中国がレアアースの輸出を規制する可能性が報じられている。EVやハイテク製品の心臓部ともいえる資源だけに、市場の動揺は激しい。
「供給網が止まる」という悲観論の一方で、投資家たちの欲望はすでに別の場所へ向いている。「ポスト中国」の技術を持つ企業探しだ。

いわゆる「国策銘柄」への買い殺到。だが、この熱狂に素直に乗っかって、本当に勝てるのか。市場がニュースに踊らされている時こそ、プロはまったく別の視点でチャートを凝視している。

今回は、この騒動で主役級の扱いを受ける“ある本命銘柄”の正体と、ニュース相場で個人投資家がとるべき正しい距離感について、投資家・トレーダーの窪田剛氏に聞いた。
国策の主役、でも今は“思惑株”

中国がレアアースの蛇口を締めれば締めるほど、日本国内で輝きを増すキーワードがある。「南鳥島」だ。日本の南側に位置するこの島の海底には、膨大な量のレアアース泥が眠っていることが確認されている。

もしこれを商業ベースで採掘できれば、日本は資源小国から一転、レアアースの供給面で大きな存在感を持つ可能性がある――。そんなシナリオのど真ん中にいるのが、プラント大手の東洋エンジニアリング(6330)である。

今回の規制強化を受け、同社は「本命銘柄」として投資家の熱い視線を集めている。
しかし、窪田氏はこう警鐘を鳴らす。

「今回のレアアース規制というトレンドの中で、間違いなく本命と言えるのが東洋エンジニアリング(6330)です。なぜなら、南鳥島の深海からレアアースを採掘するプロジェクトに深く関わっているからです。ただ、冷静にならなければいけないのは、これがまだ『実現段階』ではないということです。技術的には可能になりつつありますが、商業的なコストが見合うのか、現在はまだ調査・実証のフェーズに過ぎません。また、現在は期待先行で大きく上昇し、高値警戒感もあります」(窪田氏、以下同じ)

もちろん、中国が「もう売らない」と言い出せば、日本としては採算度外視で国費を投じてでも自前で調達しなければならなくなる。そうなれば、同社には莫大な資金とチャンスが流れ込むだろう。

「しかし、これはあくまで『日本が中国に対抗できる手札(カード)を持てるかもしれない』という可能性の話であって、明日すぐに同社の利益が倍増するわけではありません。株価の上昇は、実需というよりは“思惑”によって作られている側面が強い点は理解しておくべきでしょう」

「脱中国」より先にすべきこと

そもそも、この南鳥島プロジェクトが脚光を浴びること自体、高度な政治的駆け引きの一部である可能性が高い。

日本が本気で自国採掘に乗り出し、実用化のメドが立ちそうになれば、中国にとっては脅威となる。「日本の技術が確立する前に、安く輸出してプロジェクトを潰したほうが得策だ」と考えるかもしれない。

つまり、このプロジェクトは資源確保の実益だけでなく、対中外交における強力な交渉カードとしての側面も持っているのだ。


ニュースの見出しだけを見れば「中国の規制=日本経済への大打撃」と捉えてしまうかもしれないが、窪田氏は長期的な視点を持つことの重要性を説く。

「短期的には、供給不足などのネガティブな影響が出るでしょう。しかし、経済は必ず『解決策』を見つけ出します。レアアースが手に入らなくなれば、代替素材の開発が進んだり、南鳥島のような新規プロジェクトへの投資が加速したりします。かつてなかった技術やルートが開拓され、結果として経済は進化していくのです。あまり深刻に考えすぎる必要はありません」

これは、完全な「脱中国」を目指すという意味ではない。中国と完全に縁を切るのは、経済的に現実的ではないからだ。

「重要なのは、中国と“適切な距離”を保つことです。依存しすぎず、かといって完全に敵対もしない。今回の規制騒動も、日本企業が中国リスクを再認識し、適切な距離感を模索するための一つのきっかけになると捉えています。長期的には、こうした圧力こそがイノベーションを生み、特定の国に依存しない強固な経済構造を作るチャンスにもなり得るのです」
「火中の栗」は拾わないが鉄則

では、投資家として具体的にどう動くべきなのか。「本命」である東洋エンジニアリングや、それに続くプラント関連株を買えばよいのか。


「正直、今このニュースに反応して激しく動いている銘柄には、近づかないのが賢明です。東洋エンジニアリングは確かに本命ですが、今の株価上昇は期待先行のポジティブな反応によるものです。ボラティリティが極めて高くなっており、投資というよりはギャンブル(投機)に近い状態になっています」

「ニュースが出たからここが上がるはずだ」と安易な連想ゲームで飛びつくのは、初心者がもっとも火傷しやすいパターンだ。高値掴みをして、ニュースが沈静化した途端に急落に巻き込まれるリスクがある。

「当然、企業自体に魅力がないわけではありません。しかし、もし投資をするなら、今すぐ買うのではなく、騒ぎが落ち着いてタイミングを見てからでも遅くはありません。今後も中国は、台湾情勢や関税問題などで揺さぶりをかけてくるでしょう。そのたびに『次はここが買いだ』と右往左往していたら、資産はいくらあっても足りません。果敢にボラティリティの波に乗って短期的な利益を上げるトレーダーもいますが、資産形成を目的とする一般の投資家が取るべき戦略ではないのです。そうした銘柄からは、距離を置くのが賢明でしょう」

本命だとわかっていても、あえて手を出さない──。

「火中の栗」を拾いに行くようなリスクを避けることこそが、相場で長く生き残るための鉄則なのだ。

西脇章太 にしわきしょうた 1992年生まれ。
三重県出身。県内の大学を卒業後、証券会社に入社し、営業・FPとして従事。現在はフリーライターの傍ら、YouTubeにてゲーム系のチャンネルを複数運営。専門分野は、金融、不動産、ゲームなど。公式noteはこちら この著者の記事一覧はこちら
編集部おすすめ