僕が本格的に写真を始めたのは、高校に入学した1989年。平成元年です。
ちょうどマニュアルフォーカスは過去のものになりつつあり、オートフォーカスへ激しく移行していた時期でした。'85年にミノルタがαシリーズで先行。それをニコンは'86年に既存のFマウントで、キヤノンは'87年に新たなEFマウントで追いかけていました。そして僕が手にしたのは、まさに高校入学と同じ月に発売されたキヤノンのEOS 630 QDでした。

やがてフィルムがデジタルに置き換わるころ、僕も写真を仕事にするようになり、“最後の5D”であるEOS 5D Mark IVまでEFマウントとともに歩んできました。ミラーレスのEF-Mマウントとも少しお付き合いはしていましたが、仕事に使えるカメラは出ず(22mmF2とか32mmF1.4はいいレンズだったんですが)、メイン機材はミノルタの系譜を継ぐソニーαシリーズに移っていました。

αシリーズには大きな不満はないというか、仕事でも作品でも十分なパフォーマンスを発揮してくれていたのですが…。秋、EOS R5 Mark IIのレンズキット(RF24-105mm F4 L IS USM付き)とRF50mm F1.2 L USMを購入してしまいました。

理由は…なんでしょう。自分でもよく分かりません。ただ、レビューなどの仕事で最新のEOSに触れる機会は多く、そのたびに「帰ってこいよ?」というキヤノンからのメッセージが、津軽三味線をBGMに聞こえたような聞こえなかったような。いや聞こえたらそれは幻聴なわけですが、2025年は大きな個展(ソニーイメージングギャラリー『この雨が地維より湧くとき』)が終わり、新しい刺激が欲しかったのかもしれません。
日ごろ仕事で使っているカメラをプライベートで持ち出してもウキウキしない、ということもあります。

だったらということで、おおよそ仕事カメラとは程遠いニコンZfやシグマBFも考えたのですが、遠すぎて防湿庫に眠ってしまったり、鑑賞用アイテムと化してしまう恐れもあり…。ガンガン作品を撮るなら、慣れ親しんだキヤノンだろうと思ったわけですが。結果として最近はこのEOS R5 Mark IIがお仕事カメラになってしまっています。便利なんだもん。

ただ、本格的に仕事カメラとするなら、望遠レンズや予備ボディーも揃えなければなりません。それもちょっとだけ考えたのですが、いろいろ必要ならソニーを使えばいい話で、2018年の発売時からずっと気になっていたRF50mm F1.2 L USMを購入しました。当たり前ですが、ソニーでは絶対に使えないレンズです。実は何度か試したことがあるのですが、センサーサイズが拡大したような独特な描写力に毎度驚かされました。実際、周囲にいるキヤノンRF機ユーザーに聞くと、大抵これを持っており、揃って「これは別格」「EOSユーザーなら買うべき」とべた褒めなのです。迷っていたら、ちょうどRF45mmF1.2 STMが発売され、そちらも気になりましたが初志貫徹。

というわけで購入した950gのヘビー級標準レンズですが、全長が短めなこともあり、数字ほどの重さは感じません。
むしろ、このずっしりとした感触が、今俺は写真を撮っているんだという満足感すら与えてくれます。描写も期待を裏切りません。同じ50mmF1.2というスペックはシグマ、ニコンZ、ソニーEにも存在し、それぞれメーカーの思想と哲学を感じさせる銘玉です。そもそも装着できるカメラが違うので比較はしませんが、RFに関しては新マウントのデビュー作ということもあり、メーカーの意地がひときわ強く感じられます。そしていい写真が撮れそうな気がするのです。

このレンズで、今年はいい写真を撮ろうと思います。読者の皆さまもよい年でありますよう。

鹿野貴司 しかのたかし 1974年東京都生まれ。多摩美術大学映像コース卒業。さまざまな職業を経て、広告や雑誌の撮影を手掛ける。著書『いい写真を取る100の方法』が玄光社から発売中。2025年1月10日~23日には、東京・銀座のソニーイメージングギャラリーで写真展「この雨が地維より湧くとき」を開催。
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