●雪山、洞窟、石切り場…本物の自然と向き合った8カ月
累計発行部数1,160万部を突破、壮大なスケールと緻密な人間描写で絶大な支持を集める北方謙三の歴史大河小説『水滸伝』が、ついに実写ドラマ化。連続ドラマ『北方謙三 水滸伝』(毎週日曜22:00~)として、15日からWOWOW、WOWOWオンデマンド、Leminoで放送・配信される。


舞台は12世紀初頭の北宋末期。腐敗した国家を正すべく立ち上がった108人の漢たちの絆を描く本作は、総撮影期間8か月にも及ぶ、まさに日本ドラマ界の常識を覆す超大型プロジェクトだ。

梁山泊のリーダー・宋江(そうこう)を演じる織田裕二、もう一人の頭領・晁蓋(ちょうがい)を演じる反町隆史、そして悲しき天才武人・林冲(りんちゅう)を演じる亀梨和也の3人が、過酷極まるロケの裏側と、作品に込めた並々ならぬ想いを語り合った。

○深い雪をかき分ける撮影…亀梨「手が取れるかと」

――まず、脚本を手にした時の率直な感想をお聞かせください。

亀梨:スピード感や展開の壮大さに圧倒されました。僕が演じる林冲は、槍術の天才でありながら、国家の策略によって愛する者を失った深い悲しみを背負っています。物語全体を通しても「いつの時代も変わらない理不尽さ」が詰まっていて、自分の担うパートをしっかりと成立させたいという強い思いで読み進めました。

反町:まさに「男たちの生き様」ですよね。僕が演じる晁蓋は“托塔天王(たくとうてんおう)”の異名を持つ武勇の漢です。若松節朗監督やプロデューサーから「反町隆史の晁蓋が見たい。それが夢だった」と熱烈なオファーを頂いた時は、俳優人生でこれほどうれしいことはありませんでした。宋江とはアプローチが違えど、目指す頂は同じ。
その熱量をどう表現するかが楽しみでした。

織田:宋江は、武術の達人でもなければ軍略家でもない、いわば「普通の人」です。最初は「なぜ今、水滸伝なのか」と考えましたが、彼が記す世直しの書『替天行道(たいてんぎょうどう)』の意味を噛み締めるうち、今の日本に足りない「声を上げる勇気」や「諦めない心」を、若松監督と一緒に形にしたいと強く感じました。

――亀梨さんが「誰も壁がなく同じ志を持って現場にいる」と語られていましたが、撮影中の雰囲気はいかがでしたか?

亀梨:織田さん、反町さんが非常にフラットな空気を作ってくださったおかげです。それが劇中の梁山泊の志ともリンクしていました。撮影はおととし12月から始まりましたが、僕は序盤、ずっと雪山や牢獄のシーンで血だらけでした(笑)

反町:(深くうなずきながら)ロケ地はどこも過酷だったね。僕は洞窟がメインでしたが、実際の場所が持つ空気感を肌で感じながら芝居ができるのは贅沢であり、ありがたいこと。過酷な環境だからこそ助けられた部分は大きいです。

織田:敵となる国の諜報組織「青蓮寺」の李富(玉山鉄二)たちの軍勢は京都での撮影と聞いて、正直うらやましかった(笑)。僕らは山奥ばかりで……。でも、日本にこんなすごい景色があったのかという発見もありました。

 僕ら梁山泊チームの現場までは、飛行機や新幹線を乗り継いで、さらに車で2時間弱。
コンビニ1軒ない場所でしたが、だからこそ「意地でもその土地の名産を食べて帰ろう」と思えるようなね(笑)。そこに何十台ものロケバスが停まってて、列車3両分くらいの着替え小屋があって。メイクさんも夜中の2時から準備する。バックヤードの規模がすさまじいんです。一見CGかと思うような景色も本物なんです。石切り場での撮影も「寒い、埃だらけ、昼夜がわからない(苦笑)!」。「一生忘れないだろう」と思うくらい過酷な日々でした。

亀梨:電波も入りませんからね。雪山では8分間の長回しもありました。

織田:あれは若松監督の洗礼を浴びたね。

亀梨:誰も歩いていない深い雪を先頭でかき分けて歩くのがあんなに大変だとは……。手が取れるかと思うほどでしたが(苦笑)、あの過酷さが役に直結しました。
今の時代なかなか経験できないことなので、強く印象に残っています。

織田:今の話だと「じゃあ8分全部使ってください」って言いたくなるよね(笑)。僕も昔、『ホワイトアウト』という映画を、若松監督と雪山で撮影したんですよ。巨大な扇風機で風速30メートルくらいの風を当てられてね。当時は雪が降っていなかったので、スコップで氷の粒を撒くのですが、それが顔にバチバチ当たって痛くて前が向けない。でも、あの過酷な大自然の中で人間がいかにちっぽけか、監督は亀梨を試したんだと思う。正直、あの瞬間は役なんてどうでもよくなっているはず。俺も「これドキュメンタリーか!」と思ったもん。

 でも皮肉なことに、そういうギリギリの状態で撮ったシーンで演技賞を頂けたりする。「いや、演技してた覚えないんですけど……」みたいな(笑)。何度も撮る撮影の方が現実よりよっぽど大変で、「これ、現実だったら(1回きりで過ぎ去ってくれるから)いいのにな」と思う時すらあります。

亀梨:確かに! 「雪山を歩く」というト書き1行の方が、長ゼリフやアクションシーンを撮るより実は大変で、丸1日かかったりしますもんね。
何度も騙されました(笑)

織田:僕なんて「宋江がスキップしながら歩く」という1行があって、どうしようかと。やってみると現場に微妙な空気が流れるし(笑)。でもその言葉の裏で、監督や脚本家の先生は何を求めているのか。国を倒そうとする男がそう見えないような「軽さ」を出すとか、セリフと裏腹の芝居をするとか、そういう面白さがありますよね。

反町:僕はやはり洞窟のシーンが印象的でしたね。特に宋江と言い合う場面では、2人の葛藤がすごくよく描かれていたので。

織田:あぁ、あそこね。僕も心に残るシーンはたくさんありますよ。宋江がある村を訪れて少女と出会うシーンも物語の大事なきっかけですし、晁蓋チームの参謀や、若い跳ね返り、宇梶(剛士)さんが演じる梁山泊の裏の金庫番……と、行く先々で個性豊かな面々と出会うのも面白かった。「理想だけでは国は倒せない」という北方先生ならではの視点があって、「じゃあ金はどうすんの?」という現実的な面が突きつけられるのもいい。「塩は金なんだ」という豆知識も含めて、裏に理屈があるところがすごく好きですね。

 そういえば、とある場面の演じ方に迷ったことがあったんです。
リーダーがみんなの前で弱みを吐露して甘えるようなシーンで、「どう演じればいいんだろう」と。でもその場所へ行ったら、急に画がひらめいた。もし晁蓋が隣にいたら……、もし距離が離れていたら……とイメージが膨らんで、面白いシーンができるかもしれないと思えたんです。それはセットでは作れない、あの広大な場所の力があったからこそですね。

●現代の感覚では気づけない「塩」の価値
――演じる上で「軸」となった部分はどこでしたか?

亀梨:林冲としては、やはり愛する者を失った悲しみや想いですね。強い男でありながら、内側には人としての柔らかさや弱さを抱えている。そこを全話通してのキーとして大切に演じました。「誰かのために」という思いがあったからこそ、林冲として立っていられたのだと思います。

反町:目的は一緒でも、志の方向が少し違う。僕の場合はやはり宋江という存在がメインでしたね。あとは、晁蓋という男にどうして人間がついてくるのか、という「人望」の部分を大切にしました。それと劇中で描かれる「塩」の大切さですね。
当時は塩が何より大切で、命を懸けて奪い合うものだった。その重みが身に染みて分かったというか。

織田:かつて日本でも専売公社が管理していた時期があったくらい、塩は重要なものでしたからね。反町くんは役を通じて、現代では当たり前にある塩の「本当の価値」に気づいたんだね。

反町:そうですね。塩は、海に溶かせば証拠もなくなるし、生きるために不可欠なもの。現代の感覚ではなかなか気づけない視点でした。

織田:宋江には「心」しか武器がないんです。周りは武道や戦略の達人ばかりなのに。でも、目に見えない「心」を動かすことが、一番厄介で怖い武器なんですよね。「自分には荷が重い役だな」とも思いましたが、周りに一流のプロがそろっているので、最後は「みんながなんとかしてくれる」という信頼感で臨んでいました(笑)

○最高のチームで最高の作品を作った自負

――今回の現場で発見した“新たな一面”を教えてください。

織田:僕ね、書道って楽しいんだなって気づいちゃったんですよ。

――劇中の「替天行道」などの書は、すべて織田さんご自身の直筆だそうですね。

織田:そう、全部自分で書いてます。下手くそなんですけどね。

亀梨:えっ、あの劇中の書、織田さんの直筆なんですか!? すごい……!

反町:(感心したように拍手をしながら)それは知らなかった。素晴らしいね。

織田:みんなが槍(やり)や乗馬の練習をしている間に、僕は「じゃあ書道の練習をしましょうか」って(笑)。京都から先生が来てくれて、長時間みっちり稽古したんです。ドラマのメインのポスタービジュアルも、実は休憩中に僕が無心で書いていたところを、カメラマンが隠し撮りしていたものなんですよ。

――なんと、そうだったんですね! 最後に、反町さんと亀梨さんもお願いします。

反町:過酷なロケ地での経験も含めて、晁蓋を演じる喜びが自分自身をも成長させてくれたと感じています。

亀梨:僕は今回、若松監督から「もっと男らしく、男らしく!」という要求を受けていたので、声の出し方から表情までこれまで以上に意識していました。お二人のような男らしさにあふれる先輩が隣にいらっしゃって……。今日こうして改めてご一緒させていただいて、何より「年を重ねていくことが楽しみ」になりました。ずっとアイドルとして活動してきた僕にとって、「若さこそ正義」という意識がどうしても強かったのですが、お二人の豊かで、仕事も遊びも全力な時間の使い方を拝見して、自分の目指すべき先が見つかった。それが、今回の最大の発見でしたね。

織田:「ジジイたちは遊んでて楽しそうだなぁ」って(笑)?

亀梨:いやいや……(笑)。お仕事はもちろんのこと、これからは「人としての時間」もちゃんと豊かにしていきたいなと。お二人とお話しするたびいつもそう思います。

織田:そう思ってもらえたならうれしいね。

反町:そうですね。僕も最高のチームで最高の作品を作っている自負があります。

織田:本当にとてつもない熱量が注がれている作品です。ぜひ、放送を楽しみにしていてください。

<織田裕二>
ヘアメイク:加藤まり子 Mariko Kato(MARVEE)
スタイリスト:加藤哲也 Tetsuya Kato

<反町隆史>
ヘアメイク:INOMATA(&’s management)
スタイリスト:二村毅 Tsuyoshi Nimura(hannah)

<亀梨和也>
ヘアメイク:豊福浩一 Koichi Toyofuku(good)
スタイリスト:佐藤美保子 Mihoko Sato

渡邊玲子 映画配給会社、新聞社、WEB編集部勤務を経て、フリーランスの編集・ライターとして活動中。国内外で活躍する俳優・映画監督・クリエイターのインタビュー記事やレビュー、コラムを中心に、WEB、雑誌、劇場パンフレットなどで執筆するほか、書家として、映画タイトルや商品ロゴの筆文字デザインを手掛けている。イベントMC、ラジオ出演なども。 この著者の記事一覧はこちら
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