クオーツ式「キャリバー 8845」
価格:33万円
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