2026年1月5日に発売された『将棋世界2026年2月号』(発行=日本将棋連盟、販売=マイナビ出版)は、山下数毅四段のインタビュー記事「新時代の棋士」を収録しています。本稿では当記事より、一部を抜粋してお送りします。


○詰将棋とコンピュータ将棋

●四段昇段が決まって少したちましたが、どんな変化がありましたか?

お仕事のご依頼をいただくようになりました。いままではもちろんなかったので新鮮ですし、棋士になったんだなという実感があります。

●今日はいろいろなお話をうかがえればと思います。まず、出身がイギリス・ノッティンガム市というのが目を引くところです。

生まれたのはイギリスですが、2歳までしか住んでいなかったので、記憶にはないです。イギリスから名古屋にきて、小学校1年の終わり頃に京都に引っ越していまに至る、という感じです。

●将棋を始めたきっかけが、ipadの詰将棋アプリということで、これも珍しいと思いました。

もともとパズルが好きで、ipadのパズルアプリをやっている中で、詰将棋に出合いました。1人で黙々と解くのが好きでした。

●それは何歳ぐらいのお話ですか?

記憶はほとんどないのですが、幼稚園の年長か小1の頃だと思います。

●詰将棋以外のパズルでよくやっていたものはありますか?

何という名前か忘れましたが、数字をスライドさせて並んでいる部分を10にするようなゲーム。あとはスタートボタンを押したらボールが転がっていくんですが、そのボールがゴールに到達できるように、スタートボタンを押す前に物を配置するようなゲームがありました。
これも名前は忘れてしまいました。

●知的なゲームですね。

自分はゲーム自体もよくやりましたが、ゲームのバグを探すのが好きでした。さっきのボールを転がすゲームでいうと、わざとおかしな配置にすることで、ボールがありえない動き方をするとか、そういうものです。

(中略)

●AIと対局はされますか?

昔は指したこともありましたが、少なくとも自分の力では、AI同士で大量に指させた将棋を見るほうが学びが多いと感じました。

●『大山康晴全集』を全て並べた、というお話を聞きました。棋譜並べもされるのですか?

毎日コンスタントに何局か並べるということをずっと続けていたら『大山康晴全集』を並べ終えていました。ほかにはコンピュータ将棋の大会の棋譜はかなり並べています。

●例えば、コンピュータ将棋選手権の棋譜ということですか?

はい、そうです。

●並べると言ってももちろん、パソコンでということですよね?

いや、盤駒を使って並べています。

●なんと! AIの棋譜を盤駒を使って並べるのですか。リアルで並べたほうがいいということですか?

パソコン上でポチポチ動かすのも、盤上で動かすのも、正直どっちでも記憶に残ることは多くない気もするんですが、実際に手を動かしたほうがまだましかなという感じがするので盤駒を使っています。
先ほどの話にも出ましたが、特定の戦型に絞って並べると覚えやすいです。棋譜並べをするとき、一局一局が違う戦型でばらけていると、記憶に残りづらいと思いますが、同じ戦型を連続で10局並べたら記憶に残りやすいと思うんです。もちろん、将棋は少しずつ違うんですが、戦型が同じであれば基本的には似ているので、違ったとしてもその差がクローズアップされやすいので。

●私は山下四段が奨励会に入るかどうかくらいの頃にコンピュータ将棋選手権の会場でお父様と一緒に見学されていたのを見たことがあります。この年でコンピュータ将棋に興味があるなんてすごいなと思っていました。

当時からfloodgate(フラッドゲート・コンピュータ将棋のWEB上の対局スペース)ばかり見ていました。相当な数のコンピュータの棋譜を見てきたので、人間が指した棋譜を見た数より10倍、もしかしたら100倍くらい多いかもしれません。
○四段昇段について

●奨励会時代のお話も聞かせてください。小6で初段というかなりのハイペースで昇段されました。藤井聡太竜王・名人や豊島将之九段と同じくらいのスピードですが、自分には将棋の才能があると感じましたか?

どうなんでしょうか。あまり考えたことがありませんでした。自分は結構だらけやすいので、努力する才能はあまりないなと将棋をやっていて感じました。


●中学生棋士になるチャンスもありましたが、意識しましたか?

1期目は確かに初めてのリーグなので、緊張もしましたし、意識も多少ありましたが、2期目以降の記憶はもういま、ほとんどないです。

●2期目で次点を取って、第37期竜王57戦6組で準優勝、さらに第38期竜王戦5組で優勝して2つ目の次点を獲得しました。

竜王戦に関しては1期目は、持ち時間5時間に慣れないところもあって、時間の使い方に苦労しましたし、内容も危ない将棋ばかりでした。ただ2期目になってからは、時間の使い方にも対局の雰囲気にも慣れてきた感じはありました。

●竜王戦5組準決勝の山本博志五段との対局が大きな勝負になりましたが、どんな心境でしたか?

いつも通りでした。よくも悪くもマイペースというか、あまりいろいろと意識しない性格だと思います。

●史上初の形での次点獲得、そして四段昇段になりました。

上がれてホッとしたというところはあります。その半面、三段リーグを勝ち抜いて奨励会を卒業したわけではないので、情けないというか、そういった気持ちもあります。
○棋士とプログラマー

●山下四段の書かれた昇段の記が大きな話題になりました。プログラミングはいつ頃からやり始めたのですか?

小4くらいだと思います。そのときには触れたのがC++という言語だったのですが、難しくて当時わからないところも結構あったので、しばらく離れていました。
中1ぐらいのときに、久しぶりにC++の本を読んでみました。すると今度はそれほど難しく感じることなく使うことができました。最初に学んだ言語がC++というやや難しい言語だったおかげで、いまはおそらく大体どんな言語でも、勉強すれば割とすぐ書けると思います。中1でC++、中2からC#(シーシャープ)、中2の途中か中3辺りからjavascript も書けるようになりました。最近はRust(ラスト)という言語を使うことが増えてきました。

●Rustはどういうところが優れているのですか?

実行速度が速いのと安全性が高いということがあります。バグが生まれるコードが書きづらくなっているのが特徴で、『堅牢性が高い』とも言います。

●何もわかりませんが、わかった気になれました。自分で将棋ソフトを作ろうとは思いませんか?

時間があればやりたいなとは思います。いま、将棋ソフトにはDL系とNNUE系という2種類がありますが、自分はNNUE系のほうを作りたいと思っています。チェスの最新技術を取り入れて自分なりに試行錯誤してみたいです。

●数学者やプログラマーになろうと思ったことはありませんでしたか?

幼稚園の年長か小1ぐらいのときには将棋の棋士になると決めていたので、ほかの職業は考えたことがなかったです。


○『将棋世界2026年2月号』、絶賛発売中!!

ほかにも、
・歴代永世竜王を振り返る特集記事「没我の領域、3人の永世竜王」
・上田初美女流五段による特選自戦記「エピローグを見据えて」
といった記事もあり、指す将・観る将はもちろん、それ以外の方にも楽しんでいただける一冊になっています!  

『将棋世界2026年2月号』
発売日:2026年1月5日
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発行:日本将棋連盟
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