藤井聡太王将に永瀬拓矢九段が挑むALSOK杯第75期王将戦七番勝負(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)は第1局が1月11日(日)・12日(月)に静岡県掛川市の「掛川城 二の丸茶室」で行われました。対局の結果、角換わり腰掛け銀の難解な中盤戦を抜け出した永瀬九段が137手で勝利。
王将奪取に向けて好スタートを切りました。
○珍しい「六段目の継ぎ歩」

両者7度目のタイトル戦での対決となった本シリーズは永瀬九段の先手番で開幕。角換わり腰掛け銀に進んだのは予想された進行で、昨年4月に両者の間で指された名人戦第1局と同じ進行をたどります。3筋の突き捨てを入れずに飛車先の歩交換を目指したのがこの日の永瀬九段の工夫で、局後の藤井王将はこの進行が「認識不足だった」と振り返ることに。

早い段階で前例のない展開となって1日目の午後からともに長考が目立ち始めます。永瀬九段が敵玉頭に継ぎ歩をしたのは相居飛車の常とう手段ながら、自陣近く六段目まで歩を呼び寄せたのが珍しい手筋。自陣に控える金を棒金の要領で繰り出す狙いで、この手を境に戦況は徐々に先手ペースへと転じます。永瀬九段が封じ手を行って1日目の戦いが終了。

○英断の飛車切りから抜け出す

2日目に入ると盤面全体を使った難解な押し引きが始まります。攻めの主役と思われた飛車を切り飛ばしたのが永瀬九段の英断。飛車を渡すだけにリスクがあるものの、金銀との二枚換えを実現してその後の攻めには困りません。黙っていてはジリ貧と見た藤井王将は3枚の大駒を駆使して形勢逆転を目指しますが、やがて永瀬九段に受けの決め手が出ることに。


タタキの歩で後手陣の飛車を封じておき、一転して自陣に手を入れ飛車馬両取りの金を打ったのが手厚い好手。これにより藤井王将の攻めはどうしても一段落するよりなく、永瀬九段は待望の反撃を開始できます。終局時刻は19時36分、最後は自玉の詰みを認めた藤井王将が投了。豊富な研究を生かし、終始主導権を握った永瀬九段の快勝譜となりました。

敗れた藤井王将は局後「苦しい時間が長い将棋になった」と悔しさをのぞかせました。藤井王将の先手番で迎える第2局は1月24日(土)・25日(日)に京都府京都市の「伏見稲荷大社」で行われます。

水留啓(将棋情報局)
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